「ANIME FES.”VS”」から始まる アニメの劇場戦略 ショウゲート 臼井 久人氏に聞く

【劇場はアニメのライブです】

AA
今回、バトル1、バトル2、バトル3と興行を3期に分けたのはなぜですか。

臼井 
1回でなく、3カ月間やることでより作品が浸透もします。宣伝プロモーション期間を長く取れるのはやはり大きいと思います。
シネコンなので、うまくすればあらためて上映することも可能です。

AA
3カ月継続的にやっていることが重要ということですね。

臼井 
そうですね。だから11月から1月の末までは、必ずこの5館に行ってもらいたい。その3カ月間限定の『ANIMEFES.“VS”で盛り上がろうぜ!!』みたいな楽しみ方を分かち合えればという感じです。

AA
社内ではアニメに対する理解はどの程度あるのですか。ショウゲートさんは博報堂DYグループなのですが、こうした大きな会社ではアニメはビジネス全体からはいちジャンルになってしまいますが。

臼井 
博報堂DYはアニメーションの企画へ継続的に参加していました。その中に、ショウゲートという実働部隊が入ってきたわけで、これから伸ばしてゆく方向です。また、アニメーションは権利をもてるのが強みです。例えば作品が広がり商品化が進んだり、さっきほどの海外販売とかも含めてコンテンツの2次利用、3次利用からの「権利収入」は大きな魅力ですね。
さらにお客さんがある意味で見えています。ターゲットが分かりやすいので、宣伝プロモーションやマニアマーケティングもやりやすいと思っています。

AA
確かに作品が当たるかどうかは分からないにしても、確かにそこにファンがいるというのはあります。

臼井 
それぞれの作品を好きな方、嫌いな方がいますが、すごく熱狂的です。そういう人にうまく届けば、息の長いコンテンツになります。

臼井 
それと、ライブという考えかたです。いまCDは売れないけどライブはお客さんが入るんですよ。それはなぜかというと生で見られる。
同じ時間を1つの画面を見ながら共有できる劇場は、アニメのライブですよね。そこに舞台挨拶が入り、声優さんも来られたりするとさらに盛り上がる。同じ時間を共有して大画面で観る空間を提供し、それがイベント的に盛り上がってくれば大成功です。

【信者の多い作品を選べるかが鍵】

AA
いまいろいろな会社の方が劇場でやろうとしていて、作品が増えているというのもあります。すると今までみたいに全部が全部当たるわけでないと思います。そうすると作品の目利きが重要になります。今後どういった方向性がいいと思われますか。

臼井 
僕らのやるときの基準は、僕はよく信者という言い方をするんですけど、信者が多いものです。小規模でやっていくならば、普通の人は知らないけど、知っている人はすごく知っているものです。奥深い作品、コアに刺さっている作品はやはり商売になります。そういうものを選べるかがひとつです。
大規模になるとある程度知られた原作のなかからです。ただ映画のヒットはジブリ型もあるし、あるいは『エヴァンゲリオン』は非常に大きいけど、信者的な部分がすごく強い作品だと思っています。

臼井 
若い人が「これがいいね」というのがあればピックアップしたいですよね。そこは各社が悩んでいるのでないでしょうか。
ひとつのバロメーターは、テレビシリーズをやり、テレビシリーズとして成功しました、次のステップとして劇場というのは分かりやすいのですよね。
あとはすごく売れているシリーズのOVAです。『.hack//Quantum』とか『マジンカイザーSKL』はそうだと思います。OVAでやっていくなかでのひとつとして劇場に持っていくことです。いきなり劇場はやはりハードルが高いでしょうね。

AA
プロモーションについても伺わせてください。映画会社配給の方は、アニメは難しい、アニメのプロモーションはよく分からないと話される方が多いと聞きます。そうした時にショウゲートさんの強みは何でしょうか。

臼井 
先程アート系が強いという話がありました。アニメは考え方がアートに近いですね。アニメの場合よくも悪くもそんなに宣伝メディアが広くないので、どこの雑誌に出せば絶対ユーザーに届くというのがすごく分かりやすい。それも200も300もあるわけではなく、ある程度絞れたところ、ピンポイントで攻められます。

AA
逆に言うと分かりいいわけですね。

臼井 
不特定多数まで拾っていこうとすると、空爆的なテレビの宣伝もしなければいけないとは思います。それは規模とのバランスです。
今回はゲリラ戦です。得意としているアニメ誌さん、声優誌さん系とかです。あとはWeb系ですね。Web媒体はやはり即効性もありますし、不特定多数に届きます。限られた予算の中でやっていくとなると、そういう割り切りです。

【小さく産んで大きく育てるを目指す】

AA
今回はボトムズも含めると2つのプログラムでやっておられます。これからもまた別のプログラムもやられるのですか?

臼井 
会社としてアニメーション、劇場版も含め継続的にいろいろトライアルしていきたいなと思っています。アニメーションを、劇場を媒体として展開することは、イベント上映からスタートして、継続してやっていきたいなと思っています。
そうしたかたちでやっていくことで、ショウゲートに「アニメがあったんだね」と、認識が変わって、ショウゲートの「アニメすごいよね」になってくれれば一番ありがたいわけです。だからヒット作も出していかないといけないですね。

AA
今後作品のブランドだけでなく、上映自体をブランド化することもありますか。

臼井 
そうした戦略をバンダイビジュアルさんはお持ちですし、僕らもそれでいければと思っています。もちろん作品ありきです。
「今度のANIME FES.”VS”では何をやるの」と言われるようになれば勝ちです。これからの頑張りどころですね。

AA
作品の企画について、何か意見を言われることはありますか。

臼井 
クリエイティブの部分はやはりバンダイビジュアルさんとか、各アニメーションスタジオさんがかなり持っています。企画よりはプロモーションにかかわりたいと思っていますね。

AA
もし話せたらなんですけど、今後第2弾みたいなのがあったら教えてください。

臼井 
具体的にはなっていないです。ただ計画的にやっていければいいなとは思っています。
たぶんバンダイビジュアルさんもうまくいけば、2弾、3弾とやっていこうという話になると思います。これがベストだとは思いませんけが、今回のやったことを踏まえて次回に、それを踏まえてまた次回にと何回か重ねることで、ブランドも含めて作り上げられると思います。

AA
そうしたらそこでまた広がりますね。

臼井
それこそもっと規模を上げてもいいんじゃないという話になるでしょう。そういう意味では本当に最初は、小さく産んで大きく育てようみたいなところです。

AA
お忙しい中大変ありがとうございました。