「あにめのたね 2021」コロナ禍でのアニメ制作&人材育成の課題とは? 事業報告シンポジウム【レポート】

日本のアニメーション文化の将来を担う人材を育成することを目的とした事業「あにめのたね 2021」の事業報告シンポジウムが、開催された。

「あにめのたね」は、日本動画協会が文化庁より委託された事業「文化庁 令和2年度アニメーション人材育成調査研究事業」の愛称であり、2014年より実施してきた若手アニメーター人材育成事業をさらに発展させたもの。
アニメーション人材の育成方法について実践的な調査研究を行い、その調査研究の成果の評価及び普及を推進することにより、日本のアニメーション分野の向上と発展に資することを目的とする。

今年度より、アニメーターに限らず、制作進行からCGアーティスト、編集や音響など、作品制作を通じてトータルなアニメーション制作に必要な技術の継承を目指す。

本事業は、主に3つのプログラムから成っている。1つは、制作受託した4社がそれぞれの個性を発揮した作品制作を通じたOJTによる実践的育成を目的とした「作品制作を通じた技術継承プログラム」。2つ目はアニメーション業界就業者を対象とした技術向上教育プログラム、3つ目はアニメーション業界志願者を対象とした基礎教育プログラムだ。

今回のシンポジウムでは、それぞれのプログラムでどのような成果があったのか、詳細に発表がなされた。

技術継承プログラムの成果報告では、参加した4団体の制作した短編アニメーションが上映され、各団体がどのような実践と教育を行ったかをプレゼン形式で発表。

『DELIVER POLICE/西東京市デリバー警察隊』を制作した株式会社IMAGICA Lab.は、アニメーション制作において重要と思われる5項目を学ぶことを目標に設定。

(C)株式会社IMAGICA Lab. /文化庁 あにめのたね2021



「アクターから人の動きを学ぶ」、「コンテの意図を正確に把握し演技や表現を足せるようになる」、「自分以外の作業工程の観点を持つ」、「演出指示や作画監督修正指示等の意味を理解しながら作業する」、「デジタル動画との連携を通じて、デジタルの知識を習得する」の5つを実践と座学で学んでいったという。

格闘技団体クラヴマガ・ジャパンに取材し、アクションの実演を収録。身体がどう動き、重心移動するかを詳細に観察して作画したという。
また作画作業、素材運搬の効率化などを目的としたデジタル原画と動画作業にも挑戦。拡大しても線が粗くならないベクターデータで作業することでクオリティを担保できるように目指したそうだ。

続いてプレゼンした、『ハチミツスーサイドマシーン』を制作したウサギ王株式会社は、新しいアニメーションの作り方を提示することを目標したという。

(C)Usagi ou Inc./文化庁 あにめのたね202



本事業に取り組むにあたり、「継承」、「革新」、「透明性」の3つをテーマに掲げた。

若手とシニアアニメーターがペアとなって組んで作業し、緊密なコミュニケーションの中でスムーズな技術継承が可能になったという。一方で、初めて顔を合わせる者同士で、リモートで育成を行うのは容易ではないと感じた面もあったそうだ。

2つ目のテーマ「革新」については、フリーの3DツールBlenderを使用。少人数での制作とコストの最適化を目指して制作した。
Blender独特の仕様に苦戦した面があったものの、無料であるために低コストであること、豊富なアドオンや複数テイクの比較が容易であることなど、メリットがデメリットを上回るという実感を得たそうだ。

3つ目の「透明性」については、今回の制作に関する全ての書類とデータを開示予定だとして、育成が技術継承に参考にしてほしいとのことだ。

3団体目の有限会社オレンジは、『HOME!』を制作。

(C)オレンジ/文化庁 あにめのたね2021



本事業では、アニメーターとモデラ―の育成を中心に考えたそうで、モーションキャプチャーを取り入れ、生身の人間の動きをいかにCGアニメーションに変換していくかなどの課題に取り組んだ。
キャラクター芝居に挑戦するのが初めてのスタッフも多かったそうで、動きのつけ方のプロセス、アニメらしいタメツメなどを指導し、初挑戦のスタッフでも短期間でカタチにすることができたそうだ。

モデラ―の育成については、Blenderを使用。Blenderは処理が軽く、セットアップ後もやり直しができて非破壊的なオペレーションが可能など、様々な利点があるそうだ。

今回の作品で登場するのは、男性キャラ1体と女性キャラ1体。男性キャラはリアルな造形で、女性キャラはアニメ的なデザインと、タイプの異なるモデリングに挑戦。圧倒的に難しかったのはアニメ的デザインの女性キャラクターの方で、アオリやナナメの構図でも最低限成立するように多くの調整を要したそうだ。

最後のプレゼンとなった株式会社つむぎ秋田アニメLabは『龍殺ノ狂骨』を制作。

(C)株式会社つむぎ秋田アニメLab/文化庁 あにめのたね2021



従来のアニメの良い部分を継承しつつ、新しいスタイルの制作を目指した。

同社の試みでユニークだったのは、カットフレームにとらわれずに全身の演技を描いたこと。全身の演技を作画し、フレームの決定は後から行ったという。これによって、全身の重心移動などの理解が深まり、技術力の向上につながったそうだ。
また、全身を描いた後にフレームを決めることで、実写の撮影現場のように、役者の芝居を見てフレームをその場で決めていくような感覚をアニメの現場にもたらすことも可能になる。

また、アニメーター自身に3DCG背景を操作してもらい、レイアウトやカメラアングルなどへの理解を深めてもらったそうだ。こうした試みは、最終的な画面作りを意識できるスタッフを養成したいという考えに基づいているという。

スタッフの中にはフレーム外の足などを意識して絵を描くのが苦手とする人もいたそうで、今回の手法はそうしたスタッフの動きへの理解を促進し、技術力の向上につながったという実感を得たようだ。

シンポジウムの後半では、アニメーション業界就業者を対象とした技術向上教育プログラムと、業界志願者向けの基礎教育プログラムの成果発表が行われた。

本プログラムは一昨年までは、若手アニメーターのみを対象にしていたが、今年度はアニメーション業界就業者全体に対象者を拡大。どの職種でも受講可能とした。

コロナ禍における感染症対策のため、今年度は映像配信によるオンライン受講で実施。これにより受講者は大幅に増加し、全体で延べ2000人近くが動画を視聴したとのこと。
受講内容がわかりやすい、地方からでも参加可能である点など概ね高評価だったようだが、一方で実践指導が受けられない点などに参加者から不満の声もあったという。

また、業界志願者を対象とした基礎教育プログラムでもオンライン形式を取り入れ、地方の教育機関と連携した対面とのハイブリッド形式のワークショップを行うなど、コロナ禍における新たなワークショップのあり方を模索した。

最後に「あにめのたね 2021」育成委員長の川口佳高氏が本事業を総括。作品制作に臨んだ4団体がそれぞれ今後のアニメーション制作がどうなるかという課題意識を持って取り組んでいたことを評価した。
4団体それぞれが、デジタル化に対して異なるアプローチをしており、今後も様々なアニメーション制作手法が出てくるだろう。
そういうときに、新人もベテランもフラットに学べる環境作りが必要になるだろうと展望を語り、本シンポジウムを締めくくった。
[杉本穂高]

あにめのたね 2021
https://animenotane.jp