コロナ禍での日本アニメの海外展開方法とは? フランスの国際アニメ見本市・MIFA出展のメリットも解説【レポート】 | アニメ!アニメ!

コロナ禍での日本アニメの海外展開方法とは? フランスの国際アニメ見本市・MIFA出展のメリットも解説【レポート】

東京都が都内のアニメーション関連事業者の海外進出を支援するため、2017年度より実施している「海外進出ステップアッププログラム」。本年度は新型コロナウイルスの影響に伴い、初のオンライン開催となった。

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東京都が都内のアニメーション関連事業者の海外進出を支援するため、2017年度より実施している「海外進出ステップアッププログラム」。本年度は新型コロナウイルスの影響に伴い、初のオンライン開催となった。


本プログラムは、海外進出に必要なスキルを有名講師から学ぶ「海外ビジネスセミナー」や海外企業への効果的なプレゼン(ピッチ)ノウハウを実践的に学ぶ「海外プレゼンスキル向上ワークショップ」を全6回に渡って行う。

10月15日には第1回目となる海外ビジネスセミナー「新時代の海外アニメーション市場を考えよう」をテーマに、3名の講師が登壇。

今回の講師は、2004年にアニメ情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立、現在は独立しアニメーションに関する報道・執筆に従事するジャーナリストの数土直志氏、MIFA2019(アヌシー国際アニメーション映画祭併設の国際見本市)の東京都ブースに出展し「作画添削教室」を開催したアニメーター・アニメーション監督・アニメ制作会社スタジオドリアン代表の押山清高氏、同じくMIFA2019で出展した映像制作会社Flying Ship Studioプロデューサーの小澤江美氏。

2020年、コロナ禍において海外アニメーションビジネスはどのように変化したのか。本セミナーで語られた海外アニメーションビジネスの“今”、そして“未来”についてのレポートをお届けする。

コロナ禍の影響で海外ビジネスのオンライン化が加速


二部構成となった本セミナー。前半はアニメーションジャーナリストの数土氏から「新時代のアニメーション市場 2020年にどう変わったのか」をテーマに、2020年の海外のアニメーションビジネス展開における手段や方法が語られた。


海外でアニメーションビジネスを展開していくにあたり、どのような手段があるのか。大きく3つの項目が挙げられた。「海外向けの権利販売(放送権、上映権、配信権、ビデオグラム化権)」「海外共同事業(出資者、出資先、企画・製作、制作、流通・配給)」「海外ビジネスのパートナー探し」がある。

そして、海外でアニメーションビジネスを実践するための具体的な方法を5つ紹介した。「1.個人取引(人脈/紹介)」「2.海外フィルムマーケット(国際見本市)」「3.国内見本市」「4.セミナー/マッチングイベント/ビジネスツアー」「5.アニメコンベンション/コミックコンベンション」だ。
中でも「2.海外フィルムマーケット(国際見本市)」は、海外に人脈がない人や定期的に新しいビジネスパートナーをつくりたい人にとっては一番有効だと数土氏は語る。

アニメーションに特化した国際見本市は主に二つ。毎年フランスで開催される「アヌシー国際アニメーション映画祭(併設見本市MIFA)」とカナダで開催される「オタワ国際アニメーションフェスティバル」だ。ほかにも「カンヌ国際映画祭」や「ベルリン国際映画祭」など大規模な国際映画祭での併設開催や、テレビ番組などの見本市「MIPCOM」や子ども向けコンテンツに特化した「Kidscreen Summit」、アジアコンテンツに特化した「アジアTVマーケット・フォーラム」などのいくつかの独立系フィルムマーケットで併設開催される。

これらの映画祭や見本市に参加し、ピッチやプレゼンテーション、ミーティングなどで企画・作品をアピール。潜在的なビジネスパートナーと人脈を構築し、継続的な企画提案や新作の売り込みなどが海外のアニメーションビジネスのステップアップとなる。
ただし、どのアニメーション見本市に参加するにしても「自分たちの持つコンテンツを求めているパートナーがどこにいるか考えて出展の場所を選ぶのが重要」と数土氏は述べた。

とはいえ、2020年は新型コロナウイルスの影響に伴い、数多くの映画祭や見本市は延期や中止が相次いだ。同時に増えているのが「オンライン見本市」だ。
今年6月15~30日にオンライン開催となったアヌシー/MIFAは、最初の1週間にカンファレンスやピッチイベント、ビジネスミーティングが開催、残りの1週間はビデオライブラリーの視聴といったフォローアップが可能だったそう。

現地開催でのピッチイベントは定員があるため人によっては見られない場合もあったが、オンライン開催であれば定員が埋まることがないため多くの人が参加でき、中にはライブラリーが残る配信もあり後日視聴が可能であるなどオンライン開催ならではのメリットがあったそう。

一方、「リアルの場では参加すれば偶然の出会いなどが発生するが、オンライン上ではそれが困難なため、事前のアポ取りは非常に重要」とも数土氏は述べた。
ピッチイベントが上手くいけば期間中は多くのミーティングが発生する場合もあり、関係者はかなり忙しいのではないかとの見解も。


アヌシーを含め、今後はコロナ禍が収束しても全くオンラインがなくなることはないだろう。オフラインとオンラインの組み合わせで開催する見本市もあるはずだ。新型コロナウイルスがもたらした海外のアニメーションビジネスの最大の変化かもしれない。
それを踏まえた上で「今後はITリテラシーを高めていく必要がある」と数土氏はセミナー前半を締めくくった。

MIFA出展で得た「人脈」


セミナー後半は、2019年度のMIFA東京ブースに出展したアニメーター・アニメーション監督・スタジオドリアン代表である押山氏とFlying Ship Studioのプロデューサーである小澤氏をパネリストに迎えパネルディスカッションが行われた。前半に引き続き数土氏がファシリテーションを務める。


スタジオドリアンは『SHISHIGARI』、Flying Ship Studioは『チルタとチャンルラ』を出展した。

『SHISHIGARI』はスタジオドリアン制作アニメーションの処女作。


「自分たちの理想としているつくり方の実験を込めて制作した」と押山氏。自主制作のように10人にも満たない少数精鋭のチームで制作を進めたという。海外に売れる作品であり、少数で持続可能な形態でアニメーションづくりをしていくというテーマは、『SHISHIGARI』のコンセプトに繋がっている。


当初はVIPO(特定非営利活動法人映像産業振興機構)の補助金を得るために企画された本作。そのときに制作した約17分の『SHISHIGARI』のプロモーション映像をMIFAへ持っていき企画を売り込んだ。押山氏は当時を振り返り「MIFAでプロモーション映像が有用かはケースバイケース。もう少しコンパクトでも良かった」と話した。

Flying Ship Studioの『チルタとチャンルラ』も企画自体はMIFA出展以前から考えており、海外で挑戦することを念頭に置いていたそう。


もう一つ『SHISHIGARI』と共通していたのが、持ち込み映像への見解だ。ピッチプレゼン資料用に『チルタとチャンルラ』のパイロット版映像を制作していたが、途中から使用しなかったという。

Flying Ship Studioは『チルタとチャンルラ』を世に出すことを念頭に置いていたことから、譲れる部分を事前に決め、海外のビジネスパートナーの意見を積極的に聞き一緒につくり上げるスタイルを取っていた。
「企画を実現させたいなら、かっちりとしたパイロット版映像は必要ない。作品の世界観が伝わるダイジェスト映像で十分」と小澤氏は語る。

また、ピッチで使用する企画書を実際に見せながら「MIFAで使用した企画書は完璧なものではないので、延々とバージョンアップしていく」と長期戦になることを小澤氏は言及。
ほかにも、MIFAでの4日間中3日間は30社ほどと面談を実施したが、「その場では盛り上がっても後日残念なお知らせがくることが多かった」と世知辛さを吐露。コンテンツに引きがあっても、海外のニーズとマッチしなければビジネスへの展開は難しいようだ。

そして、数土氏からMIFA出展の成果を伺ったところ、押山氏は「MIFAで得た人脈から海外のビジネスパートナーが見つかった」、小澤氏は「MIFAがキッカケでほかの国際見本市に出展するようになり、人脈がより増えた」と回答。

最後に、今後のアニメーションビジネスの方向性について数土氏が質問すると、それぞれ次のように答えた。

押山氏「『SHISHIGARI』は海外のビジネスパートナーさんと業務連絡を取りながら少しずつ前進していけるといい。『SHISHIGARI』のようにまだ見える形ではないが、MIFA以降少しずつ国内外からのお誘いが増えてきていて、最近はそうした表に見えない部分での宣伝効果も感じている。今は目の前の仕事をきっちりこなしつつ、臆せず次の企画も生み出し続けていきたい。また、自分たちを取り巻く状況は刻一刻と変化しているので、次作は『SHISHIGARI』のように最初からプロモーション映像をつくるべきなのか、その都度改めて検討して進めていきます」

小澤氏「Flying Ship Studioは現在複数の企画作品を動かしています。まずは一つひとつ形にしていくために段階を踏んでいきたいです。また、11月に開催される『Asian Animation Summitへ出展が決まりました。出展する企画は完全新作でないといけないことから、新しい企画『Trash Man』を立ち上げました。海外に通用する企画になるよう、来月半ばまでに準備を進めていきます。時間はかかると思いますが、海外への放送・配信の実現に向けて継続的に頑張っていきたいと思います」

今後のセミナー予定


海外進出に必要なスキルを学べる「海外進出ステップアッププログラム」。残りのセミナーは、10月30日に「海外でアニメーションをつくるためのステップとは」を開催するほか、11月13日と11月27日も開催。また、「海外プレゼンスキル向上ワークショップ」は12月4日と12月11日に開催される。

「海外進出ステップアッププログラム」
https://anime-tokyo.com/program/

[アニメ!アニメ!ビズ/animeanime.bizより転載記事]
《阿部裕華》
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