ガンダムUCの挑戦 変わるアニメのウィンドウ戦略

【ウインドウを切り離し、並べ直す】

 ところが2008年、テレビ放映の持つ力に対して、意外なオールドメディアが挑戦することになった。劇場公開である。そのきっかけのひとつが『空の境界』である。2007年12月に始まった『空の境界』7部作の大きなムーブメントは、いまさら説明する必要もないだろう。
 『空の境界』の驚きは、小規模なロードショーを行うだけでOVAタイプの作品が各巻10万本売れるという事実である。つまり、テレビ放映がなくても、十分な宣伝効果は可能でテレビシリーズを大きく上回る映像パッケージの売上が実現出来るという発見である。

 実はこうした現象は、『空の境界』だけに限ったものではない。『空の境界』は劇場興行と映像パッケージのギャップが大きかったことから注目をされたが、同じ様な現象は劇場版『機動戦士Zガンダム‐星を継ぐ者‐』(2005)、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(2007)、『時をかける少女』(2006)で既に用意されていた。
 事前の予想を上回る映画興行、そのなかで醸し出されるお祭り感、一体感、そしてヒット作=面白い作品という期待である。こうした作品はお祭りの着地点として、映像パッケージが設けられた。通常DVDやBDを買うのは作品映像を買う側面と、パッケージに付属する特典を購入する側面がある。しかし、ここではお祭りに参加した証として、最終的な確認のための映像パッケージの存在が垣間見える。

 近年アニメ関連の消費が、これまでの映像を観る行為、その映像をコレクションする行為から、アニメを中心に体験する行為に移っている。それは声優イベントやアニソンイベントの盛況、大量動員を続けるゲームショウ、アニメフェアなどの実績からも理解出来る。劇場鑑賞は、そうした体験型のファン消費のひとつとして復活しつつある。
 また、映画興行によるお祭り感は、インターネット配信と異なり、雑誌や他のメディア(ネット媒体でさえも)に対して大きなプロモーション効果を発揮するなど、作品展開の最初のウィンドウとしての優位性がある。

 本来映像作品の最も効率的、かつ合理的な利益回収方法、そのウィンドウ戦略は、クローズドの有料公開から次第に価格を下げながら、より幅広い層に展開していくものである。劇場公開と有料のインターネット配信は、ファーストウィンドウとして、本来可能性が高いものだった。
 1997年の『新世紀エヴァンゲリオン』の深夜再放送がきっかけとされるテレビ放映とパッケージ販売は組み合わせるビジネスモデルは、これまで大きな威力を発揮した。しかし、その耐用年数はそろそろ終わりに近づいているかもしれない。
 『機動戦士ガンダムUC』は、この綻びたアニメビジネスを、これまでとは異なったかたちで再構築しようとしているように見える。それは、テレビ放送、劇場公開、映像パッケージ発売、インターネット配信を一端バラバラにして、最も儲かると考えられる順番に並べ直す作業である。
 今回の「劇場公開、映像パッケージ発売、ネット配信をほぼ同時、テレビ放送は含まれない」、この順番が正しいかは判らない。しかし、これまでのウィンドウを並べ直す試みは、今後も大きな潮流になるに違いない。

『機動戦士ガンダムUC』 公式サイト http://www.gundam-unicorn.net/