藤津亮太のテレビとアニメの時代 第12回 前回の訂正と、ハイターゲットアニメの増加

藤津亮太のテレビとアニメの時代
第12回 前回の訂正と、ハイターゲットアニメの増加

藤津亮太
[筆者の紹介]
1968年生まれ。アニメ評論家。編集者などを経て、2000年よりフリーに。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)。編著に『ガンダムの現場から』(キネマ旬報社)など。アニメ雑誌、そのほか各種媒体で執筆中。
ブログ:藤津亮太の 「只今徐行運転中」 http://blog.livedoor.jp/personap21/

 今回は、まずは前回(第11回)について訂正と補足をするところから始めたい。
 まず一つは『ドラえもん』ブームについて。

「『ドラえもん』自体はアニメブームからは遠い作品だが、アニメブームの熱気とは別のところに「もう一つのブーム」があったことは、’90年代半ばにあった第2次アニメブームにはないことで、第1次アニメブームの豊かさの一つの所作といえる。」

 前回以上のように記したが、ライターの小川びい氏より、’90年代のブーム期にあっても『クレヨンしんちゃん』『ポケットモンスター』などの子供向けアニメの大ヒットがあったのではないか、という指摘を受けた。
 確かに
「’90年代半ばにあった第2次アニメブームにはないことで、第1次アニメブームの豊かさの一つの所作といえる。」
 の部分は勇み足の判定だったので、「第2次ブームにはないこと」という記述を取り消したいと思う。「子供向けアニメ」とアニメブームの関係については、やがて来るであろう’90年代編で、改めてちゃんと検討したいと思う。

 また松本アニメの隆盛の部分については、少し言葉が足りなかったので、あらためて補足しつつ概略を記しておく。
 ’79年からアニメブームの終焉まで、ファンにとってアニメの“最前線”だったのは『機動戦士ガンダム』とそれを引き継いだポスト『ガンダム』的作品であったのは間違いない。
 だが一方で’79年に公開された映画『銀河鉄道999』もまた、明確にハイターゲットを見据えた劇場作品として登場しており、ヒットを記録した。つまり「ハイターゲット作品」の浮上には、『ヤマト』→『ガンダム』だけではなく、『ヤマト』→『999』という回路もまた同時に存在していたのだ。
 TVアニメとして放送された松本アニメは、劇場版『999』ほどハイターゲットではなかったが(むしろ、そこまでソリッドになりきらないところに、松本アニメの魅力の一端があった)、「アニメブームのにぎわい」という点では、『ガンダム』とポスト『ガンダム』と同じかそれ以上に、松本アニメの本数の多さが大きな役割を果たしていた。

 以上、当連載では、アニメブームを判定する一つの基準としてTVアニメの量的増大という視点を採用しているので、その量的な内実が『ヤマト』→『ガンダム』という単線によってのみもたらされたものではない、というところを強調したかったのが第11回の狙いであった。

 長くなってしまったがここから今回の本題に入る。
 今回はまず ’80年代に入って、どのようにハイターゲット作品が増えていったかを確認したい。
 ここで問題になるのは「ハイターゲット作品」の定義だ。これには企画段階から明確に中高生をターゲットにしている作品もあれば、企画そのものはそうではなくても、作品のストーリーやキャラクターの見せ方でそうなっているものもある。
 どちらにしろ一つ大きなポイントは、「10代のファンの視線が作品の中に内在しているかどうか」ということはいえるだろう。
 ここを手がかりに、この時期に人気を集めたラブコメ漫画を原作とした作品を含めて、’79年から’84年までのTVアニメを並べ、「ハイターゲット」といえそうな要素のある作品に印をつけてみた。

’79年
野バラのジュリー/赤毛のアン/ゼンダマン/赤い鳥のこころ/花の子ルンルン/サイボーグ009/ドラえもん/未来ロボダルタニアス/くじらのホセフィーナ/ザ・ウルトラマン/●機動戦士ガンダム/りすのバナー/●マルコ・ポーロの冒険/新巨人の星II/巴里のイザベル/SF西遊記スタージンガーII/金髪のジェニー/円卓の騎士燃えろアーサー/こぐまのミーシャ/科学忍者隊ガッチャマンF/●闘士ゴーディアン/まんが猿飛佐助/●ベルサイユのばら/●宇宙空母ブルーノア
※5本

’80年
トム・ソーヤーの冒険/ベルフィーとリルビット/ニルスの不思議な旅/メーテルリンクの青い鳥/無敵ロボトライダーG7/オタスケマン/ふたごのモンチッチ/魔法少女ララベル/宇宙大帝ゴッドシグマ/●ムーの白鯨/スーキャット/燃えろアーサー白馬の王子/釣りキチ三平/がんばれゴンベ/ずっこけナイトドンデラマンチャ/●伝説巨神イデオン/●宇宙戦士バルディオス/がんばれ元気/怪物くん/とんでも戦士ムテキング/おじゃまんが山田くん/鉄腕アトム/鉄人28号/ほえろブンブン/●宇宙戦艦ヤマトIII/●あしたのジョー2
※5本

’81年
ふしぎの島のフローネ/最強ロボダイオージャ/ヤットデタマン/ゴールドライタン/百獣王ゴライオン/ハローサンディベル/おはよう!スパンク/愛の学校クオレ物語/めちゃっこドタコン/若草の四姉妹/名犬ジョリィ/Dr.スランプアラレちゃん/フーセンのドラ太郎/新竹取物語1000年女王/タイガーマスク二世/●戦国魔神ゴーショーグン/まんが水戸黄門/新ど根性ガエル/忍者ハットリくん/●六神合体ゴッドマーズ/じゃりン子チエ/ダッシュ勝平/●銀河旋風ブライガー/ワンワン三銃士/●うる星やつら/まいっちんぐマチコ先生/ハニーハニーのすてきな冒険/●太陽の牙ダグラム/
※5本

’82年
南の虹のルーシー/あさりちゃん/●戦闘メカザブングル/●逆転イッパツマン/機甲艦隊ダイラガーXV/●魔法のプリンセスミンキーモモ/トンデラハウスの大冒険/ゲームセンターあらし/ドン・ドラキュラ/●パタリロ!/科学救助隊テクノボイジャー/アニメ野生のさけび/●魔境伝説アクロバンチ/おちゃめ神物語コロコロポロン/とんでモン・ペ/太陽の子エステバン/●Theかぼちゃワイン/●銀河烈風バクシンガー/●超時空要塞マクロス/忍者マン一平/ときめきトゥナイト/●スペースコブラ/サイボットロボッチ/レインボーマン/新みつばちマーヤ/わが青春のアルカディア無限軌道SSX/一ツ星家のウルトラ婆さん/●さすがの猿飛/フクちゃん
※10本

’83年
●未来警察ウラシマン/わたしのアンネット/キャプテン/●亜空大作戦スラングル/●聖戦士ダンバイン/●愛してナイト/光速電神アルベガス/●みゆき/●装甲騎兵ボトムズ/●ななこSOS/キン肉マン/まんが日本史/ミームいろいろ夢の旅/スプーンおばさん/パソコントラベル探偵団/パーマン/●銀河疾風サスライガー/イーグルサム/レディジョージーィ/イタダキマン/●ストップ!!ひばりくん!/ベムベムハンターこてんぐテン丸/●プラレス三四郎/ピュア島の仲間たち/●魔法の天使クリィミーマミ/●超時空世紀オーガス/サイコアーマーゴーバリアン/●キャッツアイ/●機甲創世記モスピーダ/タオタオ絵本館/●特捜機兵ドルバック/まんがイソップ物語/ふしぎの国のアリス/キャプテン翼/●伊賀野カバ丸/●銀河漂流バイファム/子鹿物語
※17本

’84年
●OKAWARIBOYスターザンS/牧場の少女カトリ/●超攻速ガルビオン/●重戦機エルガイム/リトル・エル・シドの冒険/宗谷物語/●夢戦士ウイングマン/●ルパン三世PARTIII/とんがり帽子のメモル/ビデオ戦士レザリオン/Gu-Guガンモ/オヨネコぶーにゃん/●巨神ゴーグ/まんがどうして物語/チックンタックン/らんぽう/アタッカーYOU!/●ゴッドマジンガー/●超時空騎団サザンクロス/●魔法の妖精ペルシャ/ふしぎなコアラブリンキー/銀河パトロールPJ/●よろしくメカドック/●ふたり鷹/コアラボーイコッキィ/●機甲界ガリアン/森のトントたち/●超力ロボガラット/●あした天気になあれ/●レンズマン/星銃士ビスマルク/●キャッツ・アイ/タオタオ絵本館/●北斗の拳/名探偵ホームズ
※17本

 個々の作品の判定については、異論があるかもしれないが、大きなトレンドとして’82年を境に、「ハイターゲット作品」が急激に増加していることがわかる。
 まずこの急激な変化のベースとして考えられるのが、『ガンダム』ブームの過熱である。『ガンダム』の放送開始は’79年だが、そのブームが社会現象にまで広がるのは劇場公開が始まる’81年になってからのこと。’80年より発売された『ガンダム』のプラモデルもこの年にブームの頂点を迎える。
 『ガンダム』に熱狂するファン層が相当数のボリュームがあることが明確になったことが、翌年以降の企画に本格的に反映されていったと見ることができる。たとえばこれ以降のハイターゲット作品の商品展開に、(今思えばプラモデルに向いているとは思いづらい作品も)プラモデルが必ず盛り込まれていることからもうかがえる。
 また『ガンダム』以降に、アニメブームを牽引する作品が続けて登場したことも大きい。
 ’81年に『うる星やつら』が始まり、翌年’82年には『マクロス』がヒット。どちらもファンと感性の近い若いスタッフの存在がヒットに結びついた作品だ。
 この2作の存在がさらに’82~’84年のハイターゲット作品の増加に拍車をかけた。
 一方、アニメ外部に目を向けると、漫画雑誌におけるラブコメブームの存在が無視できない。視聴ターゲットを上げてきたアニメの視聴者と、ちょうどラブコメ漫画の読者が重なり合うようになり、アニメが映像化の受け皿として機能するようになった。それもまたハイターゲット作品の増加の一因といえる。
 こうしてハイターゲット作品の隆盛を見ると「アニメブームのピーク」と呼びうるのは’83年か’84年のどちらかが妥当であろうということがいえる。
 では、これら「ハイターゲット作品」がTV局の編成の中でどう扱われていたかについて次回見てみたい。