フランスアニメーション成功の理由 アヌシー2011:特別編 

アヌシー2011 活況のヨーロッパアニメーション日本アニメーションの正念場
[特別編]

文: 伊藤裕美、オフィスH

■フランス、自国アニメーション産業への自信

 開催国フランスは、“世界3位の制作力”を持つ自国アニメーションに自信を深めている。CNCフランス映画・映像センター(Centre national du cinéma et de l’image animée)が発行する「2010年度版アニメーション市場調査」によると、フランス制作の新作テレビアニメは320時間、制作予算1億7,700万ユーロ(約212億4,000万円、1ユーロ=120円)。日本のキー局に当たる5局(国営放送のFrance2/3/5、民放のTF1、Canal+、M6)では、延べ4,000時間以上のアニメ番組が放映され、約46%は自国製であった。
 劇場公開された長編は外国作品も含め24本で、入場者数3,024万人に上った。フランスでは、過去10年でアニメーションの総入場者数は2,000万人増え、成人層へ観客を広げた。動員数、売上ともに米国製が圧倒的とはいえ、7本公開されたフランスの長編の中ではリュック・ベッソン監督の「アーサー」シリーズ第3弾が動員300万人を突破、ディズニーの『塔の上のラプンツェル』と互角の実績を残した。
 輸出品としてのアニメーションも好調だ。09年のテレビアニメ輸出は3.9%増の3,190万ユーロ(38億2,000万円)。相手先は、西ヨーロッパのドイツ、英国、スペイン、イタリア、そしてスカンジナビア諸国等が最大で60.7%、額にして1,930万ユーロ。一方で、北米への輸出が3倍に伸び、460万ユーロとなった。続く、アジアとオセアニアでも2倍の伸張で270万ユーロ。また、ロシア、ポーランド、チェコ等の東ヨーロッパは成長余力を残す。近年の劇場公開長編の制作本数は年5本以上と安定し、立体視3D作品も増え、新たな輸出品として期待を集める。

 CNCフランス映画・映像センターの調査結果で注目すべき点がもう一つある。テレビアニメの制作資金調達源の比率だ。09年にCNC助成を受けた351時間のテレビアニメ制作費(総額2億1,110万ユーロ)うち、国内放送事業者の制作助成・インベストメント27.9%の後に、国外資金24.9%が続き、約7割、242時間のテレビアニメ制作に海外資金が投入された。これには国際共同制作の23.8%増、国外放送事業者へのプリセールスの19.9%増が大きく影響した。198時間分はフランスが共同制作比率のマジョリティ。過去10年間の傾向は、外国資金は減少し、自国資金が増加している。10年は外国へのプリセールスが44.3%減少した影響で、総額が4,250万ユーロまで減少した。中でも完成後の販売は明らかな減少傾向にある。一方、プリセールスと共同制作は年により増減はあるものの増加傾向だ。とりわけ、外国資金における共同制作の比率が50%前後で推移している。
 制作費の国内投入率で見ると、08年より約4ポイント増加し、総出費の74%(1億5,620万ユーロ)。制作費の減額傾向にあっても、4,700億ユーロの人件費は過去5年間の最高額を示した。これは、国内に制作が回帰している現れであろう。

■フランスアニメーション成功の3つの理由

 MIFAの活況およびフランス制作アニメーションの伸張の理由として、フランスの映画業界紙「Écran Total(エクラン・トタル)」の編集顧問セルジュ・シリツキー(Serge Siritzky)氏は、3つの強化策が功を奏したとする。
 その1つが、80年代に始まるフランス政府の制作支援政策。様々な支援・助成は、制作費の35%にも及ぶが、これが国際市場進出に不可欠となった共同制作を強力に後押しする。国際共同制作に積極的なカナダ、とりわけ同じフランス語圏のケベック州との共同制作はアメリカ進出の推進力となった。
 フランスのアニメーション産業を強めた理由の2つめは高等専門教育にある。パリのゴブラン校、ヴァランシエンヌのSupInfoCom(シュパンフォコム)校、ヴァランスのラ・プードリエール校、ポワントゥー・シャラント地域の複数の専門校は、技術および表現面の人材育成で明確な実績を残している。ハリウッドの大手スタジオが挙ってこれらの卒業生を採用しており、MIFAのクリエイティブ・フォーカスは重要なリクルートポイントとなっている。
 さらに、アメリカの長編映画やビジュアルエフェクトの制作受注、国産テレビアニメのシリーズ化が国内従事者を維持している。安定した制作サイクルは、プロデューサーに安定的な売上を保障する。プロデューサーの多くはインディペンデントであり、保持する著作権の収益や二次使用権益によって世界的不況などを乗り越えてきた(Écran Total No.855/2011年6月8日号より)。

 現在フランスには約100社の制作会社があり、5,000人が従事する(アニメーション・プロデューサー組合調べ)。しかもパリに一極集中するのではなく、フランス政府の地方分権政策と地域経済体の努力により、各地に制作会社や拠点(ポールイマージュ)が分散しつつある。テレビ、劇場用長編、そしてトランスメディアへと、アニメーションは観客層を広げ、市場成長の可能性を持つ。
 ヨーロッパの非営利国際組織CARTOON(カートゥーン)(http://www.cartoon-media.eu/)がテレビアニメのフォーラム(ピッチ)に続き、99年に始めたカートゥーン・ムーヴィ(CARTOON Movie)では、ここ数年で長編企画数が急増した。35カ国700名の関係者が参加した今年3月のカートゥーン・ムーヴィでは、56企画がピッチされた。フランスが過去最多の24企画を出したが、ヨーロッパ各国にアニメーション制作は拡散している。しかも独立系が主流のヨーロッパでは、中小規模であっても、プロデューサーが自主企画を携え、カンヌ、ベルリンそしてアヌシー等のマーケットやカートゥーン・ムーヴィのようなピッチに登場し、企画開発の主導と収益の確保を目指す。
 CNCフランス映画・映像センターが助成する企画にも、2000年代に創業したプロデューサーと制作会社が数多く登場する。独立系の機動力、30代を中心とする若手の国境を越えた活躍が、フランスのみならず、ヨーロッパのアニメーションを活性化している。この傾向はしばらく続きそうだ。