声優・古川登志夫が“声”による表現方法をレクチャー 視覚障害者の可能性広げるプロジェクト始動 | アニメ!アニメ!

声優・古川登志夫が“声”による表現方法をレクチャー 視覚障害者の可能性広げるプロジェクト始動

文化庁と朝日新聞社による「『声の力』プロジェクト」が発足。その活動第一弾となる「プロ声優による盲学校への出張授業」が、7月21日に筑波大学附属視覚特別支援学校にて行われ、講師として声優の古川登志夫が登壇した。

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「声の力」プロジェクト」第一弾「プロ声優による盲学校への出張授業」
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文化庁と朝日新聞社による「平成31年度障害者による文化芸術活動推進事業」内に、障害者等による文化芸術活動推進プロジェクト「『声の力』プロジェクト」が発足。その活動第一弾となる「プロ声優による盲学校への出張授業」が、7月21日に筑波大学附属視覚特別支援学校にて行われ、講師として声優の古川登志夫が登壇した。

「『声の力』プロジェクト」とは、視覚障害児に“声”による伝え方の多様性を学んでもらい、自分の可能性を再発見してもらうことを第一目的とするプロジェクトだ。
この日授業を受けたのは、アニメが好きで声優やアニメ関係の仕事に興味を持つ高校生の男女8名。全員に視覚障害があり、8名のうち4名は点字、4名は拡大文字で台本を読むが、文章を読むスピードは晴眼者と変わらない。
古川が登場し、「数多くの作品に出演されている人気声優で、声優、ナレーターの養成所・青二塾の塾長も務められている古川登志夫さんです」と紹介されると、8名の生徒から「ええーっ!?」と感激の声が上がった。

まず古川のプロフィール紹介では、『ワンピース』のエース、『からくりサーカス』のフェイスレスをはじめとする1人4役など、これまで演じてきた人気キャラクターの数々が挙げられる。中でも『うる星やつら』の諸星あたるの名前が出ると、「おおーー」とひと際大きなリアクションがあった。
続いて生徒たちの自己紹介では、一人ずつが自分の名前と好きなアニメを発表していく。好きなアニメに『名探偵コナン』が挙げられることが多く、これに古川は「僕が出ていたアニメだからって、気を遣っているんじゃ?」と言って笑わせる一幕も見られた。

「声の力」プロジェクト」第一弾「プロ声優による盲学校への出張授業」
生徒たちの緊張がほぐれたところでいよいよレッスンへ。まずは声の出し方の基本となる「腹式呼吸」と「胸式呼吸」という2つの呼吸法を学んだのち、笑い方についてのレクチャーが行われる。
古川から「『へへへへ…』と笑うときには、頭に『ヌ』をつけて『ヌへへへへ…』とやるといい」というアドバイスがあると、生徒の中から「あ、確かに!」と驚きの声が上がった。

休憩をはさんでの2時限目は、全員で立って「アエイウエオアオ」の発声練習からスタート。その後、昔ばなしの『桃太郎』を教材に一人ずつ本読みが行われる。
全員の読みを聞いた古川は「みんな素直な読みで、好感度が高いです」と嬉しそうにコメント。続いて「素直もいいけど、今度は抑揚をつけてオーバーにやってみましょう」とお手本を見せると、プロによる迫真の演技に生徒たちは引き込まれるように聞き入った。

最後に次回までの課題が出され、第1回目の授業は終了。参加した生徒たちは「プロの声優さんに直々に教えていただけるなんて、貴重な体験ができました」「(古川さんの)演技を実際に聞けるなんて夢みたい」と一様に声を弾ませた。

古川による第2回目の特別授業の様子は後日配信予定。さらに今後は、ラジオドラマ共同制作のための合宿や地方の盲学校での出張授業などが実施されるほか、合宿の成果報告を兼ねたシンポジウムも都内で開催される予定だ。

<以下、コメント全文掲載>


「声の力」プロジェクト」第一弾「プロ声優による盲学校への出張授業」

【古川登志夫】


――今日の生徒さんたちの印象はいかがでしたか?
今日一番緊張していたのが僕だと思いますけど(笑)、生徒さんたちは皆さん意外とリラックスしていたので、その意味ではやりやすく感じました。みんな前のめりなんですよね。普通、最初の授業では、声優を目指す子たちが集まっている養成所でも、何か振ると「え、私がやるんですか?」と躊躇してしまいます。でも今日の子たちは最初から参加する気持ちが強くて、大変やりやすかったです。最初はちょっと緊張していたかもしれないけど、少し話を始めたら表情がどんどん変わっていきました。やっぱりアニメやサブカル系のコンテンツに興味のある子たちだなと一見してわかりましたし、明るくて前のめりで、やる気がひしひしと伝わってきて、楽しい授業ができたと思います。

――発声練習のときは、いかがでしたか?
そんなにすぐできるとは思っていなかったんですよ。一呼吸で早めに息を吸って4カウントで吐くとか、最初はなかなかできないものですが、レクチャーを受けたことのある子たちのようにできていたので驚きました。

――原稿読みのときは?
あんなに早く読めるとは実は思っていなかったです。点字の台本というものを目の当たりにするのは初めてで、恐らくあの早さでは読めないだろうから通常のレッスンとは違う時間の流れになるのかなと想像していましたけど、まさかあんなに早く読めるとは驚きましたね。見事に裏切られました。物語を読むときは一人ひとり非常に素直に読んでくれて、むしろ「プロもこのように読めたら」と思わせるような子までいるほど。プロがテクニカルに読むと、つい表現過多、表情過多になってしまうようなところがすーっと入ってきて驚きましたね。僕自身、勉強になりました。

――2回目、表情をつけて読むのは難しそうでしたね。
そうですね。難度的には1段階上がりますから。しかも喜怒哀楽がそれとなく入っているスクリプトになっていますので、いきなりやってもらうのは難しかったかもしれません。でも、今日の子たちは期待できると思います。全員が声優になりたい人ばかりではないと思いますが、みんな前向きで、アニメが好きな人たちなので、次回の授業は1回目の授業よりも期待感が高いです。

――今日の授業の感想をお願いします。
一番驚いたのは、やはり読みが素直だったことですね。私たちプロは足し算の演技、引き算の演技と言いますけど、引き算の演技というのはプロになればなるほど難しくなってくるんです。プロはみんな、自分の番になると自分の持てる技を全部出そうとしますから、足し算の演技になりがちなんですが、本当にうまい声優は、なるべく余分なことをやらずに、いらないものをそぎ落とした表現ができるんです。そういう人は、現場で見ていても「うまいな」と思いますね。その部分では、今日は「いいな」と思う人がいました。特に『桃太郎』のようなおとぎ話の読み聞かせには、今回のような素直な読みがいいんじゃないかと思います。

「『声の力』プロジェクト」
文化庁の「平成31年度障害者による文化芸術活動推進事業」として、視覚障害児が声による伝え方の多様性を学ぶことで、自分の可能性を再発見することを目指すプロジェクト。文化庁と朝日新聞社が主体となり、株式会社青二プロダクション、青二塾と「声優グランプリ」編集部(株式会社主婦の友インフォス)協力のもと事業進行中。
【実施主体】
主催:文化庁、株式会社朝日新聞社
協力:株式会社青二プロダクション、青二塾、株式会社主婦の友インフォス(『月刊 声優グランプリ』)


[アニメ!アニメ!ビズ/animeanime.bizより転載記事]
《仲瀬 コウタロウ》
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