コミコン2012:電子書籍事情  専門ショップを巻き込んだデジタルコミック配信は離陸するのか?

デジタルコミック分野のパネルイベントで大きなニュースがあったのは、「iVerse Media:New Frontiers in Digital Comic」だ。iVerse Mediaは、2008年にベンチャー企業として設立されたデジタルコミック販売のプラットフォームCOMICS plusを運営する。電子書籍時代の到来を見越していち早く立ち上げた。ただし、業界第2位となるものの市場シェアはトップのComiXologyの半分以下と差をつけられていると見られる。
そのiVerseが紙媒体のアメリカンコミック流通大手ダイヤモンド・コミック(Diamond Comic Distributors)と手を組み、新たなデジタルコミックの電子書店「Diamond Digital」を立ち上げた。パネルはその発表イベントである。
新サイトは新たに開発されたDigital Comics Readerと呼ばれるアプリ(iOS 、Android)を利用することでコミックをダウンロードして閲覧出来る。また、コミックス専門店のサイトの中でも閲覧可能だ。サービス開始時にはIDWや Image、Top Shelfなどの出版社の 4000冊以上の本が用意された。

iVerseと手を組むダイヤモンドは、コミックス専門店へのアメリカンコミックの流通をほぼ独占している企業である。出版社との協力も強固で、アメコミの作品・ユーザーに関するデータも豊富だ。これまでは一般書店が主要な顧客だったためデジタル分野の取り組みが遅れていたが、ITベンチャーのiVerseの技術を得ることで新市場進出が可能になる。
両社はDiamond Digitalを通じて、デジタルコミック市場トップのComiXologyやより大きな総合サービスを展開するAmazonなどを追うことになる。

企業の組み合わせとしては理想的なDiamond Digitalだが、不安な要素も少なくない。それはダイヤモンドのこれまでの専門書店流通での強さの裏返しでもある。
Diamond Digitalでは、コミックス専門店との連携、協調が強く押し出されているためだ。例えばデジタルでの販売でもあるにも関わらず、利用にはコミックス書店のプロモーションコードの入力が必要だったりする。従来のコミックス専門店のビジネスを奪わないための配慮だ。さらに現状ではマーベルとDCコミックの2大出版社が作品の提供を行っていない。
もちろんコミックス専門店との協力による強みもある。リアルの本プラスアルファの支払いでデジタル版を提供するやりかただ。コレクションアイテムでもあるアメコミだけに、リアルの本は保存し、実際にはデジタルで作品読むという利用も可能だろう。
電子書籍と一般書店がどうした関係を結ぶのか、日本、米国を問わず業界の大きな課題だ。アメリカンコミックという分野であるが、Diamond Digitalの試みはこの点からも注目される。こうした協力が成功すれば、エキビジョンホールでもデジタルコミックの存在がもっと大きくなる日も来るかもしれない。
[数土直志]

Diamond Digital
https://www.diamonddigital.com/

iVerse Media
http://iversemedia.com/
COMICS plus
http://comicspl.us/
Diamond Comic Distributors
http://www.diamondcomics.com/