アニメ・マンガの“聖地化”を成功させる秘訣とは? 「どこにドラマがあるのかを理解すべき」【IMARTレポート】


11月15日~17日の3日間にわたり、東京・豊島区役所本庁舎にて開催されたマンガ・アニメの未来を作るフェスティバル「国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima(IMART)」。
15日には「マンガ・アニメの『聖地』をどう考え、どう生み出すか」と題したトーク・セッションが公開され、作品にゆかりのある土地でのイベントやビジネス展開についてさまざまな視点から意見が交わされた。

豊島区は本年度、東アジア文化都市開催都市として多岐にわたる文化事業を行っている。同フェスではマンガやアニメの未来をテーマにしたカンファレンスが行われ、各分野や業界をリードする第一人者たちが基調講演やディスカッションを通し、領域を横断しながら知見を共有した。

同セッションでは、マンガやアニメの舞台となった土地が作品のファンたちに“聖地”と呼ばれることにちなんだ議論が展開された。
“聖地巡礼プロデューサー”として活動する聖地会議代表取締役の柿崎俊道が、アニメ『らき☆すた』の埼玉県久喜市の鷲宮、アニメ『ガールズ&パンツァー』の茨城県大洗町、映画『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の埼玉県秩父市などの事例を紹介しながら、地域が聖地となる流れを解説した。


地方都市が作品の舞台となるのはクリエイターの故郷やゆかりの地であるケースが多い。
ロケハンで取材を重ねている間に、コンテンツの製作委員会がグッズやイベントなどのビジネス展開を調整し、自治体やフィルムコミッションともやりとりをする流れが一般的だという。


作品化に数年要する場合、タイムラグによる地元側の混乱も懸念され、聖地化の妨げとなる可能性があるという。
「ロケハンに来るのはクリエイター陣だが、地域がビジネスの相手をするのは製作委員会。後者はコンテンツが終わった後は解散してしまう。終了後も継続するには、地域とクリエイターとの信頼感が大切」(柿崎)と熱を込めた。


全国にあるマンガやアニメに関わる施設を有した地域を聖地として位置付けると前置きしつつ、「(聖地としての)コンテンツを提供する側の活動を一企業として裏方でサポートしている」と語ったのは、大日本印刷でデジタルアーカイブ分野を主軸に国内外の美術館、教育機関などと連携した事業を手掛ける岩川浩之。

秋田・横手市増田まんが美術館や新潟市マンガ・アニメ情報館をはじめとした施設同士をつなぐ場を設け、「出身の原画を預かったが、どう活用すればいいか」「著作権管理や出版社とのやりとりは」などといった課題を共有し、集合知で解決するネットワーク化への取り組みを今年からスタートさせたという。


地方のアニメイベントが成功を収め、聖地化したケースもある。“京まふ”の愛称で親しまれる「京都国際マンガ・アニメフェア」はまさにその代表格だ。
本年の入場者数が4万7160人と過去最高を記録し、初回の2012年に比べ約2倍に増加し、秋の一大イベントとして定着した。


立ち上げ時に事務局メンバーとして尽力した菊池健は、初開催時は東京で開催されていたアニメイベントが分裂していた時期だったこと、京都という土地の高いブランド力がまずエンタメ業界全体を惹きつけたことが成功の要因だったと振り返った。

さらに京都では2006年に「京都国際マンガミュージアム」を開館させた行政としての実績が土台にあったことも大きいという。
「聖地というと町おこしの意味合いもあるが、京都の場合はアニメ以外のイベントを手掛ければ20~30万人の来場者は当然。わざわざ“起こさんでええ”と言われるほど期待が薄かった分、じっくりと作り込めた」(菊池)と話した。


『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ』と、300年以上の歴史を誇る老舗・聖護院八ツ橋総本店とのコラボレーション商品も同氏が仕掛け人。
京都での限定発売を経て、都内のイベントでも発売されるようになるなど人気を博した。「交渉が大変だったが、伝統産業と版権作品のコラボレーションは爆発力が大きい」(菊池)と、地域に根付いた民間企業とのビジネス取引の可能性にも言及した。


続いて、マンガナイト/レインボーバード合同会社代表の山内康裕が加わりディスカッションが行われた。
聖地の本質について、菊池は手塚治虫らが住んだアパート「トキワ荘」について触れつつ、「聖地に対しては物語がすでに出来上がっている。それをいかに表現するか、物語が再現されている状態でどうファンに提供するかが大切」と語った。
柿崎は「“聖地巡礼”は現場検証と同義。聖地として送り出す側が、(題材となった作品の)どこにドラマがあるのかを理解すれば、ファンに届く企画が生まれるはず」とした。



ディスカッション時の進行役となった岩川から豊島区が聖地になれるかどうかを問われた山内は「イベントは増え、ファンの方が集まる場所にもなってきており、今後は解像度をもっと上げたていきたい。マンガ・アニメ産業において、民間ではできない下支えをしていけたら」と意欲をのぞかせた。
[潮田茗]