躍進する北欧アニメーション デンマーク・アニメーションの力
世界で注目されるデンマーク
オフィスH 伊藤裕美
[筆者の紹介]
伊藤裕美 (いとう ひろみ)
外資系ソフトウェア会社等の広報宣伝コーディネータや、旧エイリアス・ウェーブフロントのアジアパシフィック・フィールド・オペレーションズ地区マーケティングコミュニケーションズ・マネージャを経て1999年独立。海外スタジオ等のビジネスコーディネーション、メディア事情の紹介をおこなう。EU圏のフィルムスクールや独立系スタジオ等と独自の人脈を持ち、ヨーロッパやカナダのショートフィルム/アニメーションの配給・権利管理をおこなう。
自主企画として、短編映画館・下北沢トリウッドでアニメーション特集上映を毎年主催。また、海外ショートアニメーションのコンピレーションDVDのピクチャーブック「プチシアター」シリーズを企画発売。
2007~08年は、カナダ国立映画制作庁とBravo!FACTが主催する、CJax~日加ショートアニメーション・エクスチェンジ(若手アニメーション作家の国際デビュー支援プロジェクト)の日本事務局を務める。
1999年より毎年、世界最大規模のアヌシー国際アニメーション・フェスティバルに参加し、プチ・セレブ気分でアニメーション三昧の1週間を過ごすのが趣味。
日本茶専門店「茶処いとう」の経営など、さまざまな活動が同時進行中
現職 オフィスH(あっしゅ)代表。
http://blogs.yahoo.co.jp/hiromi_ito2002jp
デンマーク コペンハーゲン国際空港は、北欧諸国のみならずヨーロッパ各国への空の玄関として、ヨーロッパ有数のハブ空港の一つだ。北欧デザインのモダンな空港ターミナルは、訪れた者に、デンマーク人の文化センスの良さを感じさせる。
モダンデザインや充実した社会制度で、日本で注目を浴びるデンマークは、アニメーションの制作でもめざましい成長を遂げている。今年6月にデンマークの視察から、最新の制作事情や人材育成、そして民間活力をバックアップする公的支援を報告する。
■実は強い、デンマークのアニメーション
デンマークは、アニメ映画の制作本数でヨーロッパ5位にある。ヨーロッパのプロデューサーらが運営する、民間のアニメーション振興組織CARTOON(http://www.cartoon-media.be/index.php)は1999年から長編アニメの国際共同制作のフォーラム「Cartoon Movie」を主催する。
そのCartoon Movieの統計によると、99年~2008年の間にヨーロッパでは長編アニメ99本が完成し、24本が制作中(08年時点)で、その数123本にのぼる。そのうちの17本にデンマークが参加している。また表から、制作が欧州に拡散していることが分かる。
国別制作本数(含む国際共同制作)
[1999年~2008年 長編アニメ]
フランス 41
ドイツ 26
スペイン 25
デンマーク 17
イタリア 9
イギリス 8
ベルギー 7
アイルランド 5
ルクセンブルグ 5
スウェーデン 4
出典:Cartoon Movie
デンマークは人口550万人ながら、A.Film(エーフィルム、http://www.afilm.com/)やCopenhagen Bombay(コペンハーゲン・ボンベイ、http://copenhagenbombay.com/)といった国際競争力あるアニメ制作会社が数社ある。得意とするのは、ティーンエージャーやヤングアダルト向きのコメディ。少人数のチームで、5億円未満の低予算のCGアニメの制作もできる。
デンマークは狭い国土ゆえに昔から国外へ活路を求めてきた。バイキングが良い例だ。アニメ産業が元からあったわけではなく、ディズニーアニメを見て育った世代が立ち上げたのだ。創立者たちは国外でアニメの制作やビジネスを学び、コペンハーゲンに戻り、自らのスタジオを立ち上げた。そして国外にも市場やパートナーを求めた。
■長編アニメ制作のハブとなる、A.Film
1988年にディレクターのヨルゲン・レルダム氏ら4名の若者が創立したA.Filmは、コペンハーゲンの本社だけでなく、ドイツ、エストニアなどにスタジオを持つ。2000年の初長編『Hjælp! jeg er en fisk/Help! I’m a Fish』で国際合作をおこない、04年の『Terkel i knibe/Terkel in Trouble』は興行的に成功した。
今年のアヌシー国際アニメーション・フェスティバルにも、『Rejsen til Saturn/Journey to Saturn』をアウトオブコンペに出品した。今では、フランスやドイツの合作パートナーとなり、北欧の中心的なスタジオだ。まさに、国際共同制作のハブだ。