北米のマンガ事情第14回 クラウドファンディング ―アメリカにおけるコミックスの自費出版 PART3

●業界の商慣習

ただし、先に述べたように無名アーティストだけでなく、人気アーティスト、更には小さいとは言え出版社もクラウドファンディングを活用するのには、やはり業界内の“原稿料”に関する商習慣も関係しているだろう。

大手コミックス出版社から出ている“メインストリーム”と呼ばれるスーパーヒーローのコミックスでは、アーティストはその作品に権利を持たず、印税は払われずに原稿料だけ払われる場合がほとんどである。(ただし、原稿料は日本の平均よりもかなり高めと言われる)。
出版社にもよるので一般論で語るのは難しいが、オリジナル作品の場合は原稿料はゼロか、もしくはかなり低くおさえられていることが多い。この場合作品の権利は作者のものになり印税も払われるが、アーティストには本が出版され印税が払われるまで収入無しの可能性がある。

そこで、既に制作するコミックスの出版社は決まっているが、アーティストが当座の原稿料を稼ぐためにKickstarterなどのクラウドファンディングを活用する例も見られる。
たとえプロジェクトの立ち上げ時に出版社が決まっていなかったとしても、集めた資金で制作されたコミックスが後に中堅出版社から出版されることも少なくない。日本と同じ形態のコミックス雑誌がないので、オリジナル作品を出したいアーティストにとっては出版社からアドバンス(前払い金)が支払われない限り、制作期間中の生活費を得る手段としてもクラウドファンディングのような選択肢が増えたのは有難いことに違いない。

■ PART1 クラウドファンディングとエンタテインメント
■ PART2 クラウドファンディグによるコミックス出版
■ PART3 コミックスの出版にクラウドファンディングが使われるわけ
■ PART4 クラウドファンディングで得られるもの