「科学的手法によるアニメ人材育成」をテーマにシンポジウム

 1月26日、東京・六本木のアカデミーヒルズで「科学的手法によるアニメ人材育成変革の可能性」と題したシンポジウムが開催された。日本動画協会と経済産業省、東京大学人工物工学研究センターが主催する、コンテンツ産業人材発掘・育成事業の一環だ。
 当日は、森祐治氏による「アニメ人材基礎力向上事業の狙い」と題した講演や、早稲田大学高等研究所准教授の七丈直弘氏が「アニメーション制作における科学的分析の可能性」としてワークフロー分析、エスノグラフィーを用いたアニメーション制作過程の分析についての報告などが行なわれた。

 なかでも興味深かったのは「アニメーション制作における科学的分析の可能性」である。これまでアニメ制作の人材育成は、アニメーター、プロデューサー、演出といった個々の能力の引上げに主眼が置かれてきた。しかし、ここではシステムとして人材育成を行なう異なったアプローチが目指されているからだ。
 ただ、「アニメ人材育成に科学的な手法を導入」といった言葉は、やや誤解を招きそうだ。個人能力に依存する部分が大きなアニメ制作に、科学の言葉は違和感があるし、相容れないものと反発を受けそうだからだ。
 しかし、実際には、今回の試みは杓子定規な科学のイメージとはだいぶ異なる。むしろ、これまでアニメ制作の現場で無意識に培われてきた個人の経験値をいかに引き出すかを目指したものとなっている。

 報告で実際に行なわれたワークフロー分析とエスノグラフィーのための聞き取り調査や行動調査、日記などの方法、その結果が紹介された。とりわけ調査の結果得られたアニメの制作ワークフローは、興味深い。これまでの一般的なワークフローよりも詳細に、どこの段階でどの様なコミュニケーションが行なわれ作業が進んでいるかなどを明らかにする。
 個別作業でも、例えば作画工程で、本人も気づかない経験値を明らかにする。これを使うことで今後新人が技能や効率的な作業を取得する期間を大幅に短縮出来るかもしれない。
 また、今回は制作進行の仕事がかなり分析されている。アニメーターや演出、プロデューサーと較べて、これまであまり人材育成では目を向けられてこなかった職種だが、アニメ制作工程管理で最も重要なひとつである。外部からなかなか分かりくい、制作進行の仕事・役割を明らかにするのは貴重なものだ。

 七丈氏によれば、現在は現場調査の実施とデータを得られた段階、今回は中間報告だという。今後得られた情報をもとに、アニメ制作のワークフローのシミュレーションやワークフロー管理のあり方などさらに調査を進めるという。また、第2回のシンポジウムを3月4日に予定している。

日本動画協会 http://www.aja.gr.jp/
経済産業省 http://www.meti.go.jp/
東京大学人工物工学研究センター
http://www.race.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/raceweb/top_index.cgi