「週刊少年ジャンプ」のデジタル同時配信 「少年ジャンプ+」アプリが切り拓く新時代

集英社は9月22日にスマートフォンやタブレット、それにウェブッサイトで展開するマンガ雑誌アプリ「少年ジャンプ+」を創刊した。「少年ジャンプ+」ではオリジナルのマンガを多数連載する新しいマンガ雑誌のかたちをとる一方で、「週刊少年ジャンプ」の人気作品を有料で配信する。新時代のデバイスを使い、無料サービスの新規コンテンツの創出と有料サービスでの既存の人気コンテンツの拡大を狙う。時代のトレンドであるアプリを使った両面でのマーケティング戦略がとられているのが特徴だ。
とりわけ国内最大のマンガ週刊誌である「週刊少年ジャンプ」の紙媒体での発売と同日に全作品をデジタルで提供するとの決断は、マンガ関係者に大きな驚きを与えたに違いない。マンガアプリのためのインフラ開発投資は馬鹿にならないが、今後は他社でもマンガ誌とのデジタル同時展開の動きは加速しそうだ。

無料サービスのオリジナル作品は、スタートからかなり大掛かりだ。開始段階で予定されている作品で25タイトルもある。これは無料で全て読める。当然、利益回収モデルが気になるところだが、紙媒体とデジタル媒体の両面での単行本の発売や、さらにそこから広がる映像化や商品化といった二次展開を目指すとみられる。すでにジャンプ関連作品では、スマホ向けアプリ増刊「ジャンプLIVE」にデジタル連載された『エルドライブ【elDLIVE】』と『LADY COOL』が2013年12月に単行本になった実績がある。こうしたこれまでの実績も踏まえての取り組みだろう。
「少年ジャンプ+」では新作タイトルのほか「週刊少年ジャンプ」ですでに人気の作品の番外編なども予定している。こちらはユーザーの獲得に力を発揮するに違いない。スタート時には『ジョジョの奇妙な冒険』で御馴染みの人気作家・荒木飛呂彦がを描き下した新作スピンオフ作品『望月家のお月見 岸辺露伴は動かないエピソード4』が掲載されてる。話題作が無料で読めるとあり、集英社の力の入れようが窺える。
さらに「週刊少年ジャンプ」の歴代名作を復刻し掲載する。こちらも無料で読むことが出来る。こちらは作品の認知度拡大を狙ったものと考えられる。「少年ジャンプ+」はひとつのアプリではあるが、同時に様々な機能を持っていることがわかる。

なかでも注目がされるのは、やはり有料サービスだろう。「週刊少年ジャンプ」の全連載作品が紙雑誌の発売日と同時に読める。サービス価格は月額900円で、紙雑誌より若干低い。ファン待望のサービスである。人気のマンガ雑誌だけに、利用者も多くなりそうだ。発行部数260万部以上の読者に加えて、アニメ化などで知名度の高い作品も多いだけにデジタルサービスは新規の読者獲得に大きな力を発揮するだろう。
当然気になるのは、既存の紙雑誌との読者の喰い合いだ。しかし、少年ジャンプでは、2013年夏のアプリ増刊「ジャンプLIVE」リリースの以来、たびたび「週刊少年ジャンプ」のデジタル配信を試みている。この結果を踏まえたものとすれば、マンガアプリでの提供は読者の喰い合いではなく、拡大につながるとの結果があったと考えていいだろう。「少年ジャンプ+」の登場はマンガ新時代を感じさせる。
[数土直志]