3Dアニメキャラのモデリングのポイントは? 東映アニメーションら4社が明かす【レポート】

9月28日に秋葉原UDXにて開催された「あにつく2019」内の「キャラクターモデリングセッション」にて、CGスタジオ5社によるクロストークが繰り広げられた。
その模様をお届けする。


登壇したのは、東映アニメーションでプロデューサーを務める野島淳志氏、同社CGディレクターの大曽根悠介氏、サムライピクチャーズのCGディレクター林和正氏、オレンジのVFXアートディレクター山本健介氏、同社CGモデラーの長川準氏、サンジゲン取締役にして、モデリングセクションのセクションマネージャー等を担当する鈴木大介氏が登壇。司会進行を同じくサンジゲンの取締役・瓶子修一氏が務めた。

まず、瓶子氏が客席に対し、映像に関わっているプロクリエイターと学生に挙手を求めると、会場の大半がプロであった。
最初に語られたのは、各社のモデラー数。東映は30名(海外を含めるとプラス15人ほど)、サムライピクチャーズは10名、オレンジは約20名、サンジゲンは39名とのこと。
続いて、各社が作成したモデルがスクリーンに映し出され、それぞれの作成スタイルについて語られていった。



最初に、東映アニメーションが『スター☆トゥインクルプリキュア』より、キュアスターのモデルを紹介。
『スター☆トゥインクル~』から、それまで以上にセルルックになっていると指摘されると、本編との繋がりを意識してCGを使用したいという要望から、『プリキュア』としては初となるMayaでのPencil+(セルルックな表現を行えるレンダリングプラグイン)の運用が行われていることが明かされた。

作画設定を元にローモデルが作成され、さらにそれをベースにハイモデルを作成。ボディモーションをつける際にローモデルを使用し、細かい芝居や、髪などの「揺れ物」の調整はハイモデルを使用している。
ロー/ハイの切り替えは、ツールでアニメーターが自由に切り替え可能になっているとのこと。

レイアウト時により軽く作業するためのカットモデルもあるが、基本的にはロー/ハイモデルの2種類を切り替えつつ作業しているようだ。紹介内では、フェイシャルリグの使用例も動画にて解説された。

(C)XFLAG

続いて、サムライピクチャーズが『モンソニ!』ダンスCGパートで使用されたモデルを紹介。
ローモデルとハイモデルを作り分けることはせず、3ds Maxの機能「ターボスムース」を使用してハイモデルとローモデルとしている。

(C)XFLAG

顔のモデルはボディと一体化で作るスタジオと別に作るスタジオが存在するが、このケースでは完全にモデルを分けて作っていたという。顔のモデルを一緒にした方がいいこともあると前置きしつつ、「うちの規模は大規模とまではいかないので、細かく新しいことができるから、分けるのもありなのかなと」と林氏。
制作当時はギリギリPencil+のバージョンが3であったが、現在はPencil+4にバージョンアップしたことで、今後やり方が変わっていくという。

(C)XFLAG

こちらは、クライアントに提出するためのチェック用画像。望遠レンズ、広角レンズを多用する監督などもいるため、そのニーズに対応するため、2パターンのパースを効かせた状態で作成するという。
また、依頼するアニメーターに渡す動画なども用意されており、最終的にどのような画画に仕上がるかまでを程度共有するという、スタジオの方針が明かされた。

モーションには3ds Maxの機能「Biped」を使用し、髪や衣装の揺らしにはスクリプト「Spring magic」が採用されている。
だが、アニメーターたちは技術が上がるにつれてSpring magicを卒業し、シミュレーションに頼らず手付けでモーションを付けるようになるという。


オレンジは、独自開発ツール「Camera-O-Matic」を解説。このツールは、カメラ角度に応じて3Dモデルのモーフィングを歪ませて自動でパースを付けてくれるという、「全自動作画監督」と言っても良い代物。
こちらを使い、各プロジェクトのCGチーフディレクターが、カットや絵コンテの内容から、もう少し弱く変形を掛けたいなど、調整を掛けていくという。


表情付けに関しては、「福笑い」と称されたスタイルを取っている。口自体は3Dを使用しているものの、口パクなどはほとんど2Dの口に置き換えている。
理由を聞かれると、長川氏は「実際にセリフをしゃべる際の微妙なニュアンスや感情の表現、なにより日本のアニメに向いた気持ちの良い表情を作るのに、2Dの口が一番適しているからです」と語った。

3D上で口の位置情報をAfter Effectsに送るスクリプトを使用し、2D口を3Dレイヤーでリンク、AE上で2D口の動きをつけていくという。
まずオートで作成し、アニメらしく調整していくのがオレンジのスタイルと語る山本氏。モーションに関しても、モーションキャプチャーのデータを流し込んだ上で、アニメらしく調整を行う。

キャラモデルが完成してから、「Camera-O-Matic」で変形をさせるための仕込み作業によって掛かる時間は膨大で、作品やキャラクターによっては半年かかるものもあるという。

マスターデータができれば10キャラくらいには転用できるが、カットによっての見栄えの変化があり、チーフディレクターが調整を行っての差し替えなどもあるという。
その画作りへのこだわりに登壇者から「どうかしてる!」という声が挙がり、会場が笑いに包まれる一幕も。

(C)ARGONAVIS project.(C)BanG Dream! Project

最後に、サンジゲン鈴木氏が『ARGONAVIS from BanG Dream!』のアニメーションMVに使用されたモデルを紹介。

とにかくローポリでモデルを作り、それをターボスムースでハイポリ化を行っているというサンジゲン。
その理由として、キャラクターが大量に登場する作品を手掛けることが多いということに加え、アニメーターが顔を変形させやすいからであると述べていた。ポリゴン数が多いとリテイク一つでもかなりの手間が掛かるため、時間短縮にもローポリは貢献しているという。

(C)ARGONAVIS project.(C)BanG Dream! Project

各部にはモーションコントローラーが設定されている。女性のキャラはスカートなどがめり込みやすいため、楽にアニメーションを付けることができるよう、オートで動くシステムも組んでいるという。
衣装のディティールが多い女性キャラよりも、シンプルな服装の男性キャラの方が、作業負担が少ないかと思いきや、コートをなびかせるシーンなども多数登場するため、活用する機会があった。また、アニメート補助ツール「Biped」以外にもモーションコントローラーを設置し、細かい調整も可能にしている。

キャラモデルに加え、サンジゲンの取り組み「MODEL LIBRARY」も紹介された。
従来も過去に作った作品を活かし、素材を発掘していたが、最近ではファイル共有クラウドサービス「Box」にモデルを登録し、閲覧、引き出しの簡略化を行っているという。

(C)BanG Dream! Project

さらに、チェックライブラリも紹介された。
こちらはカット、モデルのチェックが登録されると、それがモデラー、アニメーター等に共有され、チェックからリテイク提出までの一連の流れを制作スタッフも共有することができる。
まだキャラクターモデリングが発注されていない若手社員も、ライブラリをチェックし、よくリテイクされることの多い項目を閲覧することで、傾向と対策を練ることができる。
教育的側面においても効果が見込めるとのことだ。


最後に、「学生、若手のうちから気をつけておくと上達できるモデリングのコツ」という質問が登壇者たちに投げかけられ、「アニメや映像をちゃんと観察していくこと。デッサン力が重要」、「3Dにするときは設定に描いていないことも作らなきゃいけない。そんなときに役立つ人体の構造を研究してほしい」と、それぞれの考えが述べられていき、最後に「良いものに触れたとき、“いいね!”ボタンを押すだけでなく、誰かに話したり、文字に起こしてみるなど、言語化してみると、より頭の中にインデックスが作られる。ぜひ、このセッションについての感想も書いて欲しい!」と司会の瓶子氏が延べ、セッションは締めくくられた。

『映画スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』(C)2019 映画スター☆トゥインクルプリキュア製作委員会(C)2019 映画スター☆トゥインクルプリキュア製作委員会

あにつく2019