「海のトリトン」「ユニコ」など 米国ソーシャル資金調達利用で英語翻訳実現へ

米国で人気が高いとされている日本のマンガだが、作品ごとの人気は日本とは異なる偏りがある。米国でポピュラーな作品は少年マンガ、少女マンガで、青年マンガでは日本でよく知られていても意外と知られていない作品が多い。
さらに作品の紹介が遅れているのは巨匠と呼ばれる作家の往年の名作マンガだ。日本では誰も手にしたことのあるような作品が一度も英語翻訳されたこともなく、ごく一部の人のみに存在が知られているケースは多い。そうした作品はかなりのボリュームがあるうえに、最新作を追う現在のファンの前ではそう多くの売上げが見込めない。翻訳出版をしても、資金回収出来ないという現実的な問題が作品紹介を阻んでいる。

そんな現状を打ち破るユニークな試みが米国で行われ、注目を浴びている。日本マンガの翻訳出版社デジタルマンガ(Digital Manga, Inc.)は、インターネット上で運営されるソーシャル資金調達のKickstarterを利用した手塚治虫のマンガ3作品『ユニコ』、『アトムキャット』、『海のトリトン』の翻訳資金の確保を試みた。

Kickstarterの仕組みはやや分かり難いかもしれない。まず、プロジェクトの提唱者が、サイトにプロジェクトの内容と紹介設定する。さらに目標金額と資金提供の金額を定める。それを観たネットのユーザーが、プロジェクトへの資金提供を判断するわけだ。
インターネットを利用した資金集めは、一見は寄付のように見える。しかし、Kickstarterでは資金の提供に応じた見返りが用意されており、むしろ小口ファンドと呼ぶのが相応しい。

今回、デジタルマンガは、この仕組みをマンガの英語翻訳の資金集めに活用するアイディアを考えた。3タイトルの作品のボリュームは、およそ1500ページを超える。翻訳プロジェクトに必要な資金は4万7000ドルにもなり、少ない金額ではない。
ところがプロジェクト開始から短期間で715人にも資金提供者が現れて、4万9411ドルもの資金調達に成功した。これにより手塚治虫の名作3タイトルの翻訳が実現に向かう。

今回のプロジェクトの成功は、米国のマンガコミニティの複雑さを示したかたちだ。スキャンレーションと呼ばれる翻訳マンガの違法なインターネット配信が溢れる米国では、マンガファンは作品にお金を払いたがらないとされることが多い。ところが一方で、今回は715人が、しかもその大半が30ドル以上、なかには100ドル以上もお金を翻訳のために提供する。
そこにはマンガを読む行為だけにとどまらない別のモチベーションも働いているに違いない。そうしたファンの心を考えることで、新たな翻訳マンガビジネスのチャンスも開けるかもしれない。米国でのマンガ市場はニッチだが、ニッチだからこそ出来るやりかたがまたあるとも言えるだろう。
[数土直志]

Kickstarter  http://www.kickstarter.com/
Translate Osamu Tezuka’s Unico, Atomcat & Triton of the Sea!
http://www.kickstarter.com/projects/digitalmanga/publish-osamu-tezukas-unico-in-english-in-full-col

デジタルマンガ(Digital Manga, Inc.)
http://www.digitalmanga.com/