赤字決算と訴訟問題 岐路に立つ米国4キッズ

 1990年代末から2000年代初頭にかけて威勢を誇った米国のキャラクター会社4キッズエンタテインメントが岐路に立っている。同社は3月30日に日本のテレビ東京とアサツーDK(ADK)からアニメ『遊戯王』シリーズのライセンス停止の通告とこれに関する提訴を受けていることを公表した。
 また、3月31日には、2010年通期決算発表が行われた。その結果は5期連続通期最終赤字で、経営にさらに厳しさが増していることが明らかになった。
 このふたつを理由に4キッズは、企業の継続性の疑義を明らかにしている。さらに『遊戯王』のライセンスについては、ライセンスを失うことがあれば連邦破産法第11条を提出、事実上経営破綻する可能性があるとも言及する。

 同社の2010年の年間売上高は、1450万ドルと2009年の3420万ドルからおよそ58%もの減少となった。2006年には6000万ドル以上、かつては100億円もの売上げを上げていただけに、事業の縮小は顕著だ。また純損失は2720万ドルと前年の4210万ドルから縮小したものの、再び損失金額が売上げを上回る大きな金額となった。
 売上げのうち83%がライセンス収入だ。テレビ放送からの広告収入が6%、テレビ・映画の製作・配給収入が11%である。また、売上げの36%を『遊戯王』から、20%を『ポケットモンスター』から稼ぎ、最大の取引相手はコナミデジタルエンタテイメントで、売上げ比率では39%を占める。日本の作品・キャラクターと日本企業への依存度が高いことが分かる。
 これは2010年の間に4キッズが相次いで有力ライセンスを手放しことが大きい。『ミュータント忍者タートルズ:Teenage Mutant Ninja Turtles』、『Monster Jam』、『キャベツ畑人形:Cabbage Patch Kids』が、過去1年でライセンス契約を終了した。

 この『遊戯王』へのビジネス依存度が高まるなかで起きたのが、日本のライセンサーとの論争である。ライセンス停止は、3月24日にテレビ東京とADKから4キッズに通告した。両社は監査に基づいて発覚した470万ドルのライセンス料が支払われないとして、4キッズを相手取りニューヨーク連邦裁判所に提訴も行っている。ライセンス停止通告は、この裁判に関わるものとみられる。
 4キッズはこれについて、根拠がないこと、ライセンス停止は無効であると主張する。しかし、一方で2010年の夏以来、未払いライセンスについてライセンサー側と話を行っており、3月の初旬には、善意の証(good-faith)として100万ドルの支払いを提案したことを認めている。裁判の行方について、4キッズは楽観視することは出来ないだろう。
 同社は依然、現金で420万ドル、有価証券で710万ドルを保有する。しかし、もし4キッズが裁判に負けることがあれば、同社の今後の行方に影響は避けられない。470万ドルの支払いをすれば経営再建のための資金は大幅に減るだけでなく、『遊戯王』のライセンスを失えば、同社は主要な収入源を失うことになる。

 4キッズに対して挑むかたちとなったテレビ東京とADKだが、両社のリスクも小さくはない。裁判である以上両社の訴えが退けられる可能性もある。
 そして、例え主張が裁判所に認められたとしても、4キッズが連邦破産法第11条を提出すれば、未払いのライセンス料の回収は困難になる。そして、その場合でも、これまで欧米地域にアニメ『遊戯王』を広く展開していた4キッズのビジネスネットワークを失う。とりわけ放送ネットワークの確保が維持出来るのかが課題だ。テレビ放送はトレーディングカードゲームの売上げにも大きな影響があり、それが中断すれば、逆に海外からのライセンス収入が大きく減少する可能性もある。
 両社はこれまで経験の少なかった『遊戯王』の海外ビジネスの事業継続に大きな力を注ぐことが必要になる。そうしたリスクを考えれば、今回の提訴は相当大きな決断のうえで行われたと考えてよいだろう。

 これまで日本のキャラクター・アニメのライセンサー企業は、海外のラインシーからのレポートに異議を唱えることは少なかった。契約書に監査請求権は盛り込まれても、実際に監査を行うこともまた少なかった。今回の提訴は、そうした日本企業にとってはかなり面倒な行動を敢えて実施した結果のものだけに興味深い。
 一方で、監査により、問題ある結果が出て来たことは残念なことだ。今回の裁判の行方を、日本と米国の多くのアニメ、キャラクター、マンガ関係者が注視することになりそうだ。しかし、どんな結果になるとしても、長期的には両国間のビジネスの緊張を高め、その結果、より合理的なビジネス関係に向かう。そうした点では意味のあるものと言ってよいだろう。