「攻殻機動隊 ARISE」 米国でBD発売発表 日本版を英訳で限定2500セット

6月14日、米国の日本アニメ会社ファニメーション(FUNimation)は、攻殻機動隊シリーズの最新作『攻殻機動隊 ARISE』の北米ライセンスを獲得したことを明らかにした。Blu-ray Disc、DVDの発売のほか劇場上映も予定している。
日本では『攻殻機動隊 ARISE』は、劇場上映とBlu-ray Discの発売、ネット配信を同時にスタートする『機動戦士ガンダムUC』や『宇宙戦艦ヤマト2199』と同様の新しいメディア展開が行われる。大型作品ということもあり、作品展開にあたっては北米でも新しい試みが取られるようだ。

目を惹くのは、日本のBlu-ray Discの輸入販売だろう。ファニメーションは、まず、日本のBlu-ray Discに翻訳をつけ、英語版ブックレット、特典フィルムをつけ、2500セット限定で発売する。その後、通常のファニメーションの商品と同様のフォーマットでも発売をする。ただし、いずれの商品も、現在は発売時期や設定価格は明らかにされていない。
ファニメーションは、米国最大のアニメーション会社として長年、日本アニメDVDやBDを発売してきた。リリースする全ての作品に英語吹替えをつける一方で、DVD、BDの価格は日本に比べるとかなり低く設定されている。手に届きやすい価格とすることで、購買者の需要を喚起する狙いがある。

2000年代後半から日本アニメDVDの売れ行きが急激に減少する中で、こうした各社の低価格戦略は加速している。一方で、一部の企業では低価格路線とは全く逆のマーケティングをとるケースも現れている。
例えば、アニプレックス・オブ・アメリカは一部の作品で、日本のBlu-ray Discをそのまま英語版として、日本と同様の高価格で発売する。価格は高いが、映像からパッケージまでハイクオリティを実現し、さらに豪華な特典を盛り込んだ。高品質高価格路線である。
今回の発表で、ファニメーションが同社の低価格商品に加えて、高品質高価格のマーケティングを一部取り込む可能性が強くなった。そうなれば、日本アニメの映像ソフトの2極化が今後さらに進む。

こうした動きのもうひとつの背景には、Blu-ray Discの再生可能地域を制御するリージョンコードの問題がある。DVDでは日米で異なっていたリージョンコードが、BDでは日米同一になっている。
この結果、日本のファンが国内より価格の安い米国版のBDを輸入するケースが現れている。その数は多いわけでないが、日本のアニメ関係者にとっては頭が痛い。日本の権利者が海外へのBlu‐rayでの発売のライセンス販売に消極的になっているとの見方もある。

攻殻機動隊シリーズは、従来は、米国の別の日本アニメ会社マンガ・エンタテインメントとバンダイナムコグループの米国会社バンダイエンタテインメントが北米流通を行ってきた。しかし、両社はすでにアニメソフトの発売事業を停止している。新たな発売元として、ファニメーションが決まったかたちだ。
『攻殻機動隊 ARISE』廉価版BDが発売されるのか、されるとすればどういうかたちなのかは現時点では分からない。しかし、大型タイトルのライセンス獲得で、ファニメーションが日本の権利者の要望を受け入れた可能性もある。それでも、日本版の輸入、あるいは高品質路線が北米マーケットで有効なマーケティングなのかを確認するのにはよい機会になる。

一方、ファニメーションならではのマーケティングは、劇場限定公開だろう。同社は、近年、大型タイトルの発売にあたり、イベント的な劇場上映をすることが増えている。
興行ビジネスとしての側面だけでなく、イベントを行うことによるプロモーション効果、イベントに参加したファンのコミュニティの活性化、それが商品の売上げにつながるとの狙いもあるだろう。日本同様に、北米のアニメビジネスも大きく変化している。『攻殻機動隊 ARISE』の北米展開には、そんな事情も垣間見える。
[数土直志]