アヌシー2011 活況のヨーロッパ 日本の正念場 第1部

アヌシー2011、活況のヨーロッパアニメーション
日本アニメーションの正念場 第1部

取材・文: 伊藤裕美、オフィスH

 フランスのアヌシーで、6月6日~11日、世界最大規模のアニメーションフェスティバル(http://www.annecy.org/)が開催された。1960年にカンヌ国際映画祭から分かれ、ヨーロッパ有数の避暑地でアニメーション作家らが自主上映会を始めてから35回目となる。延べ15万人以上を集めた50周年の昨年より全体の参加者は減ったようだが、併催のアニメーションマーケットMIFAは出展数450、70カ国から230人ものバイヤーを集め、過去最高となった。

<第1部>

原恵一監督 『カラフル』 © FUJI TELEVISION NETWORK INC.

■コンペ長編部門、『カラフル』二冠達成

 原恵一監督の『カラフル』(制作:フジテレビジョン、サンライズ、電通、アニプレックス、ソニー・ミュージックエンタテインメント、東宝)が、長編部門の特別賞と観客賞の2冠に輝いた。長編部門の日本作品受賞は、93年の宮崎駿監督『紅の豚』、95年の高畑勲監督『平成狸合戦ぽんぽこ』、07年の細田守監督『時をかける少女』に続く4本目。223本の応募作から選ばれた9本のノミネートにはヨーロッパの有力5作品も並んだが、上映後に好評の口コミが起こった本作が栄誉に輝いた。
 ヨーロッパでも圧倒的な人気を誇るハリウッドのファミリー向け長編とは異なる、日本の作家性やグラフィックス感覚のアニメーションが国際映画祭で評価されることは頼もしい。とりわけ2000年代の受賞2作と04年のオープニングを飾った今敏監督の『東京ゴッドファーザーズ』は、日本アニメーションの強みを示すと言えるだろう。アヌシーでは、昨年急逝した今監督の『オハヨウ』(2007年)が特別プログラムで追悼上映された。

 課題もある。地元公開に至らない作品が多く、公開されたとしてもジブリ作品以外は地元作品に及ばぬスクリーン数にしか掛からない。地元の興行に強い配給会社が付くことが重要だが、昨今の傾向は完成してから販売するのでは遅く、企画段階や制作中に決まるパートナーや共同制作プロデューサーが流通の鍵を握る。国内での企画開発が多く、国際的な枠組みの共同制作が少ない日本には厳しい状況である。

小島正幸監督 『チベット犬物語』 (c)CHINA FILM GROUP CORPORATION, MADHOUSE, INC.

 コンペの受賞は逃したが、マッドハウスと中国电影集团公司(China Film Group Corporation)が日中合作した、小島正幸監督の『The Tibetan Dog』(仮題:チベット犬物語)は、フランスで定評あるゲベカ・フィルム(Gebeka Films)の配給でフランス 公開予定だ。09年にアヌシーで、制作発表を行った。発案、アニメーション制作の多くの部分はマッドハウスによるが、アニメーション映画の本格的な国際合作の第一歩として満足できる成果である。
 アウトオブコンペには、東映アニメーションの『手塚治虫のブッダ-赤い砂漠よ!美しく』(監督:森下孝三、制作:「手塚治虫のブッダ」製作委員会)と、黒坂圭太監督が10年を費やしたアートアニメーション長編『緑子/MIDORI-KO』(制作:ミストラル・ジャパン)が選ばれた。商業作品に比重を置く長編部門コンペの中で『緑子/MIDORI-KO』は異彩を放ち、日本アニメーションの多様性を示した。
 東映アニメーションは、MIFA最終日に荒牧伸志監督の3DCGアニメーション長編『宇宙海賊キャプテン・ハーロック』の制作発表を行った。原作者の松本零士氏が特別ゲストとして招かれ、メーキングのプレゼンテーションを披露した。欧米でもヒット作のリメーク、特に立体視3Dへのリメークが話題を呼ぶ。日本の往年の名作が、それなりに観客を獲得することを期待したい。
 
日本出身の若手作家の活躍へ続く