日本アニメBD・DVDの米国の現状 発売会社は何社?(1)

文: 数土直志

 日本のアニメのDVD、そして最近はBlu-ray Discが海外で発売されていることはよく知られている。しかし、その商品をどういった会社が発売しているかはあまり知られていない。
 こうしたアニメDVD・BD(ビデオグラム)を取り扱う会社は、英語圏ではディストリビューター(Distributor)と呼ばれている。日本語では配給会社、流通会社として訳されることが多いが、日本語で与える印象と実際はやや異なるかもしれない。
 ディストリビューターの仕事は、まず日本の権利元から作品の北米でのライセンスを獲得することから始まる。獲得するライセンスはビデオグラム化権だけの場合、それにインターネット送信権、あるいは放映権も含まれるかなど個々に条件が異なる。さらに番組やそのキャラクターから派生する商品ライセンスの権利を獲得することもある。獲得したライセンスの範囲によって、仕事の範囲やマーケティングも変わって来る。
 それでもコアターゲット、いわゆるアニメファン向けの作品では、ビジネスの主力はいまでもDVDとBDである。ディストリビューターの役割は、米国版のビデオグラムの制作、発売、そして小売店への流通である。日本でのパッケージメーカーに相当する存在と言えば分りやすい。

 このディトリビューターの市場における勢力図が、近年、様変わりしている。2000年代半ばから続く北米のアニメDVD・BDの市場縮小により事業撤退する企業が相次ぐ一方で、現在の市場規模を前提に新規参入する企業もあるからだ。
 企業の入れは替わり激しく、ディトリビューターの現状は、実際に番組販売の最前線にいるビジネスパーソン以外には分かり難い。ここでは米国のディストリビューターの現状をまとめてみた。

 大きな変化なかで、2011年夏の現在、米国で日本アニメのビデオグラムを発売している企業は自社関連の劇場映画、OVAなどを限定的に扱うディズニー、ソニー・ピクチャーズ、ワーナーのハリウッドメジャーを含めて、10社程度とみられる。
 10社という数は多く聞こえるが、ハリウッドメジャーのタイトル数は極めて限られている。ディズニーのスタジオジブリ作品、ソニー・ピクチャーズの「マーベル・アニメ」シリーズ、ワーナーの「スーパーナチュラル」などである。さらにアニメ専業の多くの会社は事業規模も小さい。ベストバイ、ウォルマートといった量販店に継続的に商品を流通させる企業はファニメーションとVIZ Mediaの2社にほぼ絞られる。

■ ファニメーション(FUNimation)

 ファニメーションは1994年創立以来、17年の歴史を誇るが一貫して業界に存在感を持ってきた。2000年代を通じてADヴィジョン(A.D. VISION)と市場のトップを争ってきたが、2007年に業界3位のジェネオン・エンタテイメントUSAが撤退、2009年にADヴィジョンが事業停止をした後は、市場シェアの過半数を押さえたとみられ一強状態となっている。
 同社は2006年にエンタテイメントの流通企業ナバレの傘下に入り、さらに今年春にはそこから投資ファンドに売却されるなど経営母体が2度変わっている。その中で安定したビジネスを続けるのは『ドラゴンボール』、『鋼の錬金術師』といったヒット作があるからだ。

 一方、ファニメーション(FUNimation)の特徴は、意外なことにマスマーケット志向である。発売タイトルにはマニア向けも少なくないのだが、全ての作品に英語吹替えを行うことから分かるように、より多くの消費者により多く販売するビジネスを目指す。さらに、最近はマニア向けタイトルの獲得に以前ほどの積極性がみられない。
 一方で北米で人気のゲームを原作に日本のプロダクションと組んだ独自のアニメ『ドラゴンエイジ』、『マスエフェクト』の製作に乗り出している。経営母体が変わったことと合わせて、ビジネス戦略にも変化が生じている可能性がある。

■ VIZ Media/バンダイ・エンタテインメント

 マス向け志向が強い点は、『NARUTO』、『Bleach』などのヒット作を持つVIZ Mediaも同様だ。小学館・集英社資本の翻訳マンガ出版からアニメに事業領域を広げたVIZ Mediaは、アニメのディトリビューターとしての歴史はそれほど長くない。本格的に取り組み始めたのは2005年秋の「少年ジャンプレーベル」の設立以降だ。
 VIZ Mediaの特徴は、パッケージだけでなく商品ライセンス事業に力を入れること、それゆえにマス向けの志向が強くなる。ファニメーションとは異なり、コアファン向けのタイトルは原則扱わない方針のようだ。発売タイトルの多くは少年・少女向けである。
 アニメ・マンガ業界で比較的経営体力があると見られている同社だが、業界大手であるだけに昨今の不況とは無縁ではない。過去1、2年は新規タイトルも抑え気味で、アニメについてはこのマス志向がより強まっているように見える。

 発売タイトル数の減少は、他社も同様だ。老舗のバンダイ・エンタテインメント(Bandai Entertainment)も近年は新規タイトルを抑えている。それでもジェネオン・エンタテインメントUSAや角川ピクチャーズUSAが撤退するなかで、同社が北米事業を続けるのは、バンダイナムコグループの作品展開窓口として期待されているからだろう。実際にガンダムシリーズなどの発売を継続的に続けている。
 その一方で、グループ企業の枠を超えた取り組みにも積極的だ。取扱い作品には『涼宮ハルヒの憂鬱』、『けいおん!』、『ハヤテのごとく!』、『らき☆すた』などが並ぶ。ファニメーションやVIZ Mediaがカバーしない、アニメファン向けの作品に力を入れていることが分かる。

日本アニメBD・DVDの米国での現状 発売会社は何社ある?(2)に続く