外国人向けのオークション代行ビジネスとは

インターネットオークションでアニメ関係のグッズを探していると、しばしば同じIDの入札者、落札者を目にすることがある。しかも入札評価履歴は5桁、落札商品はドラゴンボールのセル画からCLAMPのコスプレ衣装、JPOPのCD、最新の同人誌(美少女ものもやおいもある)まで。サブカルチャー関連と分類出来ないこともないが、およそ脈絡がなくありとあらゆるオタクグッズだ。

この人は一体どういう人なのだろうか。何でも欲しがるディープなアニメファン?あるいは商品を仕入れるマニアショップだろうか?両方ともはずれである。答えは海外のアニメファンのための日本のインターネット入札代行業者と考えて間違いないだろう。
彼らは手数料を取って、日本語の判らない外国人オタクのために日本のインターネットオークションで代理入札をしているのだ。それだけでない、一部の業者は独自のウェッブサイトを設けてお薦め商品まで紹介している。こうやって、自国のオタクグッズで飽きたらない外人ファンのニーズを満たしている。

現在、こうした業者が国内外に幾つ存在するかは判らない。しかし、ネット上では既に幾つか大手業者すら現れている。日本のインターネットオークションの発生とほぼ同時に自然発生的に生まれたこれら企業は瞬く間に成長し、今では多くの顧客を抱えている。扱っている商品も当初はなぜかセル画が多かったが、アニメ・マンガ関連ならほぼ何でも扱っている。例えば、そうした大手業者のひとつRinkyaのウェッブサイトを見てみるとスポーツグッズコーナーやファッションコーナーまである。
さらにそうした業者によれば、会社の顧客は当初は米国や西ヨーロッパの一部の国のファンだけであったが、現在の顧客はアジア各国やロシア、東ヨーロッパ、中近東の国々までに広がっているという。

こうした業者が発生したのは、日本のネットオークションの出品者の多くが海外からの入札は認めない、日本語の出来ない入札者はお断りとしていることにある。勿論、言語の壁が大きな理由にあることは確かだ。
しかし、言語以上に問題なのは海外とのオークションの取引が、しばしば大きなトラブルになるからだ。海外在住者の入札者との取引で極端な入金の遅れや突然のキャンセルに泣かされたアニメ関係の出品者は少なくない。とりわけコレクショングッズの世界では、落札後にキャンセルのあった商品はそれだけで市場価格が下がることもあり、深刻な問題なのだ。
国境を越えると法律が違う、直接会うことは絶対にないだろうという安心感が、そうしたトラブルを誘発しているのだ。そんなわけで、英語の出来る出品者の間でも海外から入札者を拒否をする人は少なくない。
しかし、トラブルを起こさない善良な海外ファンたちにとってはこれは大問題だ。日本から直接グッズを買いたいが、入札出来る商品がほとんどないからだ。そうした中で、生まれたのが外国人向けに日本のネットオークションの入札を代行する会社なのだ。

これは海外ファンにとって有難いだけでなく、日本の出品者にとっても有難いシステムでもある。マニアグッズの中には、明らかに国外に売ったほうが高く売れるものも多いからだ。つまり、英文でのやりとりや代金の決済を業者が代行してくれるだけでなく、トラブル発生のリスクを業者が引き受けてくれるからだ。
ニッチ(隙間)ビジネスといえば、これほどニッチなものもないだろう。しかし、日本のポップカルチャーの海外進出が思わぬビジネスを育てる典型的な例と言えるだろう。
[数土直志]