スクウェア・エニックス 田口浩司氏インタビュー

 

■    「ガンガンONLINE」のふたつの方向性

AA
海外というのは相当意識されるんですか。『鋼の錬金術師』は世界どこの国に行っても売れていますが、実はこれは珍しいケースだと思います。

田口
自身が手がけたコンテンツが世界中に支持されるというのは『鋼』が初体験だったんです。実際、今年も7月に、パリの「JAPAN EXPO」とサンディエゴの「コミコン」に参加していますが、テレビのデータなどの数字ではない部分を大事にしています。

映画をやったときに、香港、そしてパリへと現地に飛んだんですよ。そうして現地の人たちと一緒に見ていると、こっちが思ったところで笑ってくれたり、泣いてくれて。もちろん若干、日本人と違う反応をする部分もあって、そうしたお客さんの反応を見ているとすごく面白かったんですね。2割方日本人とはずれている部分がありましたが、そこもちゃんと分析すれば、作品の肝としては理解してくれるのかなという気がしました。 

AA
日本の国内ですが、人口が減っていることもあり出版はこれから大きな拡大が見込めません。おそらく出て行く場所は、ネットと海外しかありません。
その時にスクエニさんは「ガンガンONLINE」を立ち上げました。最初に見たときに、こんなに贅沢にただで流しちゃっていいのかなとすごく驚きました。「ガンガンONLINE」これからどう活用していくのですか。 

田口
おっしゃるように、将来が見えないというのが、いまの出版業界だと思うんです。オンラインの可能性は十分にある。ただそのすべてをオンライン上に移すという、そんな危険な賭けはビジネスとしてはできない。

「ガンガンONLINE」は2つの方向性があるんです。日本ではあれをフリーコンテンツとして、つまり赤字である雑誌(マガジン)の変わりにマガジンとして成り立たせる。出版社は値段から原価を考えると雑誌自体は赤字なんですよね。「ガンガンONLINE」はWEBで連載したものをコミックという紙媒体で販売するというプランで、実はあれは半年間の始動期間が終わって、今期は黒字化しています。

■ PSPでコミックを展開 

AA
もうひとつは? 

田口
海外を向いています。日本の中ではこれだけ書店があって、ユーザーの手に届きやすい。部数が多いと単価も安くなり、400円前後の値段をつけることができる。欧米でも、日本と同じように流行っていて、イベントなどでもすごく熱い反応をいただくんです。ただ、日本ほどコミックは実は売れてないんです。
ひとつの理由はインフラですよね。日本の東京周辺に住んでいらっしゃる方だったら、自転車でもあれば自宅周辺に3軒、4軒は書店があるじゃないですか。そういう環境にいないですよね。土日に親と一緒にショッピングモールに行って、初めてそこで買い物ができる。 

AA
学校の帰りにそこに書店があるというわけではないですよね。

田口
そうです。となるとやはり部数が減ります。部数が減ると原価が上がりますし広いエリアをカバーすると流通コストがかかります。向こうでは、だいたいコミックって8ドル99から12ドル99ですよね。これでは若年層には広がらない。インフラに問題があるとすれば、それがなくなった時に可能性は非常に高いですよね。そこで、海外ではインフラをPCだったり、違うものだったりと考えて行きたい。 

田口
以前からこうした話を集英社さんや小学館さん等とも話をしていました。今回リブリカという会社が設立され、当社も出資しました。そこでゲーム機の「PSP」でマンガを読むサービスへの作品提供を今回発表しました。これはうちだけでなく、集英社、講談社、小学館、角川グループの多くの出版社が参画しています。 最終的にはPCから皆さんが見られるようになっていくのが一番いいんですけど、やっぱりコミックを持ち運びできるべきだろうというのがあります。 

AA
それは新作ですか? 

田口
最初はやっぱり旧作からでしょうね。本屋さんにこれだけ作品が並んでいる日本のコミック購入環境では特に必要ないかもしれない。やはりメインは欧米狙いなわけです。 ダウンロードしてマンガを読む、という流れをマンガ先進国日本から発信して海外のユーザーにも購入習慣付けていただくという方向性です。 
紙にしてしまったらさっきと同じ状況になります。ダウンロードなり、配信なりで作品を流通させ、利益は課金型で回収したいんです。日本のコミックに当たる部分を配信でやりたいと考えています。

AA
最後に話が最初に戻りますが、プロデューサーになりたいという人にいま何をすべきかお話いただいていいですか。

田口
ふたつのことをやってください。ひとつはすべてのものを数字、お金に換算して計算する癖を付けてください。つまり、お金が集まらないとこの仕事はできないんです。
同時に矛盾しますが、本当に作りたいもの、伝えたいもの、それを作る信念を持つことです。そのためには、いろいろなものを読んだり、映画を見たり、アニメを見たり、しなければいけないです。その蓄積から自分が本来的に訴えたいもの、自分の中で作りたいものを幾つか持って欲しいと。両方できないとプロデューサーはできません。 

AA
本日はどうもありがとうございました。

 

 
 

「PlayStation」、「プレイステーション」および「PSP」は株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントの登録商標です。また、PSP?は同社の商品です。?Sony Computer Entertainment Inc.
鋼の錬金術師  (C)Hiromu Arakawa/SQUARE ENIX    PSP(R)「プレイステーション・ポータブル」は株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントの商品です。また、「PSP」および「プレイステーション」は同社の登録商標です。  (C)2009 Sony Computer Entertainment Inc.

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