アジアのコンテンツ政策 日本とシンガポールの現状は?

 10月20日、「アジアにおけるコンテンツ流通 ~アジア各国の取り組み~」と題されたシンポジウムが、東京・日本科学未来館で開催中のデジタルコンテンツエキスポ2011の特別プログラムとして行われた。このシンポジウムはアジア各国のコンテンツ分野の海外展開政策の取り組みと現状を紹介するものだ。
 経済産業省商務情報政策局メディアコンテンツ課の伊吹英明課長、そしてシンガポールメディア開発庁でテレビ、アニメーション、映画、音楽を担当するエミリー・オン氏が登壇、デジタルコンテンツ協会の鷲見良彦氏が話を訊いた。今回は2カ国だけを取り上げるかたちだが、市場規模、展開の方策も異なる両国の対比が際立った興味深いものだった。

 伊吹氏のプレゼンテーションは、近年、積極的な取り組みが行われながら、一般的にはやや分かりにくい経済産業省の海外向けのコンテンツ政策が分かり易く説明されていた。
 まず、海外に目を向けることについて、国内のコンテンツ市場が伸び悩む一方で、海外市場は成長が続いている。一方で、日本のコンテンツ産業の輸出比率は5%程度、米国は20%ある。日本のコンテンツは海外で評価が高く、まだそれを伸ばすことは可能でないかと指摘する。

 そして、海外展開では特にふたつの地域に目を向ける。米国とアジアである。米国については、それ自体の市場の大きさと世界市場に占めるシェアを考えている。例えば映画では米国は世界市場の4割を占め、さらに残りの市場の配給の半分をハリウッドメジャーが手掛ける。つまり、世界の映画流通の7割はハリウッドの企業が行っている。
 そうであればここでビジネスをやる必要があるとし、最近話題を呼んだコンテンツの海外展開を目指す新会社オールニッポン エンタテインメントワークスの設立につながる。その目的は優れたコンテンツを持つのに海外に出て行けない人と既に経験がある人のノウハウを結びつけることだ。
 さらにこうした人材を育成するための海外留学支援や教育プログラム、海外に向けてコンテンツを売る場としてのコ・フェスタ開催と全てが連なる。

 アジアについては、市場としては欧米が大きいが、日本コンテンツの受容はこの地域のほうが高いと指摘する。さらにコンテンツ市場成長率の高い地域でもある。
 そこで、現在は情報の共有や共同製作を目指し、そのための場としてアジアコンテンツビジネスサミットを活用するという。さらに海賊版については、海賊版があるから進出しない、しかし進出しないと海外の日本コンテンツファンは海賊版に手を伸ばす悪循環とし、その解決を目指す方向だ。

 コンテンツ産業発展のための環境づくりに重点を置く日本に比べて、シンガポールの支援はより直接的だ。メディア開発庁などを通じて、積極的な産業支援を行う。
 オン氏のプレゼンテーションは、メディア開発庁のコンテンツ政策の説明と成果を誇る。特に力を入れるのが、海外企業の誘致と共同製作である。ルーカスフィルムやUbi、EAなどのコンテンツ企業、放送局などで、シンガポールに拠点を持つコンテンツ企業は数多い。国際都市国家の強みを活かしたものだ。さらにアニメーションの共同製作などではヒットも生まれている。
 こうした政策が直ちに日本にも応用出来るかどうかはやや覚束ない。国の基礎である競争条件が違うからだ。むしろ、シンガポールの例は、どんな国でもその特質を活かしたコンテンツ産業の発展が可能であることを示していることにある。日本の優位性と弱点を理解したうえでのコンテンツ政策が必要、そんなことを感じさせた話であった。
[数土直志]

デジタルコンテンツエキスポ2011 http://dcexpo.jp/