オンライン侵害の国際シンポジウム 東京国際映画祭で

 10月23日から東京・六本木で第23回東京国際映画祭が開幕した。アジア最大の国際映画祭として、映画ファンや監督、俳優、そしてビジネス関係者が一堂に集うビッグイベントだ。この映画祭に先立って、 映像や音楽などコンテンツのオンライン上の権利侵害問題を、国際的な枠組みで話し合うシンポジウム「「Graduated Response」と「スリーストライクルール」」が10月21日に東京・六本木のアカデミーヒルズ49で開催された。
 数あるエンタテインメントの中でも特に存在感のある映画だが、ビジネスとしてみた場合、その状況は必ずしも楽観出来るものではない。なかでも近年大きな脅威となっているのが、インターネット上に違法にアップロードされた映像コンテンツによる権利侵害である。映画祭開催に合わせて、この問題を取り上げた。主催は国際的な映画組織モーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)と海外におけるコンテンツ権利侵害対策を取る日本のコンテンツ海外流通促進機構(CODA)である。

 権利者側によるシンポジウムということもあり、全体の基調はオンライン侵害対策のための強硬な意見が目立った。例えば、3回警告を与えても権利侵害コンテンツ違法ダウンロードを止めない利用者のインターネット接続を強制的に遮断するスリーストライクルールの導入に、肯定的な意見が多かった。
 フランスでスリーストライクルールの導入に尽力したニコラ・セドゥ氏は、違法ダウンロードの蔓延は違法行為に対するリスクがないためだと説明する。違法ダウンロードは貧しい人たちが行うのでなく、裕福な人たちが無料で利用しているのが現状とし、それが最大の問題と指摘する。

 このリスクの問題については、冒頭でCODA代表理事でもある高井英幸氏が説明した日本の現状が参考になるかもしれない。国内で違法アップローダーの検挙が強化された結果、現在P2Pに置けるファイル交換のノードが減少傾向にあるという。また、『クローズ・ゼロ』公開の際に、ネット上の違法アップロードを確認後直ちに盗撮・違法アップロードを行った者の検挙を行ったところ、それ以後国内で公開直後の盗撮、違法アップロードの確認は出来なくなったという。リスクが生じることで、侵害行為が減る例と言えそうだ。
 他国の動向を見ている段階とした香港のプロデューサー ナンスン・シ氏も、これまで他の方法があるかどうか探って来たが、現状ではスリーストライクルールの導入以外の方法がない、先に導入したフランスの行方を世界中が注視していると話す。少なくとも権利者の側からはスリーストライクルールの導入は規定路線、その導入・運用方法を探っている印象を受けた。

 ただし、スリーストライクルールの導入の目的は、違法なダウンローダーの接続切断自体でないというのは一致した見方だ。米国MPAのCEOロバート・ピサノ氏は、段階的な警告で利用を減らし、個人に責任感を促すことが必要との見解だ。実際に、一般的には全体の70%は最初の警告で違法ダウンロードを止めるという。問題は残りの30%なのだと語る。
 また、スリーストライクルールの導入に課題がないわけでない。まずは、こうした違法行為の監視や警告のコストを誰が負担するかである。ピサノ氏は政府との協議が必要と述べ、行政の関与も必要と考えているようだ。
 さらにネットサービスの提供と情報を管理するISPとの関係も重要になる。同氏は、コンテンツ保護にはISPの役割が重要、この問題についてISPと協議を持つ必要があるとしている。そして、オンライン侵害が続けばISPのビジネスモデルも崩壊するだろうと話す。
 外部との連携では、MPAヨーロッパのマーシッチ氏が検索エンジンの問題も指摘している。検索エンジンは非合法サイトにユーザーを誘導している、責任感がないと話す。いずれの発言も、世界の権利者の今後の行動がより厳しい方向に向かって行くことを感じさせるものであった。

 かなり強硬な意見が多かったが、日本からの参加者の態度はやや曖昧だった。スリーストライクルールについては、段階的な警告で権利侵害を防ぎたいとするものの導入を推進するのか、慎重に対応するのかその立場はよく判らなかった。
 また、今回物足らなく感じたのは、日本コンテンツの海外における権利侵害についてふれられなかったことだ。国際的にみれば日本はインターネット上の権利侵害の少ない国だとされる。一方で、海外ではアニメやマンガの違法ダウンロードが溢れ、関連ビジネスに深刻な影響を与えている。しかし、国境を超えたオンライン侵害行為対策の難しさはたびたび指摘されている。こうした国際的な場所こそ そうした問題を提起して、解決の道を探る必要があったのではないだろうか。

「Graduated Response」と「スリーストライクルール」を考えるフォーラム
日時: 2010年10月21日(木) 14:00~17:00 (開場:13:30)
場所: 六本木アカデミーヒルズ49「オーディトリアム」
主催: モーション・ピクチャー・アソシエーション/一般社団法人 コンテンツ海外流通促進機構(CODA)
後援: 公益財団法人ユニジャパン / 第23回東京国際映画祭実行委員会、一般社団法人 映画産業団体連合会、一般社団法人 日本映画製作者連盟、社団法人 外国映画輸入配給協会、不正商品対策協議会

[主催 開催挨拶]
高井英幸
一般社団法人 コンテンツ海外流通促進機構 代表理事
公益財団法人 ユニジャパン 代表理事・理事長
[挨拶]
依田巽 東京国際映画祭 チェアマン
[キーノート・スピーチ]
ロバート・ピサノ MPAA米国映画協会 代表取締役兼CEO
[レポート]
「ハリウッド系映画会社の映画配信ビジネスの現状と課題(日本)」
福田太一  ワーナー エンターテイメント ジャパン
ワーナー・ホーム・ビデオ & デジタルディストリビューション ジェネラルマネジャー

[パネル・ディスカッション]
「オンライン侵害に対する日本の取り組み」
高杉健二 一般社団法人日本レコード協会 理事/事務局長
與田尚志 ティ・ジョイ 常務取締役
「オンライン侵害に対する海外の取り組み」
ニコラ・セドゥ Association de Lutte contre la Piraterie Audiovisuelle 会長
(フランス)
ナンスン・シ 映画プロデューサー
(香港)
テモラ・モリソン 映画俳優
(ニュージーランド)
クリストファー・マーシッチ MPAヨーロッパ地域代表 マネージングディレクター
(フランス)
モデレーター
遠山友寛 TMI総合法律事務所 パートナー弁護士