東京国際ブックフェアと電子出版 デジタルが牽引した見本市

 7月7日から10日まで、東京ビッグサイトにて開催された第19回東京国際ブックフェアは、出版の未来を考えるうえで興味深いイベントだった。会場となったビッグサイトは、大勢の来場者で賑わった。主催者のリードエグジビジョンの発表によれば世界30カ国から1200社が参加、大きな成功だとしている。東日本大震災の影響が残る中、かなりの健闘をみせた。
 しかし、こうした盛況はリードエグジビジョンの巧みな運営によりもたらされた面が強い。リードは東京国際ブックフェアを開催するにあたり、今年からデジタルパブリッシングフェアから国際電子出版EXPOと名を変えた電子出版関連見本市、ライセンシングジャパンを同時開催、見本市同士の相互乗り入れを行っている。さらに教育・IT、文具などのイベントも行う。こうした併催は、クロスボーダー化進むマーケットの参加者のニーズに応える一方で、来場者の増加や人出の多さからくる活況感などが演出される。

 しかし、会場をよく見れば、東京国際ブックフェアは、むしろやや寂しいものだった。展示面積はビッグサイト西ホールの1階のおよそ半分を占めるのみで、印刷物としての書籍・雑誌を主に扱う出版社が厳しい局面に立っていることを感じさせた。対照的だったのが国際電子出版EXPOだ。その西ホール1階の残りの半分を、ライセンシングジャパンはさむかたちでブックフェアとほぼ同じ面積で開催されていたからだ。
 電子書籍への関心は、電子書籍元年と呼ばれたが2010年から引き続き高い。しかし、インプレスR&Dの発表によれば2010年国内電子書籍マーケットはおよそ650億円に過ぎない。印刷による出版市場がおよそ2兆円近く、その5%にも満たない。実際のビジネスとしては、まだ成長のスタートに立ったに過ぎない。ところがブックフェアでは、既に出版見本市ではリアルの出版市場と肩を並べているかの様に映る。

 こうした実際のマーケットとビッグサイトで起きていた見本市でのずれには、幾つか理由がある。ひとつは長期低落傾向を続ける出版業界の突破口、出版がインターネットやITと結びつくことで、市場が劇的に変わるという期待感である。
 もうひとつは、電子書籍が従来型の出版に比べるとすそ野が随分と広いことである。出版コンテンツを持つ作家、編集して世に出す出版社に加えて、それを配信するインターネットの関連企業、コンテンツの電子化を行う企業、さらに電子書籍を閲覧するデバイスを開発・製造・販売する電子機器メーカーなどがある。こうした企業はコンテンツの販売そのものでなく、関連機器やビジネスのインフラ構築で収益を獲得したいと考えている。電子書籍の後ろには、さらに大きなマーケットが隠れているわけだ。
 さらに新興産業特有の状況、市場が流動的であることも理由かもしれない。市場のメインプレイヤーが定まっていないことが、ビジネスチャンスを求める新規の参入企業を招いている。会場ではパナソニックが発売予定の電子書籍端末「UT-PB1」と組んだ楽天の新しい電子書籍プラットフォームが華やかに演出されていたが、こうした例のひとつといえるだろう。

 また、そうしたなかで電子書籍市場の今後の主戦場も見えてきた。ひとつはアップルのiPad、ソニーReader、シャープのガラパゴスといったデバイス機器における競争だ。さらにもうひとつ、コンテンツプラットフォームの競争激化が国際電子出版EXPOから窺われた。大手通信会社、印刷会社、書店、IT系独立企業、実に数多くの電子書籍のプラットフォームが展示場では紹介されていた。それに対応してコンテンツプラットフォームの構築サービスといったビジネスも複数見られた。
 まさに産業立ち上がり段階の、過当競争状態といえる。おそらく今後は、市場成長に伴ない、こうしたプラットフォームも次第に淘汰されることになるのだろう。

 そして、こうした電子書籍市場の競争に出版社が無関心なわけではない。むしろ、今後の成長領域として積極的に手掛けていきたいところだろう。国際ブックフェアでは講談社、角川グループで電子書籍への取り組みが見られた。とりわけ、自社のコンテンツプラッフォーム「BOOK☆WALKER」を打ち立てる角川グループは、今後のビジネス展開スケジュールを公開するなど積極的な様子だった。
 また、マンガ関連では、かねてよりデジタル出版の取り組みに熱心な手塚プロダクションが、本年も自らが開発を手掛けるデジタルコンテツ披露していた。そこからは書籍やマンガの電子化が進めば、結局は強さを発揮するのは有力なコンテンツの力なのでは、という人気コンテツを持つ強みが感じられた。

東京国際ブックフェア  http://www.bookfair.jp/