米国アニメエキスポ2014 来場者の増加とコア化が同時進行 アニメの受容も日本と連動

SONY DSC■ アニメ、マンガにフォーカスされたAnime Expo

7月3日から6日まで、米国ロサンゼルスのコンベンションセンターでAnimeExpo2014(アニメエキスポ)が開催された。日本のアニメやマンガにフォーカスするイベントは、非営利団体のSPJAが運営するもので1992年にスタートした。年々規模を拡大し、2013年の来場者数は延べ16万人以上、2014年はこれをさらに上回ると見られる。同種のイベントでは北米最大だ。
アニメエキスポは同時期にフランス・パリで開催される日本カルチャーイベントJapan Expo(ジャパンエキスポ)と比較されることが多い。しかし、米国とヨーロッパという地域の違い以外でも、両者は大きな違いがある。

ひとつはイベントで取り上げるカルチャーの方向性だ。スタートはアニメ、マンガ、ゲームのイベントであったジャパンエキスポは近年総合カルチャーイベント化している。音楽やファッション、食はもちろん、ゆるキャラやスポーツ、日本観光や伝統文化まで飲み込んでいる。
一方、アニメエキスポは、アニメやマンガなどのポップカルチャーに依然特化している。ファッションやビジュアルバンドも取り上げるが、アニメやマンガの勢いには及ばない。また、日本以外のアジアカルチャーを取り込む試みもあったとされるが、それもメインストリームには乗っていない。来場者数はジャパンエキスポの23万人には及ばないが、アニメ、マンガの部分に限ればアニメエキスポのほうがより密度の高いイベントと言えるだろか。

■ 人気作品は『ソードアート・オンライン』と『キルラキル』

それだけにアニメエキスポに参加してみると、ニュースやネットだけでは伝わりにくいライブな情報を得ることが出来る。いま米国のアニメファンの間で何が起きているかだ。
情報はふたつの面から考えると分かりやすい。ひとつはシーンである。短期的に人気もの、ホットな作品やアーティストなどだ。もうひとつはトレンドだ。トレンドはアニメ業界のカルチャーやビジネスの流れを変えていく潮流である。より中長期的な視点から眺めたものだ。

アニメシーンでは、まず人気作品が挙がる。2013年は『進撃の巨人』が席巻したが、2014年は人気作品はやや分散した。テレビアニメは終了したにもかかわらず『進撃の巨人』は依然高い人気を誇っている。
一方で『ソードアート・オンライン』と『キルラキル』の高い人気が感じられた。『ソードアート・オンライン』は2012年頃よりすでに人気があったが、さらに確実にファンを広げている印象だ。日本からのゲストを招いた『ソードアート・オンライン』のイベントは2500人収容の会場に何時間も前から長蛇の列が出来ていた。その人気は日本以上とも感じさせる。
『キルラキル』ファンは、尖った人たちにみえた。かなり大胆なキャラクターの姿をコスプレで挑戦する人も多数見られた。

コスプレで意外だったのは、『美少女戦士セーラームーン』だ。リバイバルブームではあるが、新作『セーラームーンCrystal』が7月スタートにもかかわらず、若い世代がすでに多数コスプレをしていた。
さらに『Free!』や『弱虫ペダル』、『ハイキュー』なども人気だった。少女マンガ以外の女性向けコンテンツに以前より存在感があり、さらに女装コスプレが増えている。こちらはシーンといよりも、トレンドにつながっている。

■ コアファンが支えるようになったアニメエキスポ

トレンド面では、まず来場者数の動向を見る必要がある。アニメエキスポは90年代から2000年代半ばまで急成長、その後2000年代後半には一時停滞した。その後2010年代に、再び成長軌道に乗っている。
この成長の原動力になっているのが、来場者のコア化、マニア化である。インターネットでのアニメ同時配信が進んだことで、日本と米国で作品を受け取る時差は完全になくなっている。このことが米国のアニメファンのアニメの楽しみかたにも影響を与えている。
つまり、作品の受容、消費が日本のアニメファンと似てきている。先ほどのコアな女性に受けるアニメの存在感の拡大や女装コスプレの存在もその現象だ。作品だけでなく、作品の楽しみかたも日米で同期しているのだ。米国では全く売れなくなったとされるBlu-rayも、アニプレックスUSAの発売するコレクター向けの高額商品は短期間で完売になっている。

2000年前半のアニメエキスポを思い起こすと、会場には子どもの手を引いた家族や、20代後半から40代のSFファンのような来場者も多かった。しかし、現在はハイティーンや20代前半のファンが大半で、子どもと年配の来場者はあまりみかけない。人が多過ぎることもあり、むしろ子どもの来場は危険に感じる。
アニメエキスポの来場者増はコアなファンの増加で、むしろ来場者の多様性は薄まっている。日本のコミケにやや似ているとも思える。現地のアニメ会社の大手Viz Mediaが米国版『ドラえもん』のイベントを同時期に市内の別会場で開催したのは象徴的だ。

こうした現象を一概にいい、悪いと言うことは出来ない。しかし、アニメ関連のビジネス関係者にとっては悪くない状況だ。以前より金払いのいい消費者が、多く存在するからだ。DVDやBlu-rayは特殊な商品以外はほとんど売れないが、会場を見る限り関連グッズはよく売れている。
アニメエキスポの入場料自体も40ドルから70ドルと高額だ。追加料金が35ドルから45ドル必要な『キルラキル』のイベントチケットは完売した。米国のアニメファンはお金を持たないという長年の主張にも懐疑的になる。
日本アニメのファンが米国全体で見れば、かなりのマイノリティであることは多くの人が指摘する通りだ。しかし、アニメエキスポ2014を見るとそのマイノリテイも束になると相当の数になることが判る。しかも、その数はここ数年着実に増加している気配が濃厚だ。そこには大きなチャンスもありそうだ。
[数土直志]