電通エンタテインメントUSA  坂田雄馬社長に聞く 前編

- 電通エンタテイメントが現在手がける作品のひとつに、テレビアニメシリーズ『デルトラクエスト』がある。オーストラリアの作家エミリー・ロッダの原作をアニメ化し、日本では2006年にテレビ放映をした。この作品が10月に玩具会社ハズブロとディスカバリー・チャンネルが手を組んで米国で開局する大型子どもチャンネル「hub」で放映される。日本アニメから唯一、この「hub」の放送作品に選ばれた英語版『デルトラクエスト』は、いかにして誕生したのだろうか。-

【デルトラクエストの米国放映とそのビジネス】

2010年のコミコン会場で。『デルトラクエスト』はHUBの新番組の目玉のひとつとして紹介された。

AA
現在手がけている作品では、この秋から新チャンネルhubの放映作品に『デルトラクエスト』が挙がっています。

坂田
『デルトラクエスト』に関しては、ここに来るまでの試行錯誤のひとつだったんです。あれは2003年から2004年の話で、もう7年前ぐらいになります。先ほどの原作は問わないは当てはまっています。スコラスティック社という『ハリーポッター』を出しているアメリカの大きな出版社が子供向けに出すエミリー・ロッダ先生が書いた小説です。何百万部と売れています。それを原作として日本のアニメーション技術で制作しました。

けれどここで間違えたのは、やはり脚本が日本だったんです。これはうちのプロデュースの弱さだったんですけど、作っている段階で日本の編成スタイルに合わせすぎました。当時からアメリカ側の要望は完全に1話完結型にしてくれ、次の週に残すような含みはやめてくれでした。最終的にアメリカ側プロデューサーであるうちの意見はそこだけだったんです。それは聞いて貰えなかったんですね。
放送を含めて日本のビジネスを優先するのであれば仕方ない判断だったのかも知れません。しかしそれは欧米のビジネスの基本を無視することになるので、ま、プロデューサーがどう考えるかだけです。どっちつかずはダメなわけです。『デルトラクエスト』のいろいろな失敗から経験を得ました。

AA
『デルトラクエスト』は日本では視聴率は決して悪くないのですが、玩具の展開が弱かったのかなと印象を受けました。

坂田 
まさにお気づきの通りで、視聴率は悪くないです。作品単体としては視聴率も結構よかったですし、素晴らしい作品です。そこでいま欧米版としてうちで完全に作り替えています。音楽や効果音も含めてです。
あと日本国内は物量で仕掛ける必要があります。いい視聴率を取っても数年続けられれば別ですが、時間がかかって評価が出たときには半年前に放映は終わると分かるわけです。そうする遅すぎるわけです。最初の2カ月でほぼ見えます。じわじわ視聴率が上がっていくというのは、支える側としてはその間もコストがかかるのでなかなかきついんです。そうした意味では、マーチャンの展開はうまくいかなかった。

AA
現在は海外ではどのように展開しているのですか。

坂田
その辺を踏まえて、今後アメリカで展開します。『デルトラクエスト』は完全輸出型ではありませんでした。初期の段階から欧米でのビジネスをもくろんでスタートした案件でしたが、残念ながら力不足で欧米のビジネスのスタイルに合う作品には仕上げられなかった。志としては当初から欧米を目指していました。
あとはいま世界中のいろいろな国で放映されています。メキシコやオーストラリア、イタリア、やはり原作が素晴らしいので、世界中で出版物が出ています。おもちゃととかでなく、視聴率を安定して取る子供向けのエンタテインメントとして正しい作品という評価がされています。我々もそうしたことを踏まえた販売戦略をとっています。

AA
アメリカの日本アニメの放送ですが、2000年頃に地上波も含めて急激に増えて、それが2000年代半ばに急に縮小しました。いまはほとんどが夜の深い時間帯とかすごく狭くなっています。
そこで日本のアニメはもう放送局は取れないと言われるようになりました。ハズブロが新たに立ち上げる子どもチャンネルhubで、日本の作品で唯一『デルトラクエスト』が選ばれました。どうして今回みたいなhubみたいな大きな放送局を押さえられたのですか。

坂田 
やはりアメリカ人もビジネスも含めてアメリカ人同士でコミュニケーションを取りたいんですよ(笑。それと人間ですから最後は信頼関係です。こんなこと本当は言いたくないんですけど、でも、それは重要ですよね。
僕らは「show the attitude」という姿勢を見せるためアメリカで法人化しています。アメリカのエンタテインメントの世界に腰を据えてやっている会社ですよと言っています。

あとは『デルトラクエスト』の日本での視聴率がよかったのとエミリー・ロッダさんの原作でマンガでなかったというのは大きいです。マンガでなくてアニメーションの技術を使ってというのは、これまでいろいろなところにずっと言い続けてきたんです。2年前はhubはありませんでしたが、ハズブロさんとの長い間いろいろな関係があり、WRITTEN IN US, ANIMATED IN JPNと言う方針を言い続けていました。
太平洋を隔てなく同じ大陸内で米国人同士が話し合いを持ち続けるスタイルでやったのが勝利だと思います。それを親会社から来ている日本人の私が同じ米国のオフィスで見ていてあげられたので部下も100%信用していましたし安心して営業を任せることができました。部下も信頼されているので結果を出そうと相当努力をしてくれました。

AA
『デルトラクエスト』は共同制作ではなくて、全部自社と考えていいのですか。

坂田 
これはちょっと珍しいビジネススキームを取っています。欧米版に関しては、カナダの制作会社と共同制作というかたちで別バージョンを作っているんです。うちが全額で英語・欧米版を作って、その後売れなかったらどうしようというコストリスクの部分がありました。
原作が素晴らしいのでカナダのずっと懇意にしている会社が、うちが出すからやらないかとなりました。欧米版の権利は全部うちにあるのですけれども、彼らにはカナダで商売をする権利を逆に与えるというかたちを取っています。カナダでも放送されると思います。かなりいいタイムスロットで世界中に放送されていくと思っています。

次回 後編に続く