藤津亮太のテレビとアニメの時代 第9回’70年代の到達点としての’79年

   ここで確認したいのは、’77年から’79年にかけてのヒット作の登場により「TVアニメでつちかわれた隠れアニメファンの顕在化」が起きた、ということである。
 そして、ファンの顕在化は、興行成績や観客動員数といった直接的数字が出てくる劇場版において明らかになった。その点で、「アニメブームという事件はまず劇場で起きていた」のだ。
 それに対しTVは、劇場での変化を追いかける状況にあった。その事件の余波は押し寄せてきつつあるが、TVアニメはまだ「アニメブームを牽引しているアニメファン」が見えていない。ひとつには小学校低学年に団塊ジュニアという人口のボリュームゾーンがあり、マーケティング的にはそちらにフォーカスするという選択肢も十分にあったからだ。
 だからであろう。『TVアニメ25年史』(徳間書店)は’79年の項に以下のように記す。
「飛躍的に作品本数が増えた、この年から数年間が、まさしくTVアニメの黄金期となる。動物物、ロボット物、ギャグ物、メルヘン物、魔女っ子物、スポ根物、ホームコメディ物、宇宙物と、ありとあらゆるジャンルのオンパレードであった」

 アニメは人気がある、というのが既成事実となっていても、「どんなアニメが誰に人気があるのか」まではTV局もまだ意識ができていない。その結果が、多様な企画となって現れていたのだろう。
 その後、『機動戦士ガンダム』のヒットにより、10代のアニメファンの存在完全に社会に認知されることになる。それが具体的にTVアニメの企画に反映されていくのは当然ながら’80年以降のこととなる。
 そういう意味では、’79年は歴史的な年であった。それはTVで『機動戦士ガンダム』、『赤毛のアン』、映画で『ルパン三世 カリオストロの城』『エースをねらえ!』『銀河鉄道999』といった傑作が並んだからではない。
 アニメファンを意識してアニメを作るということが本格的に始まる直前の時期であり、その多様性が’70年代を通じて形成されてきた「TVアニメ」というイメージの一つの到着点であるように思うからだ。