2011年 アニメビジネス10大ニュース

[「同時展開」がキーワードに]

 2011年のアニメのビジネス環境の変化を表す言葉があるとすれば「同時展開」だろう。この言葉には多くの意味が含まれる。ひとつは海外展開の際に言われる「国内と海外同時展開」である。もうひとつは、その結果として関心が集まる「国内での同時展開」だ。
 海外同時展開は、北米向けのインターネットによる日本でのテレビ放送との同時期配信をきっかけに始まった。2011年にテレビ東京は、それを中国に拡大した。また、アニプレックスは『Fate/Zero』で世界8ヶ国語同時配信を実現する。ニコニコ動画も海外向けのアニメ配信を始めるなど、ネット上で日本と海外の垣根は急激に低くなっている。

 同時リリースは、テレビ番組の配信だけにとどまらない。北米のアニメプレックスUSAはBDパッケージの同時発売を目指す。『ラストエグザイル―銀翼のファム―』は、アジア地域の同時期テレビ放送を実現、映画『009 RE:CYBORG』では2012年のアジア同時公開が発表されるなどあらゆるビジネスに及ぶ。
 さらにVIZ Mediaは、マンガで単行本や週刊連載の北米リリースを大幅に短縮することを目指す。電通エンタテインメントUSAは、『モンスーノ』でアニメと玩具の2012年世展同時展開を発表している。
 
 アニメの国内外同時展開がされる一方で際立ってきたのが、国内でのリリース時差である。国内では首都圏でまずテレビ放送、それ以外の地域はこれより遅れるケースが大半だ。また、国内配信はこの放送の最後の地域が終わった後というケースが多い。国内と海外のリリース時期が逆転するケースも増えている。
 『Fate/Zero』では、この国内の放送時差を大幅に短縮した。さらに1月から放映される『輪廻のラグランジェ』でも同様の試みが行われている。『輪廻のラグランジェ』では視聴者は限定されるものの、動画配信は最初の地域の放映直後から始まる。
 国内の「同時展開」も、テレビアニメだけにとどまらない。パッケージ発売と動画配信の同時スタート、マンガ単行本と電子版の同時発売など広い分野に及ぶ。インターネットの普及による情報波及の高速化、デジタルコピーの拡散対策として今後も、「同時展開」は重要なテーマになるだろう。

[オリジナル作品の活躍]

 マンガや小説を原作としない、オリジナル企画のテレビアニメが注目されたのも、2011年の特徴である。作品の衝撃の強さ、解釈を巡って話題が盛り上がった『魔法少女まどか☆マギカ』、SFやスーパーヒーロー、バディ物という定石に現代的な仕掛けを次々に打った『TIGER&BUNNY』、さらに青春ストーリーを描き、若者の心に響く『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』などのヒット作が相次いだ。こうしたヒットが偶然なのか、時代の新たなトレンドなのかは、まだ十分検証されていない。
 ただし、原作つきよりリスクが高いとされるオリジナル企画だが、アニメの原作となる有望なマンガや小説が減少していることから、今後も多くの作品が生まれそうだ。

[体験型映像ビジネス:ライブ配信]

 インターネットでのアニメ配信が一般化するなかで、新たなトレンドに浮上したのがライブ配信だ。ニコニコ生放送やUstreamを使い、ネットを通じて他の視聴者と同時にアニメやアニメイベントを楽しむ視聴の人気が急激に高まっている。
 なかでも、6月に行われた『魔法少女まどか☆マギカ』の一挙配信は延べ100万ユーザーを集め、関係者を驚かせさた。2011年のもうひとつのヒット作『TIGER&BUNNY』でも、テレビ放送と同時にUstream配信をすることで、拡散しがちな視聴体験を集中させ、番組の盛り上げに貢献した。

 ライブ配信を先導するのは、ニコニコ動画とUstreamである。ニコニコ動画はさらにミュージカルのライブ配信、ライブスペース ニコファーレをオープン、コスプレイベントなども配信する。春には英語版サービスを開始しているが、キラーコンテンツは同時配信とライブ番組である。
 5月には角川グループがニコニコ動画の親会社ドワンゴに出資した。また、スタジオジブリが映画関連イベントをニコニコ動画で行うなど、既存の有力企業も集まる。
 一方、バンダイチャンネルは、配信事業のなかにBANDAICHANNEL LIVE!をスタート。体験共有型のサービスを組み込む。英語圏向けのアニメ配信サービスでは、クランチロールもライブ番組を開始している。

[2011年 中国市場への新たな挑戦]/[北米市場激変]
[震災がもたらしたもの]/[アニメ企業はどこに向かう]/[新設会社の動向]