TGS2009 海外企業の動向レポート3 (欧州・メキシコ編)

柿崎俊道

■ ABYLIGHT

任天堂マインドを持つスペインのゲーム会社

       IMG_1798

 ABYLIGHT社はスペイン・バルセロナの名所サグラダ・ファミリア大聖堂に程近いところに拠点を構えるゲーム会社だ。社員数は10名。TGS2009ではWiiウェアの『FISH’EM ALL!』『Stop Stress:A day of futy』を展示した。日本ビジネス開発担当の川畑由香里氏に話を聞く。
「弊社は任天堂向けのゲームを開発しています。ヨーロッパのゲームはリアリズムを追求したゲームが多いんですが、私たちはファミリーで安心して遊べるゲームを作るようにしています」
 Wiiウェアとしてすでにダウンロードがはじまっている『FISH’EM ALL!』をプレイさせてもらった。網を持ったおじいちゃんが飛んでくる魚を掬い取るゲームだ。サメに食べられたり、カニに挟まれたりする表現が妙に生々しいが、デザインはかわいいPOP調で、日本向けに作られていることがよくわかる。
「ABYLIGHT社を起業したふたりのクリエイターは、スーパーファミコンの頃から任天堂のゲームを作ってきた人たちなんですよ。任天堂マインドをよく理解し、すごく日本を意識しています」

 会場で公開されたWiiウェア用の新作『Stop Stress:A day of futy』は任天堂の審査待ちだという。
「じつは米国、ヨーロッパの審査は通過していまして、向こうではサービスがはじまっています。日本だけが審査が降りないんですよね。日本は審査が厳しいと聞いていましたが……」
 ちなみに『Stop Stress:A day of futy』は名前のとおり、ストレス発散ゲーム。少年がバットやスリッパで家中のものを壊しまくる。ユニークなコンセプトだが、任天堂本社が許可するかというと……。日本で遊べる日が来ることを切に願う。

■ Xibalba Studios社

       Imagen_02[1]

       Imagen_08[1]

メキシコから3Dゲームを発信!

「熱いメキシコなのに、雪のゲームを作りました。涼しいところが好きだからね」
 というのは、Xibalba Studios社のヘルマン・バルケス氏。Xibalbaはメキシコ・モンテレイ市のゲーム会社だ。モンテレイ市は夏は45度を超す暑い都市。彼らは氷上をスノーボードで駆けるいかにも涼しげなレースゲーム『ICE BREAKERS』をTGS2009で発表した。WiiとXbox360向けだそうである。
「メキシコには開発会社が10社あるけど、パブリッシャーはありません。今回は『ICE BREAKERS』を受け入れてくれそうな日本のパブリッシャーを探しに来ました。見つかるといいのですが……」
 ところで、メキシコではどんなゲームが流行っているのか。
「アメリカのゲームがほとんどですね。日本のゲームでは『ストリートファイター』シリーズが人気です。僕らはそうしたゲームに並ぶよう頑張ります」

■ ANKAMA社

       IMG_1808 

       IMG_1812

       IMG_1815

2000万人の会員を持つフランス最大のMMORPGが日本上陸

 毎年、東京ゲームショウに参加している身からすると、TGS2009の縮小ぶりは物悲しく見えた。その中でひとつのゲームのために巨大な特設パビリオンを構え、気を吐いていた企業があった。フランスの企業ANKAMA社である。オンラインゲーム『ドフス』を携え、TGS2009に出展した。同社マーケティングコーディネーターの円谷文子氏に話を聞いた。
「オンラインゲーム『ドフス』は日本のマンガとアニメ、アメリカンコミック、フランスのバンド・デシネの要素を掛け合わせたMMORPGです。フランスでは2000万人のユーザーを持ち、その8割がフランス人です。今回、日本でサービスを本格的に開始するため、中野区に拠点を作りました」
 日本でサービス開始は頷けるとしても、中野区という場所が意外である。秋葉原でも丸の内でもなく、なぜ中野なのか。
「『ドフス』は本国フランスではメディアミックスで知られたコンテンツです。アニメ、携帯電話のアプリから、『ドフス』の隔月専門誌、イラスト集、ぬいぐるみや携帯ストラップを作っています。なかでも『ドフス』マンガは70万部を記録し、フランスでもっとも読まれている国内産マンガになりました。中野区周辺は日本のアニメ企業が集中している地域です。多くの企業とコラボレーションをし、日本向けのメディアミックス展開をしやすいようにと思って、この場所を選びました」

 私は円谷氏の話を聞き、『ドフス』の展開は的を射ていると感じた。
 私見だが、海外のゲーム会社が日本で失敗している理由のひとつにゲーム単体で成功しようとした点にあると思っている。ゲームの実力だけで真正面から日本市場を攻略しようとしているのだ。しかし、よく考えてほしい。そんなバカ正直なビジネスをしている日本の企業はどこにもいない。マンガ誌で連載をしたり、アニメにしたり、ノベルティにしたり、UFOキャッチャーの景品にしたりと、ひとつのゲームの要素を分解し、多面的なマーケティングを行っている。敷居を下げれば下げるほど、ユーザーはゲーム世界に入りやすくなる。そのことを理解している海外企業は驚くほど少ない。
 『ドフス』が日本と同様の手法を取っていることは明らかだ。日本国内のサービスがはじまればオンラインゲーム業界の台風の目となる可能性は高いだろう。期待したい。