藤津亮太のテレビとアニメの時代 最終回 今後のTVとアニメの関係

藤津亮太のテレビとアニメの時代
第26回(最終回)今後のTVとアニメの関係

藤津亮太
1968年生まれ。アニメ評論家。
編集者などを経て、2000年よりフリーに。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)。編著に『ガンダムの現場から』(キネマ旬報社)など。アニメ雑誌、そのほか各種媒体で執筆中。
ブログ:藤津亮太の 「只今徐行運転中」 http://blog.livedoor.jp/personap21/

 

 2年強にわたって連載してきた本連載も今回で最終回となる。最終回は、これまでの連載でわかったことをまとめ、今後のTVとアニメの関係について考えたい。

■’70年代
・’70年代前半に夕方にアニメを再放送することが定番となり、19時台に(第二次怪獣ブームの存在もあって)アニメを含む子供番組を編成するのが通常のこととなる。

■アニメブーム(’80年前後)
・’77年の劇場版『宇宙戦艦ヤマト』のヒットなどを受けて、’78年から「宇宙もの」が増加。アニメファンをターゲットに想定した、(いわゆる)ハイターゲット作品が増加する。
・ハイターゲット作品の比率は’83年にピークを迎え、ビジネス的不振を理由として、以降段階的に減少していく。
・この時「プライムタイム=人気マンガ原作」「夕方枠=ロボットアニメ」というすみわけが明確にあった。
・一連のムーブメントが、第一次アニメブームで、ブームは’77年に始まり’85年に終わったと考えられる。

なお「アニメ」という言葉の使用については以下の流れで普及したであろうことも確認できた。

■アニメという言葉
・アニメという用語は’70年以前から存在していた。
・ただしその用法はアニメーションの略語として使われるケースが多く、アニメーションという言葉は個人作家によるアートアニメ、ディズニーなどに対して使われる場合が多かった。
・それに対しTVで放映されているアニメ番組を言い表すために「TVまんが」などの言い回しがあった。
・そもそも原作が出版物であるものも多かったため、漫画あるいは劇画と、印刷物と混同した言い方もあった。
・しかし劇場版『ヤマト』の宣伝で意図的に「アニメ」が使われたため、’77年を境に「アニメ」という言葉が、TV放映作品の呼び名として定着するようになった。

■’80年代
・アニメブーム後は、ファミリーものと少年ジャンプ原作ものが主流となり、対象年齢が以前より下がってTVアニメの再編が行われた。
・夕方のアニメの再放送枠が減少していく(なくなりはしない)。
・再放送枠現象の理由として推測できるのは、’80年代後半の通塾率の上昇に代表される子供の生活の変化、広告費増大を背景にスポットCMを販売しやすい番組へのシフト。

■’90年代
・90年代前半になると少しずつハイターゲット作品がまた増えてくる。
・おそらく’80年前後に生まれた世代をターゲットにした企画が成立しやすくなったため。
・その中で’93年~’95年にかけて、テレビ東京でライトノベルやマニア系マンガ雑誌原作のアニメ化が登場する。→この路線が深夜アニメにつながっていく。
・’96年より深夜アニメがスタート。
・’90年代後半に入り、夕方再放送枠は消滅。
・日曜午前枠が積極的に開発されるようになる。

■’00年代
・「制作」と「編成」のずれが明確になってくる。(MBS製作の番組が系列のTBSで流れず、東京MXで流れるといった事態)
・19時台にアニメを放送する局がテレビ朝日とテレビ東京だけに。

 まだ細部については調査・検討が必要だが、この連載を通じて、TVアニメの約40年ほどの流れは概観できたと思う。
 この連載については、一冊にまとめる企画も水面下で検討されているので、実現したら再調査なども含めて、

 ではこれからTVアニメはどうなるか。
 結論からいえばTVアニメはなくなることはない。
 地上波TVは、(視聴率が下がってきているとはいえ)依然、日本でもっとも強いメディアであるのは間違いない。パッケージソフトを買ってもらうビジネスが基盤である以上、アニメはなんらかのかたちでTVの力を借りざるをえないのだ。
 ただし、現在のようにファーストランが地上波TVの無料放送であるのが望ましいかというと、そこには疑問がある。
 制作費のリクープを考えるならば、なんらかの有料放送がまずファーストランで、間にパッケージの販売を挟み、最後に地上波での無料放送に至るような流れを構築する必要がある。
 ただし現在、TVはそのような流れに従って順次ソフトを放送するシステムが存在しない。システムのないところで、いかに有料→無料の流れを構築するか。そこがこれからのTVアニメビジネスの課題となるのではないだろうか。
 またtwitterに代表されるように「リアルタイム性」がwebのキーワードになってきている今、リアルタイム性を媒介するハブとなる昨日はTVが非常に強く、その点にもなんらかのTVアニメの未来の可能性が潜んでいると考えられる。

 なお有料配信だが、成長が続いているとはいえ、2009年の売上高は123億円。2009年のアニメ産業の総売り上げが2164億円だから、その占める割合は6%ほど。仮に現在10%まで伸びていると仮定しても200億円で、パッケージソフトの売り上げ(2009年には736.58億円)と比較しても3分の1。パッケージの売上にテレビ放送による売上高も含めて考えると、配信による売上はまだまだ小さい。
 また現状の無料配信が、見られない地方のファン対策や、TVの見落としに対するフォローとしてまずその存在が認識されていることを考えると、無料配信から導線がついているのはTVであって、有料配信ではない。
 こうした状況を考えると、有料配信がTVを脅かす存在になるには、まだ大きなパラダイムシフト(新たなビジネスモデルの登場や音楽におけるipodのような革新的なツールと環境の普及)などが必要と考えられる。

 以上、2つの角度から連載を大きくまとめてみた。
 先日、京都精華大学で第13回アニメーション学会が開かれ、僕も発表者として参加してきた。発表内容は「TV欄から見たアニメブームの概要」。本連載の一部を紹介したような内容だ。
 発表後、質問をもらったり、感想を聞いたりして実感したのは、作品や作家を軸とした歴史ではなく、もうすこしアニメ全体を俯瞰しているような「アニメの歴史」がまだまだ確立されていないのだな、ということだった。
 先に書いたとおりこの連載もまだまだ検討しなくてはならないことは多い。でもそれなりのアクセス数があったのは、やはり「アニメの歴史」について事実の列挙以上のアプローチに挑んだものがまだまだ少なかったということだろうと思っている。
 今後本連載への異論なり反論なりに基づいて、またべつのTVアニメの歴史を誰かが記すようなことがあってほしいと思う。そうやって別視点から検証・解釈ができるようにと、さまざまな数字を挙げて定量的に原稿を進めてきたのである。
 そしてそうした各意見のもみ合いを経てこそ、おぼろげではあろうが、一つの説得性を持った「アニメの歴史」が見えてくるのだと思う。
 そのためのたたき台がこの連載なのだ。

 ご愛読ありがとうございました。