アニメ会社はなぜ上場するのか

2000年代に入ってアニメ関連会社の株式公開が続いている。2000年の東映アニメーションを筆頭に、アニメに出資している会社も入れると軽く二桁になるだろう。公開を目指している会社も多く、今後もまだ増えそうな気配である。
しかし、アニメ関連会社の株式公開は本当に必要なのだろうか。そう問いかけられた時に、既に上場している関連会社の経営者や公開を目指している会社の経営者はどう答えるだろうか。また、必要だとしたらそれは何のためなのだろうか。

最近、アニメ関連会社の株式公開が本当に必要とは思えないという話を聞いた。その人の話によれば、株式会社の株式公開は事業拡大のための資金調達が目的で、さらにそうした中で企業の成長を目指していくためのものだという。
しかし、現在上場している又は上場を目指している会社の多くは限られたアニメやマンガ・ゲームのマニア市場でビジネスをしている。マニア相手の企業の多くは収益構造が優れており、新たな資金調達の必要性を感じない。そもそもマニアの市場は限られており、企業が今後大きく成長して行くという将来像が見えないというのだ。

会社を上場させる主要な目的は、確かに成長のための資金調達である。それ以外に株主として会社に投資してきた人達による投資資金の回収手段、さらには企業の社会的な信頼の獲得と創業者の自己実現の達成といったものがある。
投資資金の回収については、株主にベンチャーキャピタルからの投資が入れば、企業の成長と関係なくほとんど株式公開かM&Aは義務づけられたのは同然であるし、人の心の面から言えば創業者が上場会社を作ったという社会的名声を得ることの重要さは理解できる。

しかし、実際にはアニメ関連会社の株式公開もまた、企業の成長を目指す中で行なわれている。むしろ限られた市場でのビジネスというその特性こそが、成長指向の誘引となっている。
つまり、マニアな市場にビジネスの基盤を持つほど、事業の拡大のためには別の市場に乗り出す必要を感じるからだ。全く異なる市場に乗り出すには、これまでのような積み重ね方とは違う、まとまった資金が必要になってくる。そして、そうした企業が目指す市場が子供市場や実写映画の市場、海外市場というわけである。

最も典型的な例が、昨年秋に上場しマニア作品の製作で定評のあるGDHである。GDHは、クオリティーの高い作品については年間の製作本数をこれ以上増やすつもりはないという。そこにはやはりマニア市場の規模の限界についての考えがあるのだろう。
今後の方針は、そうした作品からあがる収益の拡大と他の分野への進出である。実際に、GDHは子供向け作品や実写映画に積極的に乗り出しつつある。

しかし、こうした戦略の難しさは大衆市場に乗り出すことで、これまでの重要なマニア市場のファンを失う可能性である。それは単に大衆向けの作品を作り出す会社にファンが不快感を持つことや新市場の開拓に熱心になり過ぎてマニア市場の作品クオリティーの維持に手が回らなくなるケースが考えられる。
新たに進出する大衆市場で重要なのはマニア市場で培ったブランド力である。マニア市場でのブランド力と株式公開で獲得する社会的信頼感と新たな資金、それが新興公開企業の成長するための大きな武器であると言えるだろう。
[数土直志]