絶版マンガ無料配信のJコミが正式スタート

 絶版マンガのインターネット無料配信プロジェクト「Jコミ」が、4月12日に正式スタートした。「Jコミ」は、2010年11月からマンガ家赤松健さんらが中心になって進めて来たプロジェクトである。絶版となったことで読者の目に触れにくくなった過去の名作、傑作マンガをインターネット上で復活、さらにそこに広告を入れることで作家への収益を実現する。読者と作家双方のWin-Winの関係を目指す。
 その活動は2010年11月に赤松健さんの代表作『ラブひな』の無料配布、β版の公開を経ている。その間にPDF化されたマンガのダウンロードがおよそ370万、ビューワによる閲覧が100万以上とかなりの人気を博している。正式スタートは4月12日だが、既にその独自のサービスはお馴染みと言える。

 現在、Jコミの行う作品提供方法は2種類だ。当初から行われているPDFタイプのダウンロード型、ユーザーが自身のPCに保存可能なものだ。そして、Jコミが「アルヌール」と名付けたコミックビューワを用いたストリーミング型の閲覧である。
 PDF型が絶版マンガの復活と短期的な収益化が中心になっているのに対して、言語を越えた多彩なコミュニケーション機能を持つアルヌールは作品活性化による長期的な収益化を目指している様だ。Jコミは、既に大手検索エンジン・ネット広告のGoogleとの連携を明らかにしており、今後はこの収益構造がどの様に変化するかが注目される。

 さらに4月12日の正式スタートでは、新たなプロジェクト「違法絶版マンガファイル浄化計画」が発表された。違法絶版マンガファイル浄化計画は、さらに新たな視点を加える。現在、国内外で深刻な問題とされるインターネット上に流通する違法にファイル化されたマンガ対策を目指している。
 Jコミによれば、違法ファイルの対策は通常は出版社が行う。しかし、絶版となったマンガは出版社の手を離れる。一方で作家が個別にその対策取るのが難しい。そこでJコミは既に違法ファイルを持つユーザーに、そのファイルのJコミへのアップロードを呼び掛ける。アップロードされたファイルに、作者の許諾のうえ広告をつけ、合法コンテツ化するというものだ。既に違法ファイルがあることを前提にしたユニークな方法だ。

  絶版マンガの復活、収益化、コミュニケーションツール、違法行為対策と様々な試みを続けるJコミだが、一方で、サービスの種類が多彩になったことでサイトの仕組みがやや分かりにくくなってきたのは懸念材料だ。「Jコミ」の活動を最初から追っていない人にとっては、サイト目的、構成など全体の利用方法が見え難い。
 広告による収益化が基盤にある以上、Jコミが活動を長期的に維持して行くには、より多くのユーザーを集める必要がある。それには、より分かりやすく利用出来ることが重要だ。正式スタート後には、こうしたユーザビリティは課題のひとつになるだろう。

 「Jコミ」の活動が注目されるのは、絶版マンガの復活というプロジェクト、新たなサービスの提供だけでない。2010年より電子書籍(電子マンガ)の普及が急激に進み、出版・IT業界がそのビジネス化の方法を模索するなか、広告のみのサポートで事業が成立するのかその可能性の実験場となっているからだ。さらに電子出版においての出版社と作家の関係をどう築くか議論されるなか、Jコミが作家自ら直接読者に作品を届ける仕組みを持っていることである。
 そうした点では、正式スタート開始前よりアクセス数を確保し、一定の利益化が出ているJコミは、今後も大きな関心を集めそうだ。

Jコミ http://www.j-comi.jp