HISTORICA 押井×西久保 宮本武蔵への思い

多彩な才能に恵まれた宮本武蔵をアニメという技法で解説

Mr.miyawaki.jpg  政治的な部分はカット、ダ・ビンチの部分はあくまでもさわりだけにとどめ、脚本にある巌流島のくだりを中心に作品化に努めたという西久保氏に対し、司会である宮脇氏が関心を示したのが、ダ・ビンチの部分。そこで、押井氏は、宮本武蔵が多才であったという事実や、左利きだったという体質、最後は客人として生きたという人生の顛末、そして双方に男色説の噂が出たという点に言及し、宮本武蔵と、ダ・ビンチの共通項について語った。
 また、講演では、剣豪といいながらも牢人であったという事実にふれ、これは、今でいえば「就活」にあたると押井氏。一見、格好良く見えながらも実際はそのような綺麗ごとでは済まされるものではなかったと、武家社会の厳しい現実を現代の状況をふまえて解説した。
 更に押井氏は「五輪書」が哲学書以上に優れたマニュアルだったと独自の見解を提示。剣を扱えるように分かりやすく指南しており欧米がマニュアル思考で、日本が非マニュアル思考であるといった定説に異を唱えた。また、二刀流は、馬上の戦いを前提とした剣法であるとし、厳しい戦いの中で400キロもの重さと勢いを戦いの場で生かさないはずがなく、宮本武蔵は、そのような実践的な剣術を編み出したのだと押井氏独自の武蔵論を唱えた。

映像表現とは自分の思い入れがある部分を徹底的にこだわること

Directornishikubo.JPG 一方、西久保氏は、浪曲を多用した点について、もともと音楽をやりたくてアニメ業界に入ったという自身の経歴にふれつつ、押井氏が自身の哲学を作品の中で語ることに思い入れがあるように、西久保氏も音楽には特にこだわったとした。同時にその音楽へのこだわりを突き通せるという楽しみがなければ映像づくりに参加する意味がなくなってしまうと自身の音楽に対する並々ない思いを語った。
 また、西久保氏は、宮本武蔵を「時代に今ひと時遅れてきてしまった人物」とし、人それぞれに「ひと時遅れてしまった」という感覚があるはずでそれを表現したかったと、作品に対する自分の思いを明かした。

directoroshii01.JPG 最後にアニメドキュメンタリーという形式について、押井氏は今回の作品を教養映画としてはとても意義のある作品となったと自らの作品を評し、「全国の小中学校の図書館には是非、お買い上げいただきたい」と笑いを誘いながらも、完成したものは間違いなく授業や、NHKの地上派でも放送できると自信を示した。
 また、現在を「日本人が日本人であることを忘れている時代」と定義し、だからこそ本作品で「日本人とは何か」を改めて提示する必要があったとクリエイターとしての思いを熱く語った。

 時間にして60分というものの、あっという間に過ぎて行った感が強い本セミナー。『宮本武蔵 ―双剣に馳せる夢―』のDVDがリリースされる際は、押井氏が最終稿として渡した脚本全文が同梱される可能性を西久保氏が示唆したこともあり、今後の展開が期待された。

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