藤津亮太のテレビとアニメの時代 第16回 “冬の時代”のその後……

藤津亮太のテレビとアニメの時代 
第16回 “冬の時代”のその後……

藤津亮太
1968年生まれ。アニメ評論家。
編集者などを経て、2000年よりフリーに。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)。編著に『ガンダムの現場から』(キネマ旬報社)など。アニメ雑誌、そのほか各種媒体で執筆中。
ブログ:藤津亮太の 「只今徐行運転中」 http://blog.livedoor.jp/personap21/

 今回とりあげるのは’87年秋から’90年春への変化である。
 どのような番組が放送されていたかは、次の表の通りである。

87年秋から90年春までのアニメ番組の変遷
*上記画像クリックで表拡大

 今回は各局が19時台にどれだけアニメを放送していたかに注目したい。

■’87年秋 15本/週
日本テレビ――2
TBS  ――1
フジテレビ――6
テレビ朝日――4
テレビ東京――2

■’88年春 15本/週
日本テレビ――1
TBS  ――1
フジテレビ――6
テレビ朝日――5
テレビ東京――2

■’88年秋 15本/週
日本テレビ――1
TBS  ――1
フジテレビ――5
テレビ朝日――6
テレビ東京――2

■’89年春 16本/週
日本テレビ――1
TBS  ――1
フジテレビ――4
テレビ朝日――7
テレビ東京――3

■’89年秋 13本/週
日本テレビ――1
TBS  ――1
フジテレビ――3
テレビ朝日――6
テレビ東京――2

■’90年春  14本/週
日本テレビ――1
TBS  ――1
フジテレビ――4
テレビ朝日――6
テレビ東京――2

 歴史的に見てプライムタイムの19時台に積極的にアニメを編成してきたフジテレビとテレビ朝日の数字の変化が興味深い。
 フジテレビが6本から4本にまで減ったのは『北斗の拳2』『魁!男塾』の後番組がアニメではなくなり、『らんま1/2』が時間帯移動をしたことが大きい。
 この背景には2つの理由があると推測される。
 一つは’80年代後半がフジテレビの好調期であったこと。
 フジテレビは’81年にそれまでの「母と子のフジテレビ」から「楽しくなければテレビじゃない」へとキャッチフレーズを変更。
 ’82年に「年間視聴率三冠王」(ゴールデン・プライム・全日でトップをとること)を獲得すると、その後12年間にわたって「三冠王」の地位をキープした。
 ’84年から’85年にかけてハイターゲット作品が急激に減った理由の一因が、視聴率がとれないということだったことを考えると、フジテレビの視聴率がアップすることで、現行のアニメの視聴率ではもの足りないという流れが出てきたのではないか。
 さらにもう一つの理由として考えられるのが、当時がバブル景気の真っ最中であり、広告出稿側からアニメが嫌われたという可能性だ。
 もともとアニメは視聴者が偏っていることから、時代劇とともに広告主からは好まれていなかったジャンル。バブル景気により広告主の出稿意欲が旺盛になってきたため、アニメ以上に幅広くウケる企画のほうが好まれるようになったのではないか。
 これはテレビ朝日がアニメを増加させているのが、アニメの中でも一番視聴者を広く確保できるであろう「ファミリー路線」であることからも想像がつく。テレビ朝日はもともと藤子アニメに代表されるようにファミリー路線を得意としてきたが、藤子ブームが終わりを迎えようとするところで、別の追い風が吹いてきたのだろう。
 フジテレビとテレビ朝日が19時台をどう使っていたかを見ると、こうしたアニメの背景にあった事情が透けて見えてくるようだ。
 ’84年に放送本数が減った時、「『ラブコメ』『リアル系ロボットアニメ』の“次”が見えないため本数が減った」という分析があった。そしてその回答は、ファミリー路線にあったのだ。
 番組表を見てもわかる通り、この時期の番組はファミリー路線ではなくても、小学校中学年以下をターゲットにしたような“子供向け”作品が目立つ。ロボットアニメにしても『魔神英雄伝説ワタル』といったスーパーロボットとも異なる小学生をターゲットにしたロボットアニメが登場したのがこの時期である。
 TVアニメシーンは、アニメブームが終わって、ここに至って完全にリセットされたと言えるのではないか。
 特にこの時期に19時台からハイターゲット作品が減ったことが、後に大きな意味を持つようになったのではないか、と現時点では漠然と考えている。これについては今後、改めて検証したい。

 この時期を象徴する作品を一つあげると『らんま1/2』になる。『らんま1/2』は’89年4月より土曜19:30でスタート。しかし、半年で時間帯移動となり、’89年10月から金曜17:30という放送枠で『らんま1/2 熱闘編』として放送されることとなった。
 19時台からの移動となったのは、上記のような状況を考えると、視聴率などがやはり一因であったであろう。
 ただそんな『らんま1/2』が夕方の枠では、全143話となる人気シリーズとなったのである。
 視聴率競争の激化と広告出稿への対応から、かつてはプライムタイムで放送されていたハイターゲット作品が、夕方枠での放送となる。’85年のアニメブーム終了から数年をかけてアニメシーンのリセットがそのような形で置き、TVアニメが再び子供と家族をメインのターゲットにした時、『らんま1/2』『ワタル』といった作品が、新たなアニメファンを育てる一つのきっかけとなったのである。
 それが’90年代のTVアニメの礎となってのではないか。

 次回は’90年代へと入る前に、’80年代の夕方の再放送枠がどう変遷したかを確認したい。