第7回中国国際アニメフェアリポート 講演会、パネルディスカッション

■ 3G時代が中国漫画産業の発展を促す

 今年のビジネスデーにおいて注目されていたテーマに3G携帯がある。30日には、まさにそれをテーマとしたパネルディスカッションが行われ、チャイナ・モバイル浙江省支社の副社長 陶晨氏、中国著作権保護センター副主任湯兆志氏、マンガ雑誌「漫友」の編集長金城氏並びに日本からは電子書籍ソリューション技術提供会社、株式会社セルシス取締役 成島啓氏がそれぞれの立場で意見を述べた。
 陶氏は、現在チャイナ・モバイル携帯閲覧基地と連携し “漫天下”という携帯漫画閲覧促進プロジェクトの展開について解説した。湯兆志氏は、著作権保護の方法について発言。
 一方、中国有数の漫画雑誌「漫友」の金氏は、データ転送率の向上や、ユーザーの消費意識を変化さえるうえでの鍵はクラウドコンピューティングであると持論を述べた。

 これらの議論を踏まえたうえで、セルシスの成島氏が日本の携帯マンガ市場の情況を紹介。中国携帯マンガ市場についても自社の持つ技術力を持って貢献していきたいと抱負を述べた。同社は既に前述の“漫天下”プロジェクトにおいて電子書籍ソリューションを提供しており、今後の動向が注目される。 最後は中国有名なマンガ家が座談会に参戦。携帯マンガ市場の発展に強い関心を示した。
 これらの講演や座談会以外にもマーベル・エンターテインメントの副社長や、中国動漫企業で初めて株式上場を果たした奥飛動漫社長謝坤澤氏が講演会に登壇するなど錚々たるメンバーが業界全体にとって意義のあるアドバイスをした。


座談会に参加する中国マンガ家たち

■ 385作品、22万530分に貢献した数々の中国アニメ制作スタジオ

 2010年度に制作された国産アニメは385作品22万530分である、2009年よりさらに28%増加した。この数字に貢献した数々の企業たちもアニメフェアに出展している。そのうちのいくつかを紹介しよう。

□ 杭州玄機科技信息技術有限公司(StarQ)
昨年より継続的に本誌でフィーチャーしてきたStar Q。同企業の代表作である、『秦時明月』シリーズは今年も健在だ。中国全土で200万人以上のファンがおり、昨年リリースされた第3シーズンは、ネット上で総計2億回以上の閲覧数を誇る。

同社CEO沈楽平氏によると、現在は、第4作シーズンを制作中。年内には放送予定とのこと。フルCG作品で一キャラクターに5万ポリゴンとモーションキャプチャを採用。
関連コンテンツの開発にも積極的で、ブラウザゲームの他に複数の日本アニメ企業とも、アニメだけでなく携帯用コンテンツも開発している。さらに今回のアニメフェアで上海東方伝媒(SMG)傘下の炫動メディアとの提携を発表し、映画版の制作について正式に発表した。


StarQと炫動伝播の提携プロジェクトを発表。

□ 上海美術電影(上海美影)
中国動漫産業発展の歴史は上海美術電影制片厰の発展の歴史とも言える。アニメ産業が行政支援を受け盛況となる2000年以前から水墨アニメなど芸術性が強いアニメ作品はほとんど上海美影で制作されてきた。

同社のプロジェクトマネージャ韋鳴氏は、上海美影の優位性として、ブランド価値、豊富な制作経験、質の高い作画能力、上海電影グループ企業間でのシナジー効果、並びに同社が多数所有する著名キャラクターの数々であると説明した。

□ 山猫兄弟動漫遊戯有限公司(山猫兄弟)
2003年湖南省長沙市で設立された同社は、10年に江蘇省昆山市の昆山軟件園にゲームソフトの子会社を設立。双方とも「山猫兄弟」ブランドを活用し独自に発展してきた。現在200人ぐらいの従業員を持つ、毎年100話以上のHDアニメを制作している。

同社江蘇支社長の劉暁軍氏は、従来のテレビ放送のみならず、携帯用コンテンツを開発し、中国大手サイト捜狐(sohu.com)、奇芸(qiyi.com)とも連携。インターネット放送に着手した。
また、ランドセルや絵本など児童用文房具の他にバスケットボールなどの体育用品もあつかっており、これらのスポーツグッズは欧米数十カ国に輸出しているとのことだ。アニメそのもの制作のみならずキャラクタ-商品全般まで垂直統合しているのが、中国動漫企業の特徴と言えよう。

□ 九久動画
以前、本サイトも紹介した九久動画は今回、2作の児童向けのオリジナル作品を出展した。

同社は中国に所在するにもかかわらず、外資系企業であるため直接中国テレビ局で放送することが出来ない。従って中国国内の提携企業を模索中だ。制作部マネージャの陸星程氏は、今回展示した3D版のPVは日中協力で企画し、韓国のグループスタジオにおいて2D版作品から3D版作品に転換したとのことだ。このような作品が中国国内で放送され一定の成功を収めれば、動漫産業の国際コラボレーションという点においても大きな影響を与えるかもしれない。


九久動画の作品「Pandala」と「弗魯の旅行」の宣伝パンフレット

 ■ これから中国動漫企業が必要なのは企業間連携だ

 以上、2回に渡って報告してきた杭州の国際アニメフェア。200万人もの来場者を迎え、いかにも中国動漫産業は盤石といった感があるが、課題も残る。それは、企業間連携が極めて少ないという点、優れたアニメ脚本の執筆者が不在であることから生じる質の低い作品群などだ。
 またこれだけ成長傾向にありながら労働環境が熾烈であるということも気になる。もし日本アニメスタジオがより積極的にグローバル化に取り組み、単なる下請け構造に中国アニメスタジオを取り込むのではなく企業連携を実現できれば新たなチャンスが生まれるのではないかと思われる。今年も台湾系企業ブースやバンダイグループ、集英社などがブース出展をしていなければ日本のプレゼンスがほとんど感じられなかった。
 だが、少なくとも200万人が直接作品をその目にし、物販ブースには多くの人たちが列をなして正規商品を購入する場が生まれている。日本企業はこの情報発信の機会をあらためてチャンスととらえ直す必要性があるのではないかと思われる。