豊永真美[昭和女子大現代ビジネス研究所研究員][サバンと政治-お互いにどのようなメリットがあるのか]■ サバンはヒラリーの最大支援者の一人サバンは1989年に自分が所有する音楽著作権を管理する会社の株式の25%を1500万ドルでルクセンブルグに本社を置く放送会社RTLに売却した。そして1994年にはクリントン政権下の民主党に400万ドルを寄付し、以後、定期的に民主党を支援し続ける。2016年の大統領選挙では民主党のヒラリー・クリントン候補に3月末時点で350万ドルの寄付をしている(ニューズウィーク2016年4月27日)。サバンは自らを「ワンイシューガイ」、すなわち一つの問題にしか関心がないとしており、その関心事項とは彼の祖国のイスラエル支援だ。サバンは一貫してイスラエル支持をうたっており、ヒラリーに対しても、当然、親イスラエルであることを望んでいる。このイスラエル支援の流れで、サバンは英国のブレア元首相が首相退任後創設した財団に415,000ポンド寄付している(デイリーメール 2014年12月7日)。これはブレアが2015年まで中東和平をめぐる米国、ロシア、国連(UN)、欧州連合(EU)の4者協議(中東カルテット)の特使を務めたことにも関係があるだろう。有名人の写真画像代理店のゲッティイメージズでハイム・サバンの画像を検索すると、クリントン夫妻との写真のほか、オバマ大統領、ドイツのメルケル首相、ライス国務長官、ブレア英首相、シャロンイスラエル首相と一緒の写真が出てくる。サバンの写真の総数は決して多いとはいえないのだが、その中で、政治家と一緒に写っているものが目立つ。これは、サバンが民主党系のシンクタンクであるブルッキングズ研究所内に、自分の名を冠したサバン中東政策研究センターを寄贈しており、年1回開催されるサバン・フォーラムに著名人が参加した折の写真が検索されてくるためでもある。ちなみにゲッティ イメージズで一緒に写っている日本人は写真は松久信幸(レストランNOBUのオーナー)だけのようだ。サバンが政治家を支援するのは、イスラエル支援のためである。サバンは前述のとおり、イスラエルにも積極的な投資をしており、2016年に入って、ディズニーと共同で、オルメルト元イスラエル首相の子息が経営するクイズ作成プラットフォームのプレイバズに1500万ドル投資している。■ 政治力なしにコンテンツは普及できない?サバンが政治活動に熱心なのはもちろんイスラエル問題があるためだが、政治家と深く付き合うようになったのは子供番組の放送を可能とするためである。 多くの国で、子供番組に対する表現規制は厳しい。暴力シーンはもちろん、飲酒・喫煙や性的な表現も規制されていることが多い。海外展開にあたり、日本のコンテンツ業界はこの規制に長く苦しんできた。サバンは2000年に放送されたフランスのテレビ番組のインタビューで、「日本のコンテンツの不安を取り除くことが自分の仕事」と回答している。フランスでは日本のアニメがいち早く人気になると同時に、その表現がバッシングされてきた歴史もある。その中でロビイングの重要性も感じたと思われる。2000年のインタビューの中でサバンは自分を「(パリの)16区や7区に住む人間に紹介してくれた」ジャクリーヌ・トルジュマンに感謝をしている。16区や7区というのはパリの高級住宅地であり、そこに住むような人間とコネクションがなければ、ビジネスを拡張することは難しいということを身をもって体験したのであろう。■ 政治家がサバンと付き合うメリットは?現在サバンが政治家と付き合う第一の目的は「ワンイシューガイ」という彼の言葉を信じればイスラエル支援である。その一方で政治家がサバンと付き合うメリットは何であろうか。まず、第一には資金提供であり、その次にメディアを通じての影響力の拡大がある。既によく米国で言われているのは、サバンがオーナーを務めるウニビシオンがクリントン寄りの放送をしているということである。それ以外にもロビイング活動として使える場面がある。例えば、ドイツのメルケル首相がカリフォルニア州を訪問した際のランチョンでサバンはメルケルとシュワルツネッガー知事(当時)と同席している。当時のドイツの関心事の一つはカリフォルニアに高速鉄道を売り込むことであり、ドイツがカリフォルニア州との接点を増やすことは非常に重要であった。このような非公式の場所を作るサバンは政治家にとっても有用である。サバンは世界中にネットワークを持っている。子供向けコンテンツを流すためには、多くの国でレーティングを受けなくてはいけず、レーティングを受けるという課程で各国政府とのやりとりが生まれるからである。■ 日本は表現の自由が担保されている一方、サバンは日本に自分のコンテンツを持ち込むことはない。もっとも日本は子供向けコンテンツの規制が非常に緩い国であり、子供向けコンテンツを扱うといっても、他の国のように政府の規制を受けるものではないので、政府との関わりは職業上不可欠なものとはならない。このこともあってか、サバンは他の国と異なり、日本の政治家と深い絆を持っているようにはみえない。サバンと日本との付き合いは他の国と比べて、コンテンツ関係者に特化しているという点で特殊かもしれない。
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