藤津亮太のテレビとアニメの時代 第5回 各局の夕方再放送枠の使い方

藤津亮太のテレビとアニメの時代
第5回 各局の夕方再放送枠の使い方

藤津亮太

[筆者の紹介]
藤津亮太
 (ふじつ・りょうた)
1968年生まれ。アニメ評論家。編集者などを経て、2000年よりフリーに。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)。編著に『ガンダムの現場から』(キネマ旬報社)など。アニメ雑誌、そのほか各種媒体で執筆中。
ブログ:藤津亮太の 「只今徐行運転中」 http://blog.livedoor.jp/personap21/

 これまで主に本放送の放送枠について記してきたが、今回は再放送枠について見てみたいと思う。
 現在、アニメはほとんど再放送されていない。最近、深夜でチラホラと再放送を流す場合もないではないが、定期的に過去作品を放映する再放送枠そのものは存在しない。例外的に関東ローカルではUHF局である、東京MXテレビが、ソフト不足を補うためであろう、かなり古めの作品を放送しているが、あれはどれぐらい見られているのだろうか。
 現在は、本放送が終わった作品は、連載漫画が単行本化されるように、90%以上の確立でDVDリリースされる。もう少し時間をおけばケーブル等の専門チャンネルで追いかけることも可能だ。視聴者が能動的であれば、かつてよりも一つの作品を見直す手段は増えているし、確実なものになっている。

 この「能動的であれば」というところが、くせ者だ。
 再放送枠が、偶然作品と出会ういい場所だったことは間違いない。そこで新しい視聴者と出会ったことで、『ルパン三世』のようにタイトルの寿命が延びた作品もあるし、本放送の放送期間を超えて、幅広い世代に強い印象を残すことになった作品もある。
 能動的にアクセスすることで意味が生まれる「アーカイブ」とは、また違った、“生もの”としての機能を再放送は持っていたのだ。
 では70年代の再放送枠というのは、どういうものだったかを、例のごとくTV欄を参考にしながら見ていきたいと思う。

 平日、アニメがよく再放送される枠は、夕方の16時台から18時台。学校から帰ってきた子供たちが夕食を食べるまでの時間帯だ。この時間帯に子供番組が編成されたのは、視聴者層である子供が在宅しているからだけではなく、親(母親)が夕食準備に忙しい時に、TVに相手をさせるという側面もあったはずだ。
 夕方以外にも、平日の早朝に再放送枠が設けられることもあるし、また、夏休みなどの長期休暇の午前中などに再放送枠が編成されることもある。
 その全部を検討するのは難しいので、今回は、再放送枠の中でも一番影響力の強い平日夕方(16時~19時)を中心に取り上げたいと思う。

 ’70年春のTV欄では、まだ夕方にアニメはそれほど編成されていない。16時台はドラマの再放送、17時台はローカルニュースなどが混在する中に15分のアニメが混ざっている傾向があり、18時台に『男一匹ガキ大将』(’69年放送、日テレ)、『妖怪人間ベム』(’68年放送、フジ)、『怪獣王ターガン』(NET)がそれぞれ放映されている。ちなみにドラマのTBSは『コメットさん』。日テレも30分ものの時代劇『琴姫七変化』(’60年放送)を『男一匹ガキ大将』の前に放送している。

 これが’71年春になると、ぐっと各局の再放送枠のあり方が固まってくる。
 ’71年春の日テレは、17時台に『海底少年マリン』(’69年放送)、特撮コメディ『チビラくん』(’70年放送)、18時台に『赤き血のイレブン』(’70年放送)。
 17時~19時の2時間に、アニメを含む2番組(外画のコメディを放送する場合がある)と15分の子供向けミニ番組を放送するというのが、この後続く日テレ夕方の基本的なパターンとなる。
 フジも’71年春の時点で、夕方の再放送枠のパターンを確立している。17時台は「ママとあそぼう!ピンポンパン」の再放送が長らく不動の位置を占める。そして18時からアニメを中心とする子供番組を1番組。ただし18時55分から、帯でミニ番組を放送することがある。この帯番組は新放送である。
 ’71年春はそれぞれ『スーパージェッター』(’65年放送)と『カバトット』。

 TBSが不動のパターンを掴むのは、この2局よりも少し遅く’72年秋。これには17時からスタートしたバラエティ『ぎんざNOW!』の成功が大きい。
 『ぎんざNOW!』は、観客参加型の生放送バラエティで人気コーナー『素人コメディアン道場』に、後にお笑い業界にデビューする人々が参加していたことなどでも知られている。それ以前の17時台は、実写子供向けドラマ『ケンちゃん』シリーズの再放送などをしていたが、『ぎんざNOW!』が高視聴率をたたき出したことから、’79年9月の放送終了まで、17時台のメインは『ぎんざNOW!』となる。
 これに18時台の実写・特撮番組の再放送を組み合わせたのがTBSの夕方の編成となる。特にこの枠では『ウルトラ』シリーズをかなり長期にわたって放送している。
 ただしこのパターンを維持したのは、わずか3年ほどの間だけ。’75年秋には再放送枠をローカルニュース番組「テレポートTBS6」へとシフトしてしまう。これは他局と比べるとかなり独特な編成で、後にくる平日夕方のニュースショーの隆盛の先触れと考えることもできるかもしれない。

 在京キー局の中で、一番夕方の再放送に力が入っていたのがNET(現・テレビ朝日)といえる。
 同局の特徴の一つは、16時台というかなり早めの時間にアニメなどの子供番組を編成したこと。このパターンが登場するのが、’73年秋。
 この時の番組は次の通り。
 16時15分から特撮『人造人間キカイダー』(’72年放送)、16時45分から『仮面ライダー』、17時15分から『デビルマン』、17時45分から『ひみつのアッコちゃん』。
 この後74年になって、16時台に2番組、17時台に1番組、18時台に1番組とわずかにフォーマットが変化するが、特撮ヒーローものと魔法少女ものを中心にリピートを行う。
 なお、この時間をまたいだ編成もNETの夕方枠の特徴の一つ。これはローカルニュースだけでなく、世界のトピックを子供向けに紹介する「こども世界ニュース」などのミニ番組を放送していたことも理由の一つかもしれない。

 夕方の再放送枠を見るとTBSに「マンガ大作戦」という番組名がある。TBSの「マンガ大作戦」はおそらく、ワーナー・ブラザーズ制作のカートゥーン「ルーニー・テューンズ」を放送していた枠。
 ’70年代も半ばにさしかかってくると、テレビ東京をのぞくと、あまりカートゥーンは編成されなくなってくる。30分ものの外画ドラマも同様の傾向にあり、子供向け番組の主流が完全に国産ソフトへとシフトしたことを実感させる。

次回は、具体的にどのような番組が再放送されていたのかを見てみたい。