「キティちゃんは宇宙戦争とかできないよ??」 創通&サンリオが明かす“ガンダムvsハローキティ”コラボの裏側【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

「キティちゃんは宇宙戦争とかできないよ??」 創通&サンリオが明かす“ガンダムvsハローキティ”コラボの裏側【インタビュー】

「ガンダムvsハローキティ対決プロジェクト」より、ハローキティ側の担当者であるサンリオの須佐奈央子氏と、ガンダム側の担当者である創通の大場彩矢氏にインタビュー。コラボの狙いや2大IPを動かす難しさや相互のIPの長所を聞いた。

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創通・大場氏、サンリオ・須佐氏
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国内のみならず海外でも確固たる地位を築いている国産IP、ハローキティ機動戦士ガンダム。2019年はそれぞれ45周年と40周年を迎えるアニバーサリーイヤーであり、それを機に実施されたのが「ガンダムvsハローキティ対決プロジェクト」だ。

(C)創通・サンライズ  (C)’76, ‘19 SANRIO 著作(株)サンリオ(C)創通・サンライズ  (C)’76, ‘19 SANRIO 著作(株)サンリオ
特に3月29日に発表された両IPが共演する特別アニメPVはアニメファンにも驚愕をもって受け止められた。現在第1話、第2話がYouTubeに公開されており、年明け1月には第3話の公開を予定している。その成り立ちについてはクリエイターインタビューという形で取材を行った。

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本企画では、特別アニメPVと並行する形で様々な企業とタッグを組んだコラボ対決がほぼ毎月のペースで行われている。
対決の場となったメーカーやブランド、流通は丸亀製麺、イトーヨーカドー専門店街、SCRAPの謎解きイベント、京王電鉄、ジョルダン乗換案内アプリ、LINEスタンプ、丸紅紙パルプ販売、LOVELESSなど様々だ。
今年の年末まで多くの企業を巻き込んだ巨大なプロジェクトとして、ガンダムとハローキティの対決は続いている。

そこで今回は本企画のハローキティ側の担当者であるサンリオの須佐奈央子氏(マーケティング本部キャラクター推進部営業推進課)とガンダム側の担当者である創通の大場彩矢氏(企画営業本部営業推進チームアソシエイトプロデューサー)にインタビューを行い、コラボの狙いや2大IPを動かす難しさや相互のIPの長所を聞いた。

創通・大場氏、サンリオ・須佐氏左から創通・大場氏(好きなアニメは『美少女戦士セーラームーン』)、サンリオ・須佐氏(好きなアニメは『PSYCHO-PASS』)
――おふたりはこのプロジェクトにどういった形で関わっているのでしょう?

須佐:私たちはどちらも営業推進担当で、「ガンダムvsハローキティ プロジェクト」を様々なメーカーさんや流通さんにご紹介し、ご協力いただくための営業活動及びプロジェクト運営を行っています。

大場:お互いのIPとビジネスを盛り上げる狙いでスタートしました。多くの企業さんにこのプロジェクトに参加していただくことが大きなミッションになっています。

――ガンダムとハローキティは前者が男性向け、後者が女性向けと主要ターゲットが異なるイメージがあります。両者を一緒に動かせる本企画は、確かに大きなビジネスチャンスになるはずですね。

大場:その通りです。ガンダムであれば普段は髭剃りや白髪染めなど、サラリーマンや30代から50代の男性向けのキャンペーンや商品化が多い。一方キティちゃんですと、女性向けのコスメなどが多いと思います。

須佐:そのふたつを一緒に提案できれば、業界や男女問わずどんな層にもアプローチ可能なキャンペーンができる。それが本プロジェクトの強みです。

(C)創通・サンライズ  (C)’76, ‘19 SANRIO 著作(株)サンリオ「ビーレジェンドプロテイン」とのコラボプロテイン
(C)創通・サンライズ  (C)’76, ‘19 SANRIO 著作(株)サンリオ「LOVELESS」とのコラボアパレルグッズ

■「対決」のコンセプトはなぜ生まれた?


――そもそもこのコラボはどういった形でスタートしたのでしょう?

大場:サンリオさんとは以前からお付き合いがあって「いつかコラボしたいね」という話はずっと前からあったようです。
そこで2019年がお互い45周年と40周年ということで実際にコラボをすることが決まり、「じゃあ何をどんな風にやる?」とお互いの現場のメンバーが考え、決定するところからプロジェクトに参加しました。

――「対決」というコンセプトもそこで決まったのですか?

大場:はい。通常のコラボであればガンダムのコスプレをしたキティちゃんのグッズを出す、といったことが最初に来ると思いますが、ガンダムとキティちゃんとではキャラクター性もファン層も全く違いますから、単に世界観を混ぜたのでは双方の良さが薄れてしまう。結果、どちらのファンにも楽しんでいただけないと。
ですからお互いを混ぜるのではなく、「いっそ対決しよう!」となったんです。

――なるほど、だからガンダムはガンダム、キティちゃんはキティちゃんのままなんですね。

大場:その通りです。

――須佐さんはどういったタイミングでプロジェクトに参加されたのですか?

須佐:ちょうどコンセプトが「対決」と決まった頃で、ある日、上司に「ガンダムvsキティ、やって」と言われました(笑)。「対決って言っても相手はガンダムだよ? キティちゃんは宇宙戦争とかできないよ??」とサンリオ内でも話題になっていましたね。

創通・大場氏、サンリオ・須佐氏創通・大場氏、サンリオ・須佐氏
――そうですよね(笑)。

須佐:「ただのコラボじゃないんだ」ということも強く意識していました。両IPの対決が軸で、それが盛り上がるかどうかを担っているのは双方のファンの熱量です。
そのため、ファンの方々に参加していただき、その行動によって結果が変わるようなインタラクティブ性のある仕組みにすることで、ファン同士が気持ちを高め合い、競い合えるようにしました。

――その仕組みとは、たとえばどういったものですか?

須佐:専用のLINE公式アカウントを開設して、全ての企画でガンダムとハローキティの獲得したポイント数や購買数などを算出して勝敗結果を都度発表するようにしました。
また、参加貢献度の高いファンの方にはグッズをプレゼントしたり、リアルイベントにご招待したりするなど、参加した方に手応えを感じていただけるようにしています。
そのポイント取得のシステムはLINE公式アカウントを活用して新たに開発しました。

(C)創通・サンライズ  (C)’76, ‘19 SANRIO 著作(株)サンリオ専用LINE公式アカウントの画面
――取材を行っている本日2019年11月28日現在、ガンダム5勝対キティ4勝と拮抗していますが、こういった形で勝敗が明確に出てしまうことに抵抗はなかったのでしょうか?

須佐:それはありましたよ。サンリオ側は全敗覚悟で挑んでます(笑)。

大場:それはこっちも同じです! 社内では「キティちゃんには勝てないよ!」と言ってました(笑)。

――なるほど。ではどっちが勝っても恨みっこなしで、“仕込み”はなかったと。

須佐:社内からも「何であんなにバランスよく進んでるの?」と言われますが、奇跡的なことに真剣勝負の結果です!

■IPを支えるギフトの精神と作品設定


――異なる企業理念、世界観の違うIPを持つ両者がガッチリ連携されたわけですが、何か発見はありましたか?

大場:アニメPVの話にも絡んでくることなのですが、最初のミーティングでサンリオさんから「キティは戦うことはできません。武器も持てません」と明言されました。
一方でガンダムは戦いと不可分ですから、そこからしてIPの持つ文化が違うことを感じました。


――やはりそこは譲れない大前提なのですね。

須佐:はい。サンリオは、みんな仲良く思いやりの精神なのです。

大場:「キティちゃんは元々贈り物にデザインされたキャラクターとして誕生しているので、それが何かを傷つけるものであってはならない」と最初にご説明をいただきました。サンリオさんの企業理念が反映されたIPなんだと実感しました。

須佐
弊社はもともと、贈られる誰かが喜んでくれるように、とプレゼントに選ばれる商品を可愛く「いちご柄」にしたところからビジネスが始まっています。キティちゃんも初めは、「ハローキティ」という名前もつく前に、がま口パース(財布)を可愛くするワンポイントからスタートしているんです。

――キティちゃんという固有のキャラクターになったのは後からなんですね。

須佐:そうです。世の中には、ゲームやアニメ、映画、書籍など様々なコンテンツからストーリーを持ってキャラクターが生まれていますが、キティちゃんは「商品」を可愛くする目的で生まれているので、プロフィールなどはあっても、インパクトの強いストーリーはありません。でも、手にしてくれた人それぞれに寄り添うことができるので、背景や設定という色がついていないことが、キティちゃんの良さなのかなとも思います。

大場:ガンダムの場合、真逆ですね。世界観やストーリーによってキャラクターが生まれているんです。

須佐:ガンダムのように設定があることの強みは、お取り組みをしていて非常に強く感じました。

(C)創通・サンライズ  (C)’76, ‘19 SANRIO 著作(株)サンリオ
――具体的にはどういった点で感じられましたか?

須佐:ガンダムの場合、世界観やキャラクターの性格、名シーンなどをとっかかりにして
「連邦とジオンのように、ガンダムとキティちゃんのどちらを応援してもいいんですね」「なるほど、だからガンダムでコラボ対決なんですね」と納得していただきやすい。物語や設定を通じて共感し合えることの強みを感じました。

サンリオの場合は、背景や設定がない分、企業のやりたい方向に合わせて一から企画するという難しさがあります。その分、企業の想いに寄り添えるという良さもあるんですけどね。

大場:ガンダムの作品設定や物語は富野由悠季監督をはじめ多くのクリエイターの方々が作り上げてきたものです。意味もなく作った話や設定はひとつもないはずですから、それらを大事にすることはクリエイターへの最低限の心遣い、マナーだと考えています。

創通はガンダム関連の企業窓口として作品やコラボ企画をチェックや監修しているのですが、それがガンダムというキャラクターを守ることにもつながっていると思います。

創通・大場氏創通・大場氏
――キャラクターや世界観を守るという観点から、今回のコラボについてガンダム側での懸念はなかったのでしょうか?

大場:実は、ガンダムがキャラクター同士のコラボレーションをするのは例が少ないんです。須佐さんのおっしゃるように世界観やキャラクターが確固としてあるので、他のキャラクターと同居させにくいからです。
役員会でも「10年前ならやらなかったかも」と言われるぐらいでした。でも、ガンダムやアニメそのものの社会的認知や地位が高まったことで「今ならファンのみなさんも受け入れていただけるのではないか」ということで今回実現に至りました。


→次のページ:巨大IP同士のコラボ、外せない重要なこととは?
《いしじまえいわ》
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