佐藤秀峰さん イーブックと作品の電子書籍化契約

 電子書籍事業のイーブック イニシアティブ ジャパンは、『ブラックジャックによろしく』などのヒット作で知られるマンガ家佐藤秀峰さんの作品を順次電子書籍化する。5月28日に同社が運営する電子書籍配信・販売サイトeBookJapanにて、『ブラックジャックによろしく』全13巻の販売を開始した。作品はPCのほか、iPhone/iPod touch、Windows Mobile、さらにiPadでの閲覧可能だ。
 今回の電子書籍化は、佐藤秀峰さんが代表取締役を務める有限会社佐藤漫画製作所とイーブック イニシアティブ ジャパンとの作品電子化契約により実現する。イーブックは今後も順次佐藤秀峰さんの作品を電子書籍化、販売を進めて行く。

 佐藤秀峰さんは1998年に週刊ヤングサンデーでデビュー、その後『海猿』や『ブラックジャックによろしく』などのヒット作を生み出した。2009年春に既存の出版社を中心としたマンガビジネスの在り方に疑問を投げかけ大きな話題を呼んだ。
 その後、インターネットを通じて作家自らが読者に作品を届けるシステムを模索、今年3月に新たに「漫画 on Web」を立ち上げて、創作・発表の場のひとつとしている。そうした中でイーブック イニシアティブ ジャパンは、佐藤漫画製作所と今回の契約を結んだ。佐藤秀峰さんにとってイーブックの電子書籍は、出版に依存しない自作流通手段のひとつとなる。

 イーブックが著名なマンガ作家と直接に作品の電子化契約を結ぶのは、5月21日に発表された竹宮惠子さん(トランキライザープロダクト)に続き二人目である。同社が著名な作家との直接契約に力を入れている様子が伺える。
 今回の契約はファンや読者から見ると、これまでの電子マンガ書籍との違いが分かりにくい。これまでも竹宮惠子作品も、佐藤秀峰作品も、他の作家の作品と同様に電子書籍のラインナップに含まれていたからである。しかし、これらはマンガ単行本の出版社が紙媒体の作品の延長上として自社書籍の単行本を電子化したものだ。つまり、出版社のマネジメントによりビジネスが行われている。

 一方、今回の二人の作家による契約は、出版社を通すことなく自らが直接行っている。イーブック イニシアティブ ジャパンは、紙媒体の書籍でいうところの流通部門、書店にあたる。つまり、今回はマンガ作家が直接、作品の流通に結びつく。
 マンガ出版の権利は通常は著者が持っている。このためマンガ単行本の出版社は、作者の意志によって決定可能となっている。しかし、今回は作家が出版社を選ぶのではなく、自ら流通に結びつくことを選んだかたちだ。

 こうした二人の作家の選択が可能なのは、いずれの作家の作品も既に広い人気と知名度を築いていることに理由がある。出版において重要なマーケティングやプロモーションがさほど必要とされていない。同じことを若手作家や無名の新人が行うのはやや難しいかもしれない。
 しかし、インターネットにおいては、出版社を介在させないでマンガビジネスが成り立つことをあらためて意識させる出来事だ。こうした事例は、今後も少しずつ増えそうだ。

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