米国でビジネス25年 変わるVIZ Mediaの市場戦略

 米国ポップカルチャー最大の祭典コミコン(コミコンインターナショナル)が、7月21日から24日までカリフォルニア州サンディエゴ市で開催された。期間中、出展、参加する企業・団体は1000を超えるとみられるが、そのなかには日本のポップカルチャーを扱う企業も少なくない。
なかでも特に存在感があるひとつが、日本マンガの翻訳出版、アニメやキャラクターのライセンスビジネスを手掛けるVIZ Mediaである。  
 VIZ Mediaは、米国で最も人気のある日本のマンガ『NARUTO-ナルト-』や『Bleach』を取り扱い、日本マンガ出版の北米市場シェアは他社を大きく引き離す1位である。また、アニメやキャラクターの展開でも無視できない存在だ。

 コミコンの会場では、人気キャラクターのイラストレーションが描かれた巨大なウォールで囲まれた出展ブースが一際目立っていた。そのVIZ Mediaの出展ブースの今年のコンセプトは、25周年である。同社は1986年に小学館の米国法人として設立、その後小学館プロダクション(現小学館集英社プロダクション)、集英社も合流して現在のかたちになった。米国でアニメ・マンガビジネスを手掛ける最も古い企業のひとつである。
 25周年であることを打ち出すことで、業界の老舗、そして米国に根差した企業であるとファンに対するメッセージを送り出している様にも見えた。しかし、25周年の区切りは、単に数字だけではない。ブースやパネルと呼ばれるイベントからは、新しいビジネスを積極的に築こうとする同社の強いメッセージが窺われた。

 ブースでは展示タイトルの一変ぶりに驚かされた。正面を飾るのは例年どおり『NARUTO-ナルト-』や『Bleach』だが、それと並ぶのは『ポケットモンスター』と『豆しば』の二つのキャラクターである。さらにスマートフォンやタブレットでデジタルマンガを購入出来るアプリ「VIZ Manga app」を強力にアピールする。一方で、これまで扱われてきたマンガ新刊はあまり姿を見せない。
 これは2007年から続く、米国のマンガ市場の縮小を反映しているのだろう。不調のマンガ出版だけに頼らず、ビジネスを多角化することで収益を伸ばす狙いが見られる。最早、VIZ Mediaをマンガ出版社とだけで説明するのは、困難になりつつある。

ブースから見えてきたVIZ Mediaの戦略をまとめると次の3つになる。
 1) 事業の多角化(マンガ・アニメからキャラクターライセンス事業への拡大)
 2) キッズ・一般層の重視(ポケモン、豆しばの積極アピール)
 3) デジタルデバイスの重視である。

 コミコン前から続いている、例えば『TIGER&BUNNY』や『初音ミク』の様な小学館、集英社以外のタイトルの導入もこの流れにある。過去25年で培ったライセンス事業のノウハウを、あらゆる分野で積極的に活用する。タイトル・キャラクターの分散化を進め、一極集中のリスクを避ける。
 デジタルデバイスについては、展示されていたリ「VIZ Manga app」以外にも、コミコン期間中に大きな展開があった。PCウェブとスマートフォン、タブレットで共通して利用出来る「VIZManga.com」のスタート発表である。図らずもコミコンの前週に、大手書籍チェーンBordersの事業清算が決定したばかり。デジタル流通にマンガ販売の新たな飛躍を期待する。

 思えばVIZ Mediaの会社のスタートは、かなりマニア向けのマンガ出版だった。その後、高橋留美子さんのタイトルのヒットをきっかけに、現在の若いマンガ・アニメファン向けの路線が定着した。25周年を期に、さらなる戦略の転回を目指しているようだ。
 こうしたVIZ Medeiaの戦略は、今後どこまで成功するのだろうか。勿論、それを正確に見通せる人はいないが、それでもコミコンの会場で会った現地の業界関係者の何人か聞いたところ、こうした戦略はかなり評価が高かった。VIZ Mediaが持つ危機感とその対抗策は、現在の米国マンガ業界で広く共有されたものと言って良さそうだ。
[数土直志]