ニコファーレ完成披露 ネットとライブの融合と差別化

 7月12日、東京・六本木に新たにオープンする話題のライブスペース「ニコファーレ(nicofarre)」の完成披露記者会見が行われた。施設のプレゼンテーションに立ったのは、ドワンゴ取締役の夏野剛氏。夏野氏は、「ニコファーレで時代が変わる」、「ネットとライブの未来」と、自信満々に紹介する。実際にニコファーレは、その言葉に違わない驚きの空間だ。
 前方左右、そして天井の五方向に設置されたLEDを駆使することで、全体を一体的な映像表現空間とする。どこかテーマパーク的なものも思い起こさせるのは、アトラクションに乗る時の高揚感につながるからかもしれない。

 五方向の映像だけでもライブ空間としては、かなり魅力的だ。しかし、ニコファーレの機能が最も発揮されるのは、やはりネット「ニコニコ動画」との連動である。ネットを通じてライブを視聴するユーザーが配信動画にコメントが書き込めるだけでなく、そのコメントは会場の映像に映し出される。
 さらにARの技術を取り入れることで、ネットを通して観ると実際にいないキャラクターが視覚化する。ゲーム、アニメ的な演出、合成も可能になる。また、これまで横に流れるだけであったコメントが会場内を飛び回るという驚きの仕掛けもされている。まさに未来のライブ空間である。

 こうした話題性の高い空間を作りあげたドワンゴだが、夏野氏は、今回のプロジェクトは当初は進めるのが嫌だったという。折角、ニコニコ動画が黒字になったのに、と当初の雰囲気を語る。実際にこれだけの空間の設備を準備するにはかなりお金がかっかっているともいう。
 しかし、最終的に実現したニコファーレは、そんな言葉とは裏腹に打ち上げ花火のような華々しいだけのプロジェクトとは異なるようだ。ニコファーレは、ドワンゴとニコニコ動画が昨今力を入れるネット配信とライブの融合という戦略の延長線上にあるからだ。実際に、プレゼンテーションでは、新たに導入する蛍光色のコメント、アーティストに贈る「デジタル花」といった新しい課金アイディアが要所要所で紹介されていた。

 夏野氏は、ニコニコ大会議の有料参加者が、ライブよりネットで多いことを挙げ、「ニコニコ動画には世界でも珍しいライブ配信にお金を払う文化が定着している」と語る。
 その延長線上に最近のニコニコ生放送、ニコニコミュージカルなどのライブ企画の拡大もあるだろう。ネット向けに演出されたライブではネット課金が行えるとの判断だ。その新たな結論が「ネットライブ専門のライブハウスが必要」である。

 さらに面白いのはニコニコ動画の戦略は、ライブとネットの融合であると同時に、ライブとネットの差別化となっている点だ。ニコファーレの中にいるとその映像と音楽、そしてテキスト(コメント)の洪水と体験に興奮を感じる。と同時に、これをさらにネット配信を通して体験したいとの気持ちも持たされる。
 ニコファーレは、ネット配信において、ARをはじめ全く異なった楽しみかたをユーザーに提供する。つまり、ニコニコ動画はライブとネットを別のものにしている。この難しいバランスを実現することで、ニコニコ動画は、ライブチケットとネットチケットの同時発売の両立という新しい領域に突き進んでいる。
[数土直志]

nicofarre ニコファーレ http://nicofarre.jp/