「進撃」「カバネリ」荒木哲郎監督が語る“絵コンテ”の極意とは? 富野由悠季監督からの教えも明かす

9月28日、アニメ制作技術に関する総合イベント「あにつく2019」がUDX GALLERYにて行われた。小松田大全監督による毎年恒例の「画コンテ」セッションではゲストに『進撃の巨人』『甲鉄城のカバネリ』の荒木哲郎監督を迎えて、創作術の秘密に迫った。



まず荒木監督は富野由悠季監督の『ガンダム Gのレコンギスタ』で絵コンテを描いたら、100枚以上の付箋が貼られた状態で戻ってきて、そのすべてに富野監督の直筆コメントがこと細かく書き込まれていたというエピソードを披露した。表紙にまで付箋が貼られたコンテは衝撃的なビジュアルだ。



富野監督の修正指示は具体的で、荒木監督が「驚く」と書いたカットには、あいまいな感情ではなく「顎が上がる」のように行動で示した方が良いというコメントが添えられている。画面をどう見せるのかを考え抜いた内容で、荒木監督も大きな刺激を受けたという。

その中でも衝撃だったのは、モニタ画面をクローズアップしたカットに対して「こういうカットに力があるのだろうか?」と指摘されたことだった。



モニタを映すカットはCG処理などを加えることで、画面の密度を容易に高めることができる。それゆえに演出家としては便利で多用しがちなカットではあるが、富野監督からのアドバイスで「画面の情報量をカットの力だと履き違えていた」ことに気付けたそうだ。

コンテを長年描いていると技術が上達する反面、知らず知らずのうちに業界のセオリーに毒されてしまっていることが多い。
年の離れたクリエイターと仕事をすることは、そういった手癖を気付かせてもらえる貴重な機会だと話した。

続いては『進撃の巨人』のコンテを見ながら、マンガをどのように映像で表現していくのかを解き明かしていった。
荒木監督は本作のアニメ化について「器を移し替える」という表現を好んで使っており、マンガの特性を理解したうえで映像に翻訳する作業の必要性を口にする。

たとえば、女型の巨人が調査兵団のメンバーを叩き落とす大ゴマは、映像では1秒に満たないアクションにしかならないため、単にアニメ化しただけでは原作を読んだときのインパクトを伝えることはできない。
またコマの大きさを自由に変えられるマンガと、画面サイズがつねに一定のアニメとでは文法もまるで異なってくる。
そのために原作の印象を再現するためには、タメを作って緊張感を出したり、エピソードの切れ目を変えたりと、アニメ独自の工夫が必要になってくるのだ。


後半ではコンテの描き方だけでなく、各話の演出家とどのように打ち合わせをすれば良いのかという、より実践的な内容にも触れた。

小松田監督は荒木監督の打ち合わせについて「まったく無駄がない」と絶賛。『進撃の巨人』で最終決戦前のコンテを担当したときに、一見地味に思えるエピソードがシリーズ全体の中でどんな意味を持つのか、そしてなぜ自分に依頼をしてくれたのかを詳しく説明してもらえたことで、非常にモチベーションが上がったという経験を振り返る。

荒木監督はフィルムをコントロールするうえで、コンテを描くことは仕事の半分であって、残りの半分の打ち合わせが重要だと断言。アニメは大勢の力を借りなければ作れないため、打ち合わせする相手に「なぜオファーをしたのか」や「どういったところに期待しているのか」を伝えるようにしていると語る。

演出家志望の若者はもちろん、さまざまな分野で働いている人たちにとっても多くの発見があるセッションは、予定時間を大幅に延長する大盛況で幕を閉じた。
[高橋克則]

あにつく2019
https://www.too.com/atsuc/2019/