米国エンタメ業界集まるサンディエゴ・コミコンとビジネス

 7月22日から25日まで、米国サンディエゴ市で米国最大のポップカルチャーのイベント コミコン(Comic-con International)が開催された。参加人数は2009年で実数12万5000人、4日間の開催日程に前日のプレビューナイトを含めた延べ人数では軽く30万人を超えるとみられる。コミコンは参加人数に厳しい上限規制を設けているため、本年の参加者もこれと同程度とみられる。
 コミコンは開催当初からこの様なビッグイベントであったわけではない。イベントの大型化は90年代後半から2000年代にかけて、コミックスだけでなく映画、テレビドラマ、そして日本のアニメやマンガなど周辺分野を積極的に取り込むことで進んだ。ここ2、3年はゲーム関連企業の存在感が急激に増している。
 それはコミコン自身の戦略でもあったが、同時に米国のエンタテイメント業界、特にハリウッドの映画産業がこうしたイベントを欲していたためかもしれない。米国ではアカデミー賞やエミー賞などの賞イベントは多いが、ファン向けイベントや大規模な映画祭が意外に少ないからだ。ゲーム業界の大イベントE3も、参加で出来るのは業界関係者だけだ。エンタテイメント企業がコンシュマーにダイレクトに情報を伝え、最新作を宣伝する場の受け皿としてコミコンは急成長したのだ。
 
 この結果「コミックコンベンション」との名前とは裏腹に、イベントではマーベルやDCコミックスといったコミックス出版社だけでなく、ディズニーやワーナー・ブラザーズの映画会社、マテルやハズブロの玩具会社、カートゥーンネットワークやG4の放送局、EAやアクティビジョン・ブリザートといったゲーム会社、まさに米国のエンタテイメント企業が総並び状態になっている。あるいは、マーベルがディズニー傘下に入り、DCコミックスがワーナー・ブラザーズの傘下にあることを考えれば、それはハリウッド・コンベンションと呼んでもいいかも知れない。
 いまやコミコンは、コミックス、映画、テレビドラマ、SF、玩具と多方面に拡大した米国で最も重要なポップカルチャーの情報発信地である。そこでは最新作の映画やテレビドラマの発表が行われ、ハリウッドスターや監督、プロデューサーも訪れる。

 そうした情報発信機能は、コミコンの表の顔であるファンイベントや最新情報の発表にとどまらない。実はコミコンの別の機能は、業界の交流の場を作り、ビジネスの場とみられる。もともとコミックスアーティストや出版社にとってコミコンは、年に一度の交流の場であった。しかし、コミックスが映画化やテレビ化されるケースが増えるに連れ、それは映画会社やプロダクション、プロデューサーにネットワークを広げた。
 派手なイベントに目を奪われがちだが、海外の大きなファンイベントでは、ビジネス交渉も行われている場合が少なくない。つまり、人が集まり、それに対応する企業が集まり、さらにコミュニケーションが生まれると、それがビジネスに発展するためだ。現在のコミコンは、企業とクリエイター、ファンが一堂に介し、さらにビジネスが生まれる一大情報ハブの役割を果たしている。

 米国内でコミコンの位置づけが急激に変化しているように、日本のマンガ、アニメ、ゲームの関連企業にとっても、コミコンの在り方は変わりつつあるようだ。
 今回、日本のマンガ、そしてアニメのライセンスを持つ企業関係者が、ビジネス目的で多数コミコンの会場に訪れていた。僕自身にとっては初めてのコミコンではあるが、その数は増えているという話を聞いた。これもコミコンの持つ情報集積、ビジネス集積のひとつの結果だろう。

 これまで日本アニメに関しては、国内外の企業が多かったアニメエキスポがビジネスハブに近い役割を果たしてきた。日本のアニメ・マンガに関連する企業やビジネス関係者の参加が多かったからである。しかし、今年のコミコンでの変化を見ると、今後はこれがよりコミコン重視に動くかもしれない。
 理由のひとつは米国の現地アニメ企業の経営体力が弱くなっており、アニメエキスポの企業集積機能が落ちているためだ。特にマンガ出版社では、コミコンを重視する姿勢がだいぶ前から強まっている。アニメエキスポに参加せずにコミコンだけ参加するマンガ出版社は数多い。また、VIZ media、Tokyopop、YenPressなどはアニメエキスポにブースは出さないが、コミコンには出している。もとがコミックスのイベントだけに、マンガ出版社にとってコミコンがより魅力的なのは理解できる。

 もうひとつは、コミコンのオールジャンル化が日本企業の近年のコンテンツビジネスの戦略にとっても都合のいいものとなっている点だ。これまで日本のライセンス保有者は、翻訳出版権を現地企業に売るビジネスが中心だった。しかし、現在はより収益を上げる方法として、共同製作や現地でのメディアミックス、実写化権の販売などビジネスは多角的に広がりはじめている。
 その際のビジネスパートナーは、これまでのアニメ専門のディストリビューター(配給業者)だけでなく、映画会社、放送局、玩具会社、ゲーム会社に拡大する。コミコンには、アニメのディストリビューターに加えて、そうした企業が存在する。つまり、ビジネス交渉の場として、コミコンはより多くの企業との取引の可能性がある。
 さらに、米国では、近年、日本アニメ・マンガスタイルの現地文化との融合が強まる傾向がある。マンガ出版社は、日本マンガだけでなく、米国産マンガスタイルの作品を出版し、日本のアニメ、ゲーム会社は米国に向けた作品を制作する。それらの作品を送り出す場は、アニメコンベンションより大衆志向が強いコミコンになるというわけだ。
[数土直志]

コミコンインターナショナル (Comic-Con International)
http://www.comic-con.org/