社会が変えたテレビアニメの変遷 シンポジウム「アニメビジネスの50年」

キティフィルム、マッドハウスなどでアニメビジネスを手がけてきた増田弘道氏(左)と、アニメ評論家の氷川竜介氏(右)。

社会が変えたテレビアニメの変遷
シンポジウム「アニメビジネスの50年」

3月22日、「東京国際アニメフェア2012」の会場にて、シンポジウム「アニメビジネスの50年」が行われた。これは1963年にスタートした日本初の30分テレビアニメシリーズ『鉄腕アトム』から現在までの約50年を、日本の社会状況の変化とアニメビジネスの変遷に焦点を当てて振り返るもの。壇上にはモバイル動画配信サービス「ビデオマーケット」の増田弘道氏とアニメ評論家の氷川竜介氏が登壇し、各年代ごとに考察が行われた。

以下、順を追ってポイントのみ紹介していくと、1960年代は月間から週間へと変化する生活ペースや、核家族化という状況からテレビとテレビアニメが家庭内に大きなポジションを得ることになったこと、また『ウルトラQ』(1966年)『サンダーバード』(1966年)といった特撮作品も、高度経済成長の象徴的な存在として人気を博すことになる。

続いて1970年代は、そうした科学礼賛の未来観が変質し、アニメ作品にも公害問題が登場したり、巨大企業が悪の象徴になったりと、日本人の価値観自体の変化が作品にも影響を与えてゆく。そのなかで『マジンガーZ』(1972年)がヒットし、それをきっかけにおもちゃ会社が商品を売るためにテレビアニメをスポンサードする新たな流れも形成。原作マンガありきではなく、商品先行でアニメも立ち上げるケースも生まれ、マンガ原作を持たない『勇者ライディーン』(1975年)から『機動戦士ガンダム』(1979年)を経て、ロボットアニメブームが形成されてゆく。

1980年代には、ビデオデッキとファミリーコンピュータという2つの大ヒット商品が、テレビの在り方自体を激変させる。単なる放送の受像機に留まらず、映像モニターとして活用することが多くなり、それに合わせてテレビを家族のものではなく、自分のものとするコンテンツ消費のパーソナル化が拡大。1983年にはOVAも登場し、子供向けのコンテンツだったアニメが、それより年上の世代のアニメファンにも支えられるようになっていき、オタク的な価値観も存在感を増してゆく。

1990年代にはテレビアニメの高クオリティ化やアニメのパッケージビジネスの進化が進み、そこから『美少女戦士セーラームーン』(1992年)や『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)といった時代を代表する作品も登場。それと並行して1980年代にOVAでリリースされていた作品が深夜アニメへと舞台を移して消費されてゆく。インターネットとDVDも1990年代末に普及が進み、アニメの送り手と受け手の双方が、デジタル化というパラダイムシフトに直面することになる。

2000年代はデジタル化によって、テレビありきの時代からの脱却が行われることになる。多チャンネル化や地デジ化への移行、合法&非合法を問わず、インターネットによる動画配信も急速に普及し、テレビでの放送はおろか、制作費をDVDやブルーレイといったパッケージの販売で回収するといったアニメビジネス自体も曲がり角を迎えている。

以上、駆け足で進んだシンポジウムをさらに大幅に簡略化して述べたが、全体を通して増田氏と氷川氏から語られたのは、まず社会状況が先に変化することで、それに応じた新たなアニメ作品やアニメビジネスが生まれてくるということ。世間的には画期的なコンテンツを手がけたクリエイターにどうしても注目が行きがちだが、そうした新しい挑戦を受け入れる土壌にも着目することで、より精度の高い状況把握が可能になると言える。

もうひとつは時代を経ても、社会的に似たような状況がループするということ。ビデオデッキ普及の際に起きたことが、DVD普及の際にも起きていたりと、次のステージに移行しても似たような状況が発生する一定の流れは確実にあり、過去を俯瞰して見ることで、より将来の予測が立てやすくなる。

シンポジウムの最後に両氏は「50年を振り返ると、未来に役立つことが結構多いはずなんです。テレビという20世紀もっとも発展したメディアとともにあった日本のアニメビジネス、これが50年を迎えて枠組みが変わりつつある。そういう問題意識でつぎの50年を考えていきたい」(増田氏)「過去から現在を通して補助線を引いた先に未来があり、どういうふうに10年単位でスライドしていったのかを考えることで、今後5年10年ぐらいの変化が射程に入ってくる。メディアの変化に合わせてアニメ自身の物語やキャラクター、作られ方も変わっていくべきだし、そこから過去にない作品やビジネスも出てくると思う」(氷川氏)と締めくくった。

日本のアニメの歴史が培ってきた約半世紀のトライアンドエラーがどんな形で活用されていくのか、そんなことも重ね合わせつつ、アニメ業界が繰り出す次の一手に注目していきたい。
[文・取材 野口智弘]