北米のマンガ事情第10回 『セーラームーン』が北米でなぜ今売れているのか。

■ 『セーラームーン』の北米での歴史

『セーラームーン』がアメリカで出版されたのはこれが初めてではない。1997年にMixx Publications (現TOKYOPOP)の雑誌『Mixx-Zine』上で掲載が開始され、1998年には単行本も出ている。

北米で『セーラームーン』の人気は、他の多くのマンガと同様に当初アニメで火がついた。アニメの『セーラームーン』が最初に北米で放送されたのは1995年だが、その時は平日の早朝という時間帯のせいもあってまったく人気が出ずに打ち切られている。
しかし、ネットを中心に話題になりファンの動きも活発化。テレビの打ち切りに反対して『セーラームーン』のテレビ放映を求める署名運動(「Save Our Sailors (SOS)」)も起こるほど、熱狂的なファンを生み出す。その後番組は幾度かテレビ放映されたものの、午後の早い時間という子供にとっては見辛い時間帯だったせいか視聴率は伸び悩んだ。
それでも東映アニメーション自体の売り込みや根強いファンの活動を受けて、1998年に大手ケーブルテレビチャンネルであるカトゥーンネットワークの夕方の時間帯で再び放映が始まると、ようやく人気を得ることに成功した。

『セーラームーン』のマンガ単行本は結果的に同作品のアニメ人気が盛り上がった時期に出版され、カトゥーンネットワークから入ったファンも取り込むことに成功し、当時としてはかなり良い売上を収めたと言われている。しかしTOKYOPOPはそのライセンスを維持することができずに、単行本は2005年を最後に(1)長らく絶版になっていた。

その『セーラームーン』が2011年になって、再出版されていきなり良い売上を示した。今回の新英語版は、2010年に本格的に活動を始めた講談社の現地法人Kodansha USAから出版されたものだ。
東映アニメーションは2009年頃からアニメ『セーラームーン』のライセンスを再び世界各国に向けて売り始めている。恐らくその頃『セーラームーン』のライセンスが何らかの要因でまた動き始めたのだろうとは推測できるが、アメリカに限って言えば、この出版に前後してテレビでアニメが放送されていたわけではなく、かつてはアニメで人気が出たとは言え、現時点ではアニメがマンガの売上を直接的に牽引したわけではないように見える。

ほぼ20年前に出版されたマンガの再出版がアニメの後押しも無く、ベストセラーリストのトップに躍り出たと聞くと、実際にかなり唐突な印象を受ける。この売上の良さは何に起因するのだろうか。

(注釈)
1.TOKYOPOPがライセンスを失ったのは2003年とも言われる。

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