アヌシー2010開催(後編) 日本作品も活躍した短編部門

■ヨーロッパが強い、学生部門
 欧米やアジアでアニメーションの教育環境が整い、伝統的な技法からコンピュータやマルチメディアを用いた新しいアニメーションまで、さまざまな実験要素も加わり、斬新なストーリーも楽しみな卒業制作では今年も優れた作品、将来性のある逸材に巡り会えた。受賞は逃したものの、9本が出品されたイギリスの表現力は不動であった。CGの表現力と個性的なストーリーで異色を放つ韓国であるが、今年は出品作品が少なく残念であった。
 受賞をしたのは、フランスの2作品とドイツの1作品。ヨーロッパのアニメーション教育機関の優秀校3校が並んだ。それぞれ教育の方針もスタイルも異なるが、世界のアニメーション界へ新星を送り出している。最優秀賞にはフランスのGobelins(ゴブラン)から『The Lighthouse Keeper(灯台守)』(David François, Rony Hotin, Jérémie Moreau, Baptiste Rogron, Gaëlle Thierry, Maïlys Vallade)、審査員特別賞にはフランスのLa Poudrière(ラ・プードリエール)の『Sauvage(野生)』(Paul Cabon)、特別賞にはドイツのFilmakademie Baden-Württemberg(バーデンヴュルテンベルク州立フィルムアカデミー)の『Lebensader(生命の線)』(Angela Steffen)が選ばれた。

 ゴブランは、上映のオープニングアニメーションを毎年提供している。2年生、5チームによる日替短編はアヌシー名物だ。そして今年9月から、パリ商工会議所が運営するゴブランがアヌシーに提携校を開校する。ディジタルコンテンツ制作を本格的に教育する機関として、アヌシーそしてローヌ・アルプ地域の映像産業クラスター“Imaginove”(イマジノーヴ)関係者の期待を集める。ローヌ・アルプ地域のValence(ヴァランス)にあるラ・プードリエールは開校10年を迎えた。在校生数十名という小規模で、伝統的アニメーションを中心に、監督・演出家などを輩出する専門機関。今日のアヌシーの礎を残した、故ジャンリュック・ジベラ(Jean-Luc Xiberras)の元で映画祭のアシスタントディレクターを務めたアニック・ツニニェ(Annick Teninge)が校長を務める。その卒業生は、フランスのみならずヨーロッパのアニメーション界で活躍しはじめている。
 フランスのこども番組専門有料放送局CANAL Jが主催した、番組用短編コンテスト「Les Espoirs de l’Animation 2010」では、フランスのアニメーション教育機関7校が参加し、「A birthday like no other(他とは違う誕生日)」をテーマで競われたが、最優秀作品はラ・プードリエールであった。

 バーデンヴュルテンベルク州立フィルムアカデミーは、映画学校の一学科として設置されたアニメーションコースから始まり、現在は半独立のアニメーションインスティチュートとして、ディレクターのトーマス・ヘーゲル(Thomas Haegele)の元でアニメーション界のリーダーを養成する。卒業生の多くは、欧米で監督・演出家、アートディレクター、テクニカルディレクターそしてプロデューサーとして活躍する。
 テレビ部門の最優秀賞を受賞した『Der Kleine und das Biest(The Little Boy and the Beast)』(Johannes Weiland、Uwe Heidschötter)と、TV特番賞の英Magic Light Pictures制作の『The Gruffalo』(Jakob Schuh、Max Lang)は、いずれも同校の卒業生が設立したStudio SOI(スタジオ・ソイ)が制作に携わった。Studio SOIはテレビ部門で昨年に続く受賞となり、ヨーロッパの成長頭だ。
 卒業制作部門特別賞の『Lebensader(生命の線)』は、1枚の葉を手にしたこどもが、葉と共に形を変える、変幻自在なモーフィングで短編アニメーションの神髄を楽しめる。音楽に連動するモーフィングが印象的で一般部門オリジナル音楽賞に選ばれた、ドイツの『Love & Theft(愛&泥棒)』を制作したStudio Film BilderのAndreas Hykade(アンドレアス・ヒケイド)も同校の卒業生だ。ハロー・キティやスポンジ・ボブといったキャラクターがサイケデリックなアニメーションへ変転するセンスが光った。

 卒業制作部門に日本の2本が出品された。いずれも東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻1期生の修了制作で、和田淳の『わからないブタ』と銀木沙織の『指を盗んだ女』。日本は同部門のファイナリストを出せない年もあったが、今年はアニメーションアートの新星2名がアヌシーデビューを果たせた。
 アジア作品では、中国のCommunication University of China(中国伝媒大学)からZhiyong Liの『Kungfu Bunny 3 – Counterattack(カンフー・うさぎ 3)』がこども審査員賞に選ばれた。机の上で繰り広げられる、うさぎ(アヌシーのヒーロー)とダメ犬のカンフー決闘というベタなコンピュータアニメーションながら、軽快なテンポとぬかりないユーモアに引き込まれた。

アヌシー国際アニメーション・フェスティバル(Annecy 2010)  http://www.annecy.org/

■Annecy 2010、50周年記念出版物
Créateurs & Créatures (Creators & Creatures)
50周年の記念本 アヌシーの50年間にゆかりのアニメーション作家らの作品画像と英仏語のメッセージを収録。
制作:CITIA、出版:Glenat、39.00 €
http://patrimoine.glenatlivres.com/livre/createurs-et-creatures-9782723476966.htm

Annecy, le coffret du 50e anniversaire (Annecy, 50th anniversary Box Set)
50周年記念DVD アヌシーで受賞した短編40本を年代別に収録した、DVD5枚組と小冊子の記念出版。日本作品では、加藤久仁生監督の『つみきのいえ』が収録されている。
制作: Fesitival d’Annecy、出版:Chalet Pointu、49.95 €
http://www.chaletfilms.com/produit/7590-Annecy__50th_anniversary_Box_Set.html