北米のマンガ事情 第15回 北米で日本マンガは今でも人気なのか -1- by 椎名ゆかり 

北米でマンガは今でも人気があるのか?

日本産マンガはその最盛期において北米で新しい市場を形成したと考えられ、その市場は存続していくと見られていた。現在の数字でも、売上を急激に伸ばし始めた2002年頃とほぼ同程度を維持してはいるが、上記「白書」の他に、コミックスやマンガのライターの中には、日本産マンガの人気は一時的な流行に過ぎなかった、という見方をとる人が多くいる。
言い換えるとそれは、日本産マンガは結局アメリカに定着できなかった、もしくはその市場は2002年以前のニッチの中のニッチ市場に戻った、という見解だ。

お金を払わずに作品を楽しむ人が多くいたとしても、少なくとも北米の紙の本の市場では日本産マンガ、もしくは日本マンガ的絵柄の作品は、出版する側からも小売側からも以前ほど歓迎されていない。「人気は一時的なブームであり、そのブームが終わった」「マンガはもう売れない」という認識が広まっているのである。
「ブームが終わった」と言うと、「何を今さら言っているのだ」と感じる人もいるだろうし、その一方で、「ブームは終わった」ことに違和感を抱く人もいる。

違和感を抱く人が多いせいだろう。北米でのマンガ売上低下の話になると、筆者は必ずと言っていいほど「ネット上の違法の翻訳のせいで売上は下がったが、今でも以前と変わらず人気がある」という見解に対して意見を求められる。
正直、この質問に対しては「現時点でその見解が正しいかどうかわからない」と答えるしかない。しかし更に意見を求められれば、「今でも以前と変わらずに人気があるとする意見は、個人的には楽観的過ぎるように思う」と付け加えるだろう。

先に述べたように北米でマンガが人気があると信じられている根拠は、まずスキャンレーションの氾濫と、次にコンベンションの参加者数である。日本のアニメやマンガをテーマとしたコンベンションは今でもアメリカ全土で数多く行われ、どのコンベンションの参加者数もわずかながら増え続けているというのはよく聞く話だ。

時代と共にコンベンションの様子は変化しているが、ファンは昔と変わらず熱心で、コンベンションがどれも盛況なのは事実だろう。恐らく北米に限らず、アニメやマンガのコンベンションに初めて参加する人は誰でもその熱気に驚く。そして日本産アニメやマンガの海外での人気を実感する。そしてその会場内の熱気にあてられて、しばしばコンベンションに来ているのが極一部の熱狂的なファンだけだということを忘れそうにすらなる。
これほど盛り上がっているコンベンションの参加者数が増加しているのなら、マンガやアニメのファンが増えていると考えるのも自然なことだ。それに先に述べたように売上を阻害するほど膨大な数のスキャンレーションがあるというだけでも、海外でのマンガ人気を証明しているも同然である。

ただ、筆者には「以前と変わらず人気がある」とする意見に素直に頷けない懸念材料がいくつかあるように思えてならない。

PART2 <販路の数の低下とコンベンションにおける多様性の増加>に続く 

以下、参考にしたサイトの例。
Comic Book Resource, ”The Manga Evolution Goes Day-and-Date” http://www.comicbookresources.com/?page=article&id=41916  October 31, 2012
Comic Book Resource, “NYCC: ICv2 White Paper Presentation Spotlights Comics Sales & Trends”
http://www.comicbookresources.com/?page=article&id=41559  October 12, 2012
ICv2, “ICv2’s Comic Market Size Analysis for 2012” http://www.icv2.com/articles/news/24118.html October 11, 2012