アヌシー2010開催 『サマーウォーズ』受賞逃すがアヌシーに共感残す(前編)

■ 長編グランプリで脚光を浴びた、『サマーウォーズ』

会場の風景。右手に「サマーウォーズ」のポスターが。写真撮影:伊藤裕美

 本開催中の6月9日にフランスで一般公開(第1週32館)されたのが、細田守の『サマーウォーズ』だ。前作『時をかける少女』で第31回の長編部門特別賞を受賞した細田は、アメリカのVariety(バラエティー)誌は「次に来る才能」として「Next Miyazaki(ポスト宮崎駿)」と紹介するほど、海外の認知度が高まる。フランスの映画専門誌や一般紙による『サマーウォーズ』の評価は高く、公開日には有力紙Liberation(リベラシオン)は作品画像を載せて大きく紹介した。また、アヌシーの日刊紙Le Dauphiné(ル・ドフィネ)も娯楽欄であらすじとともに紹介した。
 長編コンペティションで『サマーウォーズ』は、アメリカのウェス・アンダーソンの『Fantastic Mr. Fox(ファンタスティック ミスター・フォックス)』(20th Century Fox Animation、Scott Rudin Productions)、スウェーデンのタリク・サレ(Tarik Saleh)の『Metropia(メトロピア)』(Atmo)、フランスとイタリアの合作でドミニク・モンフェリ(Dominique Monféry)の『Kérity la maison des contes (ケリティ 童話の家)』(Gaumont-Alphanim、La Fabrique Production、Lanterna Magica、S.R.L.)、中国のJian LIUの『Piercing 1(悲鳴 1)』(LE-JOY ANIMATION STUDIO)、そして境宗久の『ONE PIECE FILM STRONG WORLD(ワンピース フィルム ストロング ワールド)』(東映アニメーション)と競った。
 現実社会と不可分となったサイバー空間で凶悪化したアバターと死闘する“日本の大家族”はヨーロッパの観客に受け入れられるか?上映終了後拍手は鳴りやまず、家族の絆を尊び、家族の食事をたいせつにする彼の地でも、上田の旧家・陣内家の食卓は共感を呼んだ。二度目の受賞は逃したものの、「細田守」の名はアヌシーの観客の記憶に強く残った。東映アニメーションのフランス現地法人がMIFA会場で大きくアピールした、『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』も客席を大いに湧かせた。

『ファンタスティック ミスター・フォックス』 Director: Wes Anderson © TWENTIETH CENTURY FOX

 長編グランプリのクリスタル賞と観客賞は『ファンタスティック ミスター・フォックス』に、特別賞は『ケリティ 童話の家』に贈られた。ジョージ・クルーニー、メリル・ストリープ、ビル・マーレイらが声の出演をした『ファンタスティック ミスター・フォックス』は、「チョコレート工場の秘密」などのロアルド・ダールの児童文学「すばらしき父さん狐」(旧タイトル 父さんギツネバンザイ)の人形アニメーション。リップシンクなどの3Dビジュアルエフェクトを駆使し、人形のコミカルな動きと原作のユーモアを活かした秀作。監督にウェス・アンダーソン、アニメーション監督にヘンリー・セリックでRevolution Studiosが2004年に制作に着手したが頓挫、2007年にアニメーション監督をマーク・ガスタフソン(Mark Gustafson)に交代し、ロンドンの3 Mills Studiosで制作が再開された。その間、セリックは本作から離れ、昨年のアヌシー長編クリスタル賞となった『コララインとボタンの魔女』を完成させている。

『ケリティ 童話の家』 Director: Dominique Monféry © GAUMONT-ALPHANIM, LA FABRIQUE PRODUCTION, LANTERNA MAGICA SRL

 『ケリティ 童話の家』は、Walt Disney Animation Franceが制作した短編『Destino』でオスカーにノミネートされたドミニク・モンフェリ(Dominique Monfery)の長編監督2作目。オリジナル脚本は、7歳の少年と童話の主人公たちが繰り広げる冒険談。読書嫌いの少年ナタナエルは、エレオノール伯母さんの、海辺の家で夏休みを過ごすのが習慣だったが、伯母が亡くなった家に両親と姉と共に移り住む。  そこには童話の初版本を集めた、素晴らしい書斎があり、ナタナエルに管理が任されるが、家の修理費が必要となった両親が古物商にすべての本を渡してしまう。ありとあらゆる童話の主人公がナタナエルに助けを求めるのだが、書斎の壁に書かれた呪文を限られた時間内で読まねばならない。文字を読むのが苦手なナタナエルだが、不思議の国のアリスなどを助けようと奮闘する。アートディレクターはENSAD(フランス国立高等装飾美術学校)出身のイラストレーター レベカ・ドトルメール(Rébecca Dautremer)で、繊細な色づかいの背景が本作に秀逸な彩りを与えた。アニメーションは、業界で躍進著しい南西フランスのアングレームにあるスタジオとイタリアで制作された。両作品ともに日本公開を期待したいが、未定。

アヌシー国際アニメーション・フェスティバル(Annecy 2010 http://www.annecy.org/

(後編に続く)