2013 米国・ボルチモアリポート(1)今年はまるで“るろ剣祭り”

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by ロミ

「カ、カニが売り切れだとー!?」

アメリカ東海岸のアニメと漫画のコンベンション、OTAKONは筆者も今年が初めての参加。
今回はゲストアテンドでパネルなどのお手伝いをしたが、ようやく三日目、最終日の日曜日の夜に開催地のボルチモア名物、オールドベイ・スパイスと一緒に茹でたカニにありつけると思った矢先に、告げられたショッキングな事実。

その後もカニを求めて、市内をグルグルと車で徘徊したが、2件目、3件目、次々に「品切れ」となっていく…ようやく4件目にして「残りあとわずか」という情報を入手し、予約を受け付けないというので店に急行した結果、なんとかその日最後のカニ12杯にありつけた。(でも付け合わせのコーンは売り切れ…とほほ。)

筆者は信じて疑わない――これがオタコン集客力のなせる技なのだと。大会が無事終了し、全米から集まった多くのファンが各々の出身地への帰路につく前に、ボルチモアの街へくり出して地元名物のカニ料理を片っ端から食べ尽くしていたのだ!!いや、きっとそうに違いない。(笑)

なにせ、今年はオタコン開催20周年となる記念碑的大会だったのである。当然のことながら、オフィシャルゲストも超豪華:

日本からはライトノベル『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の原作者の伏見つかささん、アスキー・メディアワークス編集者の三木一馬さん、アニメ版監督の神戸洋行さん、アニメーターの足立慎吾さん、および川上哲也さん、アニメ演出家の立川譲さん、そして『カウボーイビバップ』の監督の渡辺信一郎さんらを迎えた。

プロデューサーゲストとしてMAPPA代表の丸山正雄さん、サンライズの尾崎雅之さん、読売テレビの諏訪道彦さんが参加。そして声優の関智一さん、日本のポップカルチャー研究家の櫻井孝昌さん、さらに漫画家・和月伸宏さんを代行して和月夫人で小説家の黒碕薫さんが招かれた。

音楽ゲストにはHOME MADE 家族、T.M.Revolution、石川智晶さん、菅野よう子さん。土曜日と日曜日に開催されたコンサートには、大勢の観客が詰めかけ大いに盛り上がった。(詳細は後述)

アメリカ人ゲストには、『最後のユニコーン』で知られる小説家のピーター・S・ビーグルさん、声優のMaile Flanaganさん(『NARUTO』のナルト役で有名)、Crispin Freemanさん(『攻殻機動隊SAC』のトグサや『涼宮ハルヒの憂鬱』のキョン役で有名)、Vic Mignognaさん(『鋼の錬金術師』のエド役で有名)などなど。

これでもゲスト全員ではないところに、大会の意気込みのようなものが伝わってくる。(オフィシャルゲストの他にも、インダストリーゲストといって日米双方の業界からオタコンでのミーティングのため出張という形で参加される方も大勢いる。)

かねてより全米一の規模は西海岸のアニメエキスポ(来場者実数6万1000人)であるが、東海岸のオタコンもここのところにきて追い上げてきている。近年、世界中のどのコンベンションでも来場者数が右肩上がりではあるが…

開催前からその盛況ぶりの予兆はあった。大会の数日前、イベントスケジュールがオタコンHPにアップされるやいなやページへのアクセスが殺到し、サーバーダウンを起こすほどだったのだ。8月12日時点の集計では、来場者数が34,100人(実数)となり、大会の過去最高を記録した。

あまりにも大きすぎるため、大会イベントをすべて見るのは到底不可能。ファン主催パネルだけで100種類以上にのぼる。パネル開催数では、ひょっとしたら全米一ではないだろうか?

―そんな訳でここからは、筆者が大会で実際に見聞きしたことをお伝えする。

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■今年はまるでるろ剣祭り

今回、筆者は黒碕さんのコーディネーター兼通訳アテンドとしてオタコンに初参加したのだが、根強い『るろうに剣心』人気に圧倒された。
まず、初日のパネルは金曜日の午前11時~で、大会開会式前だったのにもかかわらず、パネルルームは観客でいっぱい。和月先生ご自身がスケジュールの都合上、今回参加を見送られたため、こちらで準備したパワーポイントのプレゼンも皆興味津々に聞き入っていた。質疑応答では、かなりつっこんだ、いい質問も飛び出した。例えば「剣心は長州派なのですか?それとも一匹狼なのですか?」「黒碕さんは倒幕派よりも新撰組の方が今はお好きですか?」などなど。
アメリカ人の女性ファン二人から歴史的な質問もあり、アメリカにも歴女がいる!と確信した。90年代の作品にもかかわらず、大会期間中はるろ剣のコスプレをした人たちをあちこちで見かけた。

実は前日ホテルに到着し次第、『るろうに剣心』の原画展設営のため、パネル開始時間ギリギリまで原画展会場でてんてこ舞いに準備に追われていたのだが、原画展も大盛況に終わった。大会開催の3日間、常に会場前には入場待ちをする人たちの列が。金曜日と土曜日は会場が夜11時に閉場だったが、列が途切れることはなかったそう。列に並んで待つのを嫌うアメリカ人は多いので、嫌気がさしてしまうのでは、と危惧したが、訊ねてみると「待ち時間は20分くらい。全く苦にならなかった。」と言ってもらえてホッとした。
さらに、並んでいる人自らが列を見て驚いている人に対して「It’s totally worth it.(並ぶだけの価値はある)」と語りかけているのが聞こえてきて、本当に来て良かったと思えた。どうやらリピーターのようだった。

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いや、列に並んでも見る価値は本当にあったのである。デビュー当時から最新作の『るろうに剣心 特筆版』にいたるまで、合計130点もの漫画生原稿とカラーイラストをキャプション付で展示した。
オタコンにとっても初めての原画展だったのだが、実は和月伸宏先生にとっても人生初の原画展(個展)。原画選びからキャプション作り、レイアウト決め、額装など、すべて手探りの状態で進めたが、一番苦労したのが、紙サイズ(規格寸法)の違い。当然のことだが、日本の漫画原稿用紙のスタンダードであるB4サイズ(257×364mm)がアメリカにはないのだ。結局、アメリカの12×16インチの展示用フレームを使用した。見開きはどうしてもB3サイズのフレームが必要なため、黒碕さんが日本から持参したものを使用。近くのComic Book Museumからお借りした、絵画を入れるような立派な額縁も使わせていただき、なんとかすべてを展示することができた。

パネルと原画展を通じて、来場者した方達にお話をうかがうと、るろ剣がきっかけでアニメや漫画を見る・読むようになった、日本文化を大学で専攻した…など、「るろ剣で私の人生が変わった!」と語る人が多くいた。架空の幕末の剣士によるクールジャパン貢献度はものすごく高いのだ。

そして今回は和月伸宏先生の描き下しカラーイラストが日曜日のチャリティオークションに出品され、今年最高額の6000ドルで落札された。オークションの収益はすべて日本赤十字社に寄付され、東日本大震災の被災地への義援金となる。
実は2011年大会から復興支援活動として日本人アーティストによるチャリティオークションへの出品が始まっているのだが、まさにそのきっかけを作ったのも、和月先生がオタコン寄付したるろ剣イラストなのだ。(2011年は欧米数カ国のイベントで、復興支援のためチャリティオークションが行われているが、和月先生はベルギー、フランス、ドイツ、スイス、アメリカでるろ剣イラストを出品され、合計約130万円以上の義援金を被災地に送ることができた。)

土曜日には、実写版『るろうに剣心』のプレミア上映会が行われた。一番広いスクリーンホールに約2000人が詰めかけたが、それでも入りきらず、翌日2回目の上映会を行うほどだった。
アメリカでの同作品のイベント上映は東海岸としては初めてで、スクリーン脇から反応をうかがっていると、アメリカ人の観客は本当にノリが良い、と感じた。好みの登場人物が登場した時や、技が決まった時に拍手喝采。まるで歌舞伎を見ている観客のように、どこで合いの手を入れるか心得ている。観客が楽しんでいる様子が大いに伝わってきた。

同じく土曜日には、T.M.Revolution 西川貴教さんが地元のアリーナで持ち前の歌唱力を披露、アニメ版『るろうに剣心』エンディング『Heart of Sword』をクライマックスに歌い上げ、まさに“るろ剣祭りin USA”という風であった。

第2回「ファンが待ちわびたコンサート」に続く 近日アップ予定