藤津亮太のテレビとアニメの時代 第22回 深夜アニメ前史

藤津亮太のテレビとアニメの時代
第22回 深夜アニメ前史

藤津亮太
1968年生まれ。アニメ評論家。
編集者などを経て、2000年よりフリーに。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)。編著に『ガンダムの現場から』(キネマ旬報社)など。アニメ雑誌、そのほか各種媒体で執筆中。
ブログ:藤津亮太の 「只今徐行運転中」 http://blog.livedoor.jp/personap21/


 今回から’96年以降の深夜アニメの変遷を追っていく。
 そのまえにまず「深夜アニメ」の大まかな流れを振り返っておこう。なお本稿では、プライムタイムの22時台が終わって以降、つまり23時以降を「深夜帯」とする。
 TVアニメ初の深夜アニメは’63年9月より放送された『仙人部落』。小島功の同名マンガのアニメ化で、フジテレビで23時40分から15分枠で放送されていた(ただし後に放送開始は50分繰り上がり22時30分からに)。また’68年には身近な事件を題材に法律を解説する『六法やぶれくん』(名古屋テレビ系、23時10分~同15分)が登場している。
 その後、長らく深夜帯でのアニメはなかったが、’86年に5分間のショートアニメとして『ハートカクテル』が放送される。日本テレビ系で24時50分ごろから放送された。こちらはわたせせいぞう原作の同名連作短篇マンガのアニメ化だった。

 深夜番組全般に注目すると、’83年にフジテレビで『オールナイトフジ』が始まり、生放送による深夜番組に注目が集まっている。人気番組の登場で、深夜帯全般が改めて注目が集まった中、番組内番組も含めアニメも編成されるようになったと考えられる。こうした時期の深夜アニメは、深夜ならではのセクシーな要素を含む肩の凝らない「箸休め」的な役割が求められていた。そのため放送時間が30分に満たない短い放送枠が多い。
 成人向けOVA『くりぃむレモン』の流れを汲んで制作された’87年の『レモンエンジェル』(フジテレビ、火・水・木の25時~25時5分)は放送時間からしてまさにその典型といえる。’89年の『小松左京アニメ劇場』(MBS、水曜25時10分~)も、小松左京のショートショートを原作とした5分間アニメだった。’90年代に入った’92年の『ヨーヨーの猫つまみ』(日本テレビ、帯25時5分~)も5分枠だった。
 また深夜番組内番組として放送されたアニメとしては、「深夜秘宝館」内の『SLIPPY DANDY』(’87年、フジテレビ、木曜24時30分~)、「オールナイトフジ」内の『ドクター秩父山』(’88年、フジテレビ、土曜26時~)、「11PM」内の『セイシュンの食卓』(’89年、読売テレビ、火曜)がある。

 一方、’90年代に入ると「箸休め」から一歩踏み出した企画も登場する。
 ’92年の『スーパーヅガン』(フジテレビ、木曜25時40分~)は片山まさゆきの麻雀マンガのアニメ化。原作の読者層を考えても、題材からいっても深夜でなくては成立しない企画だったといえる。 また’95年の『行け!稲中卓球部』(TBS、水曜25時10分~)は、同名原作のストレートなアニメ化で、こちらも30分枠での放送となっている。
 新規の放送ではないが、OVAとしてリリースされた『銀河英雄伝説』が’90年にテレビ東京深夜に放送されているほか、MBSの深夜再放送枠『ヒーローは眠らない』(’92年~)における再放送なども深夜枠開拓の先駆けと見ることもできる。

 こうした「深夜アニメ」前史を経て、’96年にテレビ東京で『エルフを狩るモノたち』が始まる。この作品が、現在に至る深夜アニメの元祖ともいえるのは、前史の作品たちと異なり、ビデオメーカー主導でマニアックなターゲットを狙った作品を制作、ビデオグラムでリクープするというビジネスモデルで運営されている点である。
 前回確認した通り、この「ビデオグラムで回収型」のビジネスモデルは、’96年以前にテレビ東京夕方の枠で始まっており、それが深夜枠へと広がった第一号が『エルフを狩るモノたち』だったのだ。
 ’96年には『エルフを狩るモノたち』1本だけだった深夜アニメだが、あっという間に作品が増える。
 翌’97年に放送された深夜アニメは以下の通り。

テレビ東京(10本)
月曜25時15分枠 『吸血姫美夕』『BφY』
水曜25時15分枠 『ネクスト戦記EHRGEIZ』『MAZE★爆熱時空』
水曜25時45分枠 『エルフを狩るモノたちII』『HAUNTEDじゃんくしょん』『みすてないでデイジー』
木曜25時15分枠 『EAT-MAN』『VIRUS』『はいぱーぽりす』

日本テレビ(1本)
火曜25時45分枠 『剣風伝奇ベルセルク』

テレビ朝日(1本)
水曜25時10分枠 『深海伝説マーメノイド』

毎日放送(1本)
土曜25時35分枠『フォーチュン・クエストL』

※この年はTBSも深夜情報番組「ワンダフル」内で『行け!稲中卓球部』を再放送している。

 テレビ東京が’97年以降に深夜放送に傾注する流れをつくった要因の一つとして考えられるのが『新世紀エヴァンゲリオン』の深夜での再放送だ。’97年2月に土曜深夜26時55分から4話ずつをまとめて放送。これが初回が2.4%と深夜枠にしては高い数字を出したという。また夏にも再度再放送を行い、その時は4%を越える数字を稼ぎ出している。
 深夜アニメの増加は、興味深い減少として、この時期の新聞や経済誌などでも取り上げられている。これらの記事の中では深夜アニメ増加の理由として、「アニメ(や原作となるマンガ)の視聴者にオトナが増えてきた」「TV放送だけでなく二次使用でビジネスができる」などがあげられている。

 次回以降は、’90年代後半の深夜アニメの変転を見ていきたい。